桃色傀儡

 

3,沖田side


 神楽に触れてその温かさを知り、そして頭の中で汚して、穢して、愛して。そんな後ろめたさのせいか神楽と以前のような距離間で向き合うことが出来なくなっていた。向こうもそれは同じらしく、分かりやすいくらいに避けている。後悔しているのだろう。熱に浮かされてこの手を『気持ち良い』と掴んでしまったことを。だが、同じく沖田も後悔していたのだ。あの瞬間に想いを吐き出していれば良かったと。だが、これだけ避けられている所を見れば…………普通の会話すら二度と出来ない気がしていた。しかし、だからと言って自分から神楽に話し掛ける事はしない。勇気のなさという奴なのか、それとも根拠の無い自信なのか。時折、赤く染まって見える神楽の頬が沖田の胸をくすぐった。そんな顔を向けられれば沖田も疼く。きっと今ならあんなじゃじゃ馬であっても、手に入れるのは簡単だろうと。しかし、口が裂けても『好き』なんて言葉は紡げない。自分がそんな甘い言葉を心から口にしている姿を想像するだけで顔が変になるのだ。

 だが、突然状況は好転した。神楽の方から話しかけて来たのだ。

「今日、放課後……ちょっと乗せて行けヨ」

 沖田は思わず緩みそうになる頬に力を加えると、なんてことない表情を作った。

「明日、売店で何か奢れよ」

 すると、神楽はいつかのように『ケチ!』と言って沖田の脛を蹴り飛ばした。しかし、沖田が仕返しをする前に神楽は駆け出すと教室から出て行ってしまった。あの焦り方と赤い頬。これには放課後に何が待ち受けているのか、分からないほど鈍くもなかった。

 期待してバカみたいに心臓が騒ぐ。沖田もいよいよ末期であると、自分がいかに神楽に惚れているのかを感じていた。


 放課後。教室を出て、下駄箱でいつもより時間をかけて靴を履き替える。そして、やる気のない顔で自転車へと跨ると、待ってなどいないと言ったふうに神楽を振り返る。

「早く乗れ、バカチャイナ」

 神楽の顔がむくれて……だが、余計なことは言わず自転車が軽く沈み込み、華やかな香りが鼻孔に広がる。そんなものに沖田の耳が熱くなった。

「…………お前こそ、早く漕げヨ。バカドS」

 残暑の熱いアスファルトを靴底で蹴り込めばペダルを回す。行き先は分からない。ただこの瞬間がもう一度やってきた事に胸は舞い踊り、普段隠している自分が表れる。感情的で情熱的な男が…………

「家に来いよ、どうせ暇だろィ?」

「…………そのつもりだったアル」

 暑さのせいか、こめかみ辺りに引っ付いていた雫が顎先まで流れていく。

 もしかすると自分の返答次第では、心を繋げるどころの騒ぎでは収まらない。そんな思春期特有の青臭い妄想を抱くも、沖田は黙ったまま神楽を自宅まで連れて行くのだった。


 密室。喧騒からも遠ざかり、二人しか存在しないような世界にやって来た。きっとそれは間違いで錯覚なのだが、そう思わせる空間であることは確かだ。ベッドへもたれるようにラグカーペットの上に並んで座っているのだが、なかなか互いに言葉が出なかった。沖田は待っているのだ。神楽が紡ごうとしている言葉を。ここで茶化してチャンスを棒に振ることだけはもうしたくなかった。どれだけ時間がかかろうとも、神楽が言いたいのであれば待つつもりなのだ。

 沖田の部屋からはベランダへと繋がる大きな掃出窓があるのだが、外は既に紅色の空を広げていた。このままでは夜になってしまうだろう。それでも沖田は神楽を待った。その甲斐があって、神楽もようやく口を開くと、今にも倒れそうな色のない唇で沖田に言ったのだった。

「この間……保健室のことネ…………お前の手握ったりして、あれは……なんか……あッ! 銀ちゃんから何も聞いてないだろーナ!」

 思わず噴き出して笑った。もう頭の中がザッピングされ、考えがまとまらないようなのだ。沖田もこれにはさすがに助けてやるかと口を挟んだ。

「あー……そういや銀八が何か言ってたな」

 神楽の頬がピンクに染まり、パクパクと口を動かした。声すら出ないようなのだ。

 正直、沖田も余裕はない。馬鹿にしたように見下した態度で神楽を見ているが、それもフリである。だが、神楽が言葉を口にするまで沖田は自分の気持ちを隠しておこうと思ったのだ。理由は実に分かりやすいものである。そっちの方が面白いからだ。

「テメーが現国で40点取ったって」

「よ、よんじゅ、40点!?」

 もちろんデタラメを言ったのだから神楽が驚くのも無理がない。

「最高で20点しか取ったことないアル!」

 そんな色気のない話を沖田は流すことにすると、取り合わずに神楽との距離を僅かに詰めた。空気が急に張り詰める。神楽も数センチ動いた沖田に気付いたのだろう。途端に口を結び、大きな瞳いっぱいに沖田を映した。

