7,沖田side
委員会が終わって下駄箱で下靴に履き替えている時だった。
「あれ? チャイナ娘、総悟のこと待ってるんじゃねえのか?」
言われて気付いたのだが、神楽の靴が下駄箱に収まっていた。という事は、まだ校内に残っているのだろう。沖田は再びスリッパに履き替えると近藤たちに言った。
「先に帰ってくれ」
その言葉に腹を空かせている友人たちは、皆が『また明日』と言い帰って行った。もちろん沖田は神楽を捜すつもりをしているのだ。こんな時、神楽がケータイを持っていればどんなに良かったかと思っていた。いくら勝手知ったる学校とは言え、神楽一人を捜し出すのは骨が折れる。3Zの教室はとっくに空になっており、他をあたってみるもどこにも神楽の姿はなかった。もしかすると神楽のことだから、下靴に履き替えるのを忘れてスリッパで帰ったのかもしれない。もしそうであれば明日思いっきり笑ってやろうと思っていた。だが、万が一自分を待っている可能性も捨てきれない。沖田は廊下を適当に歩くと、灯りのついている教室を回るのだった。
三階の隅にある国語科準備室。そこの灯りが目についた。だが、次の瞬間には消えて誰かが部屋を出た事が窺えた。
銀八でも残ってんのか?
何となくそんな事を頭で考えていた。そうして一周校内を周り終えると沖田は下駄箱まで戻って来た。やはり神楽は靴を履き替え忘れて帰ったのだろう。そう思って神楽の下駄箱を見ると――――――
「あれ? あいつ、今帰ったのか?」
妙な胸騒ぎを覚えた。それが何であるのかハッキリとはしないが、すれ違ってしまった事にどこかいい気分ではなかった。それでも翌日、自分の机に残された落書きを見つけて、嫌な気分はすっかりと吹き飛んでしまった。
◇
しばらく神楽と二人きりで会えない日が続いた。放課後に自宅へ誘うも用事があると言われ、休日にはなかなか家を空けられないと断られる事が多くなった。偶然で片付けるにはあまりにも続きすぎる。
あいつ、俺を避けてんのか?
すれ違いだと感じているのはどうやら気のせいではないようで、神楽の心が離れていった原因を探ってみるのだった。
行き着くのは決まって《セックス》である。上手く行かなかったあの日から、どうも関係がこじれてしまった気がするのだ。やはり引いたのだろうか。それともこちらへの気遣いだろうか。どちらにしてもこの部屋に神楽が来なくなった理由は己であると感じていた。
非は自分にある。珍しくそんな事を考え、一人でテレビゲームをしている休日のことだった。来客を知らせるインターホンが鳴ったのだ。沖田はどうせ何かの勧誘だと無視を決め込もうとしたのだが、もしかすると神楽の可能性もあるとコントローラーをぶん投げた。
鍵を開けて慌ててドアを開けると、そこに立っていたのは神楽であった。ただその身なりがいつもとは違い、少々沖田は驚いていた。真っ赤なチャイナドレスを着ているのだ。いくら留学生で、この国の者ではないと言え、このド派手な衣装は目を見張るものがあった。大きく入ったスリットから白く艶かしい腿が覗いている。
「来てやったアル、オヤツくらい出せヨ」
生意気にそんな事を言う神楽に沖田の口角も上がる。
「そんな格好で来るたァ、相当溜まってんだろ?」
神楽は沖田を睨みつけると、玄関ドアをうるさく閉めた。
「それはお前じゃないアルカ?」
そう言った神楽は玄関先だと言うのに、靴も脱がずに沖田の服を引っ張ると唇を唇に引っ付けた。そのせいで沖田の心拍数は一気に上昇する。だが、悪くないと神楽の腰を抱くと沖田は激しくキスを交わすのだった。二人の間に出来てしまった隙間を埋めるように。
神楽の舌を激しく吸い込み、自分の唾液で汚す。舌先に絡みつく神楽の舌は『もっと』とせがむようにつついてきた。神楽も久々のキスに興奮しているのだろうか。白い手が沖田の下腹部へと伸びて…………薄手のズボンの上から握られる熱の塊。その手つきはいやらしく、沖田も思わず腰を引いた。
「なんでィ、そんなに欲しいのか?」
神楽は何も答えずキスをせがむと、沖田のズボンのファスナーを下ろしてまだ上昇途中の性器を引っ張りだした。神楽の手に包まれ、一気に昂ぶる。熱は増し、擦られるとまた出てしまいそうになった。
「出せヨ、楽になりたいダロ? ずっと溜めてたの知ってるアル」
