[MENU]

現実トリップ:03

 

 源外の機械は次の日も、その次の日も更にその次の日も……やはり直ってはいなかった。あともう少しだと言ってはいるが、その言葉を神楽はアテにしていなかった。このままずっと五年後の自分として生活しなければならないのではないかと、半ば諦めていた。昼間は万事屋として働き、夜は何と無く雰囲気に流されて銀時と眠る。神楽は朝を迎える度に、自分の気持ちが悪い方へと膨らんで行くのが分かった。銀時を独占したいのだ。いつも愛しそうに神楽の名を呼び、お前がいないと生きていけないと言わんばかりに求めて来る。そうやって神楽を勘違いさせる癖に、銀時は時折朝帰りをしていた。それも平気な顔で。だから、未来の自分は銀時にキスマークを付けるのだろうか? 神楽は胸が痛くなった。愛されたいと願う気持ちなど捨てられるものならば捨ててしまいたい。なのに、今日も神楽はソファーに座った銀時の足元で忙しくしていた。こんな事、いつもの自分なら絶対にしない。やるくらいなら舌を噛み切っている事だろう。だが、この体は既にソレを知っているらしく、銀時に跪くように奉仕していた。

「歯ァ、当たってんだけど」

 初めてする人間に上手くやれと言う方が難しい話で、神楽はぎこちない手つきで銀時の熱いモノを握りながら必死に頭を動かしていた。

「お前さ、嫌がってね? 何かあった?」

 神楽はビクッと体を跳ねさせると銀時の顔を見上げた。どこかその目は冷たく見え、柔らかさを感じることが出来なかった。

「何も……ない」

 神楽は不自然にそう答えると、銀時はもういいからと言って神楽を引っ張り自分の上に跨がるように指示した。神楽はそれを何一つ楽しいと思えなかった。少し乱暴に突き上げられ、自分の胸を掴む無骨な手も優しいものではない。それでも体は拒むことが出来ず、銀時の言う通りに動いた。

「神楽、正直に言えよ」

 神楽は本当の事など言えるはずが無かった。どうせ五年前から魂が転送された話など、誰も信じるわけがないのだ。

「何もないアル」

 そう言って神楽は首を振った。すると、銀時は神楽の細い腰を掴み、更に下から激しく突き上げた。

「他に好きな野郎が出来たか? それともアレか、俺が嫌いになった?」

 神楽はその言葉で銀時が何を正直に言えと言ったのかようやく分かったのだった。銀時は不安になっているようなのだ。自分は朝帰りなどする癖に、神楽の愛は自分だけに向けられていないとダメらしい。神楽はまた首を左右に振ると今度はハッキリと口にした。

「嫌いだったらこんな事、しないアル」

「はぁ? こんな事って何だよ?」

 神楽は自分でぎこちなく腰を動かしながら髪を乱していた。こんなふうに攻められながらするのは嫌な筈なのに、もう下の口はトロトロなのだ。銀時の言葉は聞こえてはいたが何も答えられず、甘い声を惜しげも無く漏らしていた。銀時はそんな神楽にようやく小さく笑うと、神楽をそっと抱きしめた。

「……中で出すわ」

 神楽は意味も分からず頷くと、銀時は神楽をソファーに寝かせ、好き勝手に暴れ回り…………そして動かなくなかった。

 朦朧とする意識の中、神楽は銀時をズルいと思っていた。自分は神楽を支配し、独占していたい癖に神楽にはそれを許さないのだ。それなのにこの体を抱きながら“嫌いになった?”そう言って不安げな顔を見せる。しかし、結局銀時は今夜もまた出掛けた。帰りはきっと朝だろう。胸を苦しめる想いは相変わらずそこにあって、次に肌を合わせる時まで消えはしない。しかし、実際には消滅するわけではなく、一時的に痛みや苦しみが麻痺するだけであった。一体、銀時は誰を抱き、愛しているのだろうか。神楽には見当もつかないのであった。

 

