桃色傀儡


5,沖田side


 今日は珍しく神楽から学校帰りに宿題をしようと提案してきた。沖田としては宿題なんかよりも神楽とベッドの上で引っ付いてしまいたかったが、部屋に来てくれるのなら理由は何だって良かった。それが本音だ。

 しかし、少しは神楽にもその気があるから家に上がったとは思っているのだが、先ほどから神楽はテーブルを挟んだ向かい側で真剣にプリントを眺めているだけだ。沖田としては宿題よりも己の右手が神楽についてもっと知りたいと騒いでいて、それを抑えるのに必死であった。今も気を抜けば無理やりにでもベッドへ運んでしまいそうなのだ。セックスが出来る、出来ないは別として。

「なぁ、休憩しようぜ。テメーの頭じゃいっぺんには無理だろィ」

 神楽の顔が沖田へと向けられ唇が尖った。

「腹立つアルナ。でも、確かに休憩したいネ」

 そう言った神楽がぐっとその場で背伸びをし、沖田も後ろ手について足を投げ出した。と、次の瞬間には沖田の膝に神楽が向かい合わせで跨っており、抱き合うような体勢になった。

「なんでィ。勉強のしすぎでついにイカれちまったか?」

 とは言ったが、こんなイカれ方なら大いに歓迎すると沖田の胸は弾んだ。神楽の両手が沖田の頬に添えられる。

「……マジかよ」

 まさか神楽からキスをしてくるとは想像もしてなかったのだ。神楽の可愛い顔がゆっくりと近づき、そして柔らかな唇が押し付けられる。逸る心臓を落ち着かせようとゆっくり息を吸い込むも、逆に神楽の華やかな匂いが取り込まれ興奮してしまった。すると神楽はそんな沖田の気持ちを察したのか、小さな熱い舌を沖田の唇の間へと挿し入れたのだ。ヌルヌルと湿った生き物のような舌。それが初めて沖田の口の中へと侵入を果たした。

 耳の中で心臓が……二回は破裂した。それくらい脈拍は上がり、神楽の舌先に触れ合った瞬間、武者震いまで起きそうになった。呼吸は一気に乱れる。神楽を抱きしめて、そして羞恥を投げ捨てるように自分から神楽の舌に吸い付いた。

 今日ならイケる。沖田の頭にはその言葉しか浮かばなかった。いつもの神楽とは違う大胆さに少々驚きはしたが、これも神楽からの合図だと受け取った。この自分に抱かれたくなったのだろうと…………

 沖田の下腹部に熱が集まり、跨っている神楽の股間へと塊がぶつかる。沖田の片手は神楽の胸へ伸びると欲棒のまま乱暴に撫で回した。セーラー服の中へ滑り込めば、ブラジャーのホックを外す。そして、神楽の小ぶりな胸を揉んだり、引っ張ったり、転がしたり……その間も沖田の舌は神楽の口の中で暴れまわる。

「ふぅ……んッ……」

 鼻にかかった甘い声は先ほどから漏れでていて、神楽の興奮も伝わってくる。何よりも、いつもより神楽の乳首が固く、メスの本能が目覚めたかのように体も反応を見せていた。

 もう我慢ならない。そんなふうに思った沖田は神楽をベッドへ運ぶと、仰向けに寝かせた。そして、シャツを脱いで上半身だけ裸になると神楽に覆いかぶさるのだった。

 ゆっくりと神楽のスカートの中を弄る。白い太ももに触れて、足の付根へと移動し、そして、パンツの上から神楽の熱い中心部を触ると…………

「なんでィ、こんな濡らして」

 既にそこはシミをつけており、神楽の膣が早く何かを咥えさせろと言っているようであった。沖田は神楽のパンツの中に手を突っ込むと、中指を静かに沈み込ませるのだった。

「なんで……痛くないアル……」

 そう言った神楽の顔は歪み、下唇を噛み締めた。それが快感を受けて生じたものだと沖田は知っている。生温かく、しかしザラッとしていて、挿れれば確実に落とされるであろう神楽の膣穴。今日は指が簡単に滑っていく。沖田は軽く中をかき混ぜるように動かすと、神楽のつま先に力が加わった。

「それ……ダメぇえ!」

 シーツを掴み、快感に耐えている神楽は妙に色っぽく、沖田の体も堪らなく熱くなった。早くこの中へ入れてしまいたい。だが、初めて神楽をこの指で善がらせる事が出来たのだ。もう少しだけ弄っていたいと、沖田の指は激しく出入りを繰り返した。

「やんッ……ダメっ……ふッ、んんッ…………」

 神楽の喘ぐ声が欲情させる。赤い顔やとろけきった表情。それらを自分が作り上げている事実に満たされた気持ちになる。だが、これで満足はしない。沖田は神楽の中から指を抜くと、ついに自分もズボンを下ろした。もう恥ずかしさはない。そそり立つ男性器を取り出すと、ズボンのポケットに入ってあるコンドームを取り出した。それを不慣れな手つきで自分のものに被せると、神楽の腰を引き寄せた。

「ま、待てヨ」

 神楽の不安そうな顔がこちらをみる。

「そんなの絶対入らんアル」

「試してみるだけだ、先っちょだけなら良いだろ?」

 沖田はそう言って神楽のパンツを足首に引っ掛けたまま、すっかりとほぐれている膣穴へ肉棒をあてがった。薄いゴム越しに柔らかな女体と熱がビンビン伝わってくる。

 マズい…………

 それだけで思わず腰が曲がる。沖田は深呼吸をすると、神楽の膣穴を押し広げるように亀頭のほんの先っちょを引っ付けた。

「いやァ……入らんアル!」

 神楽がそう言って僅かに体を揺らした時だった。沖田の頭がビリっと痺れて、腰に強烈な刺激を感じた。次の瞬間には射精しており、沖田は息を止めるとコンドームの中へ白濁液を注ぎ込むのだった。


 静かな時間が流れる。そして、一気に自己嫌悪の嵐が吹き荒れた。

「ああああああああッ!」

 沖田は頭を抱えるとその場に顔を伏せた。やってしまったのだ。挿入前に射精するなど、どんなにヤワな体なのだと悲しくなった。気持ちが好かっただけにその自己嫌悪は一層深いものになってしまった。本当ならここからが本番である。神楽の中に入って、腰を激しく打ち付けて善がらせる予定だったのだ。だが、初めての女性のカラダには、いくらコンドームを装備していても勝てないと知ったのだ。少し擦っただけで果てるなど、恥とすら思っていた。何よりも折角の機会を逃した自分に嘲笑いしか出なかった。

「俺は……ハハハ……笑えよ……」

 沖田がベッドに突っ伏しブツブツと嘆いていると、神楽が抱きついてきた。哀れに思っているのだろうか。怒っていないだけマシだと思うことにした。

「私は別に……お前と一緒に居られたらそれで良いアル……」

 慰めの言葉にしては甘くド直球であった。沖田はなんて可愛いことを言う女だと涙目で神楽を抱きしめた。きっと自分から大胆にキスをしてきたくらいなのだから、神楽もセックスがしたかった筈なのだ。それなのに気遣う言葉を掛けてくれた事には素直に喜びを感じる。

 しかし結局この日、二人は体を結ぶことなく別れた。沖田の射精のせいでいい雰囲気は壊れてしまい、神楽が早々と帰ってしまったのだ。出来ることなら指だけでイかせてやりたくもあったのだが、自己嫌悪でそれどころではなかった。

 次は……今度こそは神楽を抱けるだろうか。沖田は華やぐ香りの残ったベッドで一人そんな事を考えているのだった。