確かに神楽と会えなくなってから一週間は経つが、一度もヌイていなかった。久々の刺激が神楽の細い指では強烈すぎるのだ。程よい指の締め付けと手首の動き。すぐにでも果ててしまいそうだ。こんなふうに神楽に擦られるなど初めてで、先走り汁を塗りつけるように愛撫する神楽に沖田の腰は砕けてしまいそうであった。
「あッ、や……待て……」
しかし、神楽の手が動く度にニチャニチャと卑猥な音が立ち、我慢が出来るラインはすでに越えていた。玄関先であるにも関わらず、沖田は神楽の手の中で熱い体液をぶちまけてしまうのだった。
あまりにも刺激的で沖田は神楽を抱きしめて立っているのがやっとだ。一週間振りに現れた彼女がチャイナドレスで、それでいて上手く手を使うのだ。出すなと言う方が無理である。沖田は呼吸を整えると神楽に部屋へ上がるように言った。
「……手、洗うアル。こんなに出るなんて思ってなかったネ」
その言葉に沖田は頬を染めると、煩いと呟いた。自分でもこんなに溜まっているなどとは思ってもみなかったのだ。沖田は神楽の手に絡みつく自分の精液から目を逸らすと、先に自室へ向かうのだった。
ベッドの上に並んで座る沖田と神楽。だが、その唇は既に重なっており…………しかし、神楽が顔を離した。
「私、色々考えたネ」
「なにを? 色気の出し方か? 上出来でィ」
神楽はそれには違うと怒るも、真面目な顔をするとこちらを見つめた。
「やっぱり、もっとちゃんと大人になってから……エッチした方が良いって思うネ」
沖田はその言葉に顔をしかめた。言っている事は理解出来るのだ。すごくマトモで真面目で、学生である身としては百点の発言だろう。だが、そんな事を思うようになったのは、やはり前回の未遂事件のせいではないだろうかと表情も曇る。
つまりは俺のせいか?
出来ることなら神楽には一緒に乗り越えてもらって、近々体を結びたいとは思っているのだ。欲を言えば、この数時間の内に……
「心配するな、ちゃんと出来る」
沖田は言ってみた。今日はもう既に抜いてあるのだ。早々に漏らしてしまうことはないと思っていた。だが、神楽は首を縦には振らない。
「そういうこと言ってるんじゃないアル! それに……私とのこと、真面目に考えてるなら我慢出来るダロ?」
それを言われると何も言えなくなる。だが、それでも出来ることならば抱きたいのだ。
確かに静かに抱きしめて満足してしまう事もあるのだが、そんなものはその日の気分でいくらでも変わってしまう。今はとにかく体を繋げてしまいたかった。神楽の熱をもっと深い場所で感じたいのだ。
「テメーだって……」
沖田はそう言うと神楽のスリットから手を滑り込ませた。すると神楽の挑発的な目がこちらに向けられ、神楽の股が開いたのだった。それに誘われるように手が下腹部へ伸びると、下着の上から割れ目をなぞった。すでにそこは湿っており、先ほどのキスで濡れてしまったことが窺えた。
「セックスしたくならねーのかよ……」
触れる下着の脇から指を突っ込めば、ピチャピチャといやらしい音が聞こえる。神楽の頬も紅潮し、この愛撫を気に入った事が読み取れた。
「前も……言ったけど……んッ……私は別に……お前と一緒に居られたら……あッ……それで良いアル……」
沖田は指を奥深くまで咥えさせると、指先だけを速く動かした。神楽の呼吸もそれに合わせて速まる。
「テメーがこんなに濡らすと、俺は突っ込みたくて堪らなくなるけどな」
神楽はその言葉に大きく反応を見せると、沖田の腕にしがみついた。
「そ、そんな……ことぉ……言うナヨ…………」
神楽もきっと本当はセックスがしたいはずだ。だが、体の欲だけに溺れてしまうのがきっと怖いのだろう。沖田もそれを分かってやれないほど子供でもなかった。それに無理矢理に奪うつもりもない。それなら今はこうしてじゃれ合っているだけで構わないと、せめて卒業するまで大切にとっておこうと思ったのだ。
だが、それでも自分の指で善がって啼いている姿を見ると下半身は疼く。今すぐにでも一つになってしまいたいと。
「総悟、イッちゃうアル……」
敏感な体。指を一本入れて軽く動かしただけだと言うのに、神楽は体を仰け反らせながら小刻みに震えた。沖田はそんな神楽を抱きたくて堪らなかったが、もう一度だけ手でヌイてもらうとことを条件に諦めるのだった。
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