 翌日、神楽は普段より早く目が覚めた。まだ日も昇っていない。どうやら銀時が今し方帰って来たようで、神楽は玄関まで迎えに出た。

「帰ったアルカ?」

「あぁ、悪い。起こしたか?」

 銀時はどこか疲れたような顔で笑うと、風呂場へ向かおうと神楽の横を通り過ぎた。汗臭い。神楽は嫌な顔をはっきりすると、銀時がシャワーも浴びずに帰って来た事を知った。腹立つ。なんだがそんな銀時を無性に困らせてみたくなったのだ。神楽は銀時の後を追って風呂場に押し掛けると、眠たそうな顔の銀時の前でパジャマを脱いだ。そして、あっという間に下着まで脱いでしまうと、銀時と共に浴室へと入った。

「はっ? 神楽、お前寝ぼけてんの?」

 神楽は銀時の体に前から抱きつくと、首元に顔を埋めた。

「臭い」

 銀時の顔が急に赤く染まると、相当恥ずかしかったのか神楽の体を引き離した。

「う、うるせェ! 何なんだよッ!」

 銀時はそう言って更に疲れた顔をすると、シャワーを出して頭を洗い始めた。神楽はそれが余計に面白くなくて、もっと何か困らせてやりたくなったのだ。ガキ臭いと言われても構わない。実際はまだ子供なのだ。神楽はまだ大人にはなれないと銀時を手こずらせてやろうと思った。

「私が体、洗ってやるネ」

 神楽はそう言うと銀時の背後に回り、石鹸を持って泡立てた。そして、それを手に取ると銀時の肌の上を滑らせた。そして、念入りに下腹部を洗いながら神楽は言った。

「ここは汚いから、ちゃんと洗わなくちゃ駄目アルナ」

「えっ…………すみません」

 頭を洗いながら銀時が小さな声で謝ると、神楽は少しだけ気持ちがスッキリとした。勿論それで気が済んだわけではないが、今日はもう良いと眠たそうな銀時を解放してやった。

 風呂から上がった二人は日が昇る頃に隣り合って寝始めると、昼過ぎまで起きないのだった。

 

 先に目が覚めた神楽は布団の上に体を起こすと、隣で熟睡する銀時を暗い顔で見つめていた。大人になった神楽の事を銀時はただの都合の良い女だと思っていて、そんな未来が待っているのなら、元の時間に戻った時に一刻も早く銀時から離れるべきなのだろうかと思ったのだ。しかし最低だと思っても、許せないと嫌っても……どうしても離れたくない。神楽は眠っている銀時にキスをすると、再び体を横たえた。ここに来て一体どれくらいのキスをしただろうか。五年前の二人では考えられない事だ。こうして自由にくっ付いても許される関係が結局自分を銀時から離さないのだと、神楽は痛感するのだった。

「……あ、寝すぎたわ」

 銀時は神楽のキスで目を覚ましたのか、枕元に手を伸ばし、目覚まし時計を取ると短針の位置に顔を歪めた。神楽は大きな青い目で銀時を見つめていて、何だかんだ言ってもこの不確かな関係が嫌いにはなれなかった。隣に居てもキスをしても、何をしても文句を言われないのだ。それはなかなか心地が良かった。朝帰りにさえ目を瞑ればの話だが。

 銀時は時計を置いた手を布団に泳がせ神楽に辿り着くと、細い腰を引き寄せた。そして、断りもなく神楽の柔らかな胸を触ると、まだ眠たそうな目を閉じた。

「なぁ、実はお前に話があんだけど」

 銀時は神楽の服の中に手を滑り込ませると、そんな事を言いながら神楽の胸を弄った。声のトーンとやっている事のギャップに、どちらか一方を優先して欲しいと神楽は困惑した。

「銀ちゃん? ちょっと……」

「あぁ、コレ? まぁ、気にすんな」

 呑気にそんな事を銀時は言ったが、既に服を捲くられて白い胸を露出させられてしまった神楽は、赤い顔で胸元の銀時を見ていた。

「お前、気付いてなかっただろうけど」

 神楽は手の甲で自分の口を押さえると、眉間にシワを寄せた。銀時の舌が赤ン坊のように絡みつく。

「銀さん、夜中も働いてたわけよ」

 神楽は体がビリッと痺れた。まさか銀時が夜に出掛けていたのが、仕事だとは思ってなかったからだ。

「……昼間も働いてる人みたいな言い方アルナ」

 神楽はそんな軽口を叩いた。どっかの女とまぐわっていたワケではない事を知り、気持ちが晴れ晴れとしたからだ。すると銀時は神楽の胸元に埋めていた顔を上げると、顔を歪ませた。

「はぁ? こうして布団の中で働いてんだろ」

「これ、仕事だったアルカ?」

 銀時は神楽の下着の中に手を滑り込ませると下腹部を触った。

「……まぁ、務めっつーか、恋人の役目っつーか」

 神楽はその言葉に瞬きを数回すると耳を疑った。確かに今、銀時の口から出たのだ。恋人と言う単語が。神楽はそこで初めて、五年後の世界では銀時と神楽が交際をしていると知ったのだった。急に胸の鼓動が激しくなる。

「良いから黙って聞けよ。とりあえず銀さんは、可愛い可愛い神楽ちゃんの為に金を稼いで来たわけよ。夜間工事で汗水垂らして」

 銀時は慣れた手つきで神楽の下着を脱がせてしまうと、股を開かせた。

「なんの為か分かるか?」

 銀時の指が悪戯に動いて、水分を含んだ音が布団の中から聞こえて来た。神楽は呼吸を乱しながら小さく首を振ると、紅潮した頬で銀時をぼんやりと見つめていた。

「おいおいおい、神楽どうした? 今日はちょっとコレ。ほら、マジか?」

 愛液まみれの銀時の指が膣へゆっくり出たり入ったりと繰り返す。その都度、神楽の肉は絡みつき、その指を逃しはしないと欲張った。

「そうだろ? 想像もつかねぇだろ? 銀さんもやる時はやるんだよ」

 銀時はどこか嬉しそうに言うと、履いていたズボンと下着を布団の中で脱いだ。そして、神楽の上へと体を重ねキスをすると、自分の熱いモノを神楽の割れ目に押し当てた。

「で、何買ったと思う? 当てたら……」

 そう言って銀時は神楽の中に押し入った。そして次の瞬間、何があったのか急に神楽の名前を叫んだのだった。

「神楽ァアアア!」

「な、何アルカッ!」

 神楽はインサートと同時に叫んだ銀時に目を大きく開くと、何事かと驚いた。

「神楽か? 神楽なのか?」

 突然おかしな事を言う銀時に神楽は眉間にシワを寄せた。

「どうしたネ? 銀ちゃん?」

「たまから話は聞いた! お前、元の時間に戻れ…………!」

 言いかけて銀時はピタリと動かなくなってしまった。神楽は騒いだり止まったり忙しい奴だと銀時の様子に首を傾げたが、クイズは後でやろうよと銀時に唇を寄せたのだった。小刻みに震えている銀時の唇。神楽はどうしたのかとその顔を見た。すると、銀時の顔は何とも言えない表情をしており、額に汗を滲ませていた。

「ど、どうしたアルカ?」

「い、いや、かっ、神楽ちゃんんッッ?」

 神楽はもう一度口付けをすると、にっこり微笑んだ。

「言いたいことがあるなら、ハッキリ言えヨ」

 すると、銀時は神楽の耳元で囁いた。

「出ちゃったんですけど……」

 神楽はまだ繋がって間もないのに、銀時の身に一体何が起きたのかと、不思議で仕方がなかった。

「つーか、何があったんだよ! 五年で何が……あっ!」

 神楽の中で一度果てた銀時だったが、またすぐに固くなると、みるみる内に膨らんだのだった。

「神楽、とりあえず動くけど……ちょっ、お前、嘘だろッ!」

 神楽はようやくその体に刺激を受けると、待ちわびていたのか銀時の肉棒を悦んで包み込んだ。銀時は表情を崩すと、何かを我慢するように歯を食いしばった。神楽も先ほどまでとは比にならない銀時の熱さに、甘い声を惜しみなく零した。

「お前に戻り方を教えに来たのに……どーすんだよッ! 戻るに戻れねぇだろッ!」

「銀ちゃん、今なんて?」

 神楽は銀時の言葉に“戻り方”と言う単語を見つけた。しかし身も心も既にとろけてしまいそうで、神楽は聞き返しはしたが、本当はもうどうでも良かったのだ。

「もう……駄目アルッ」

 甘い啼き声を撒き散らしながら、神楽は銀時の体に仰け反りしがみ付いた。そんな官能的な神楽に銀時は、荒々しく腰を打ち付けると、餓えた獣のように神楽の全てをしゃぶり尽くすのだった。