 紅色の光が室内に差し込み神楽の白い肌を染め上げる。そして、瞳まで赤みを帯びるとその温度の高そうな眼差しに沖田の体温も上昇した。

「テメーは…………ほんと、分かりやすい女でい」

 神楽の熱っぽい目が僅かに伏せられる。

「じゃあ、言ってみろヨ……今、わたしが……何考えてるか……」

 震えるまつげ。それを眺めながら沖田は軽く首を傾げると、神楽の顔を覗き込んだ。もう呼吸が既に苦しそうで、今にも沖田をぶん殴り逃げそうな勢いである。だが、神楽はそんな事をしない。沖田は確信していた。この間の時のように、触れて欲しいと望んでいるのだと。沖田は手を伸ばして神楽の頬に触れた。柔らかく温かく、そして心地良い。

「お、沖田!?」

 神楽は何も言わずに触れた沖田に驚いているようだった。それは急だったからか、それとも心のなかを覗きこまれたからなのか。神楽の手は沖田の手を払い除ける事はしなかった。

 窓の外は太陽が沈み始め、藍色が迫ってきていた。太陽が引き下げられるのと同じように、沖田もそろそろ隠せない心の濁りをさらけ出す。手が触れているだけでは満足出来なくなったのだ。神楽の言葉を待つとは言ったが、飽くまでもそれは自分が勝手に決めたルールである。それを破っても咎められることはない。

 沖田は神楽の顔を引き寄せると自分へとグッと近づけた。しかし、体は震えている。人並みに緊張はするのだ。それでもその唇が欲しいのだと沖田は自分のものを重ねるのだった。

 だが、ガチっと歯が当たり、それはとても不格好であった。思わず顔を引くと怒ったような泣きそうな、笑っているような何とも言えない神楽の顔が現れた。

「…………へ、ヘタクソ」

 神楽のその言葉にガラスのハートが割れる音が聞こえた。やはりショックではあるのだ。しかし、慣れていないものはどうしようもない。神楽が経験済みであるかどうかは分からないが、きっと『ヘタクソ』と言うからには上手なキスを知っているのだろう。沖田は言った。

「なら、今度はてめェからやってみろ。下手なんて言うからには、テクニシャンなんだろうな?」

 神楽は急に目に涙を浮かべると沖田をキツく睨んだ。だが、その頬は赤く少しも怖くはない。

「虜になっても知らんアル……覚悟しろヨ……」

 そう言って神楽の唇がゆっくり近付いてくると――――――重なるほんの少し手前で止まった。

「お前が……好きネ…………」

 痺れる脳天。神楽の甘い声が沖田の耳に届くと、弦を震わせるように鳴り響いた。

 もうじっとはしていられないと、沖田は神楽を強く抱きしめそのままカーペットの床に押し倒すのだった。


 がっつき過ぎ、と言う奴なのだろうか。沖田は何度も神楽に『痛い』と言わせた。

 慣れてねーんだよ…………

 そんな事を思っていたが、神楽も慣れていない事は明らかであった。唇を重ねる度に床をタップして息苦しいと合図するのだ。キスに慣れていれば、きっとこうではない。

 神楽がプハっと息を吸う度に、沖田はもう一度だけだと唇を吸った。そうして互いに唇の柔らかさや熱を覚えようと必死にもがいていると――――――沖田の手が我慢ならずに神楽の胸へと移動した。

「んぐッ!」

 神楽が床をタップしたが、もう知らない。夏服の薄い生地越しに触れる神楽の肉体。想像しているよりそれは柔く、手のひらにすっぽりと収まった。静かに手のひらで撫でてみる。だが、それでは足りないとゆっくり揉んでみた。

「んッ……ふッ…………」

 聞いたことのない声が耳に入る。一体どんな顔をしているのか。気になった沖田はただ触れているだけの唇を離すと、神楽の顔を見てやった。

 溶けきったような表情。そして濡れた唇が欲情させるに相応しい艶をまとっていた。ムカつくほどにそそられる。いや、『ムカつく』とは言ったが、だからと言って取っ組み合って喧嘩する気はもう起きない。あれほど拳をぶつけ合っていた相手なのだが、今は微塵も殴りたいなどと思わなかった。愛しさと言うものが存在するのならば、今まさに胸に広がるこの気持がソレであると沖田は確信めいていた。

「ど、どこ触ってんだヨ」

 神楽が小さな声で叱る。

「どこ触ってるか分かんねーのか?」

「そういう意味じゃないアル」

 沖田は神楽の顔を見ながら少し強めに胸を揉んだ。神楽は恥ずかしいのか顔を横に向けてしまうと、下唇を噛み締めた。それを沖田は目を細めて眺めており、もっと何か反応が欲しいと思ってしまった。

 制服の裾に手を移動させる。そして、ゆっくり中へ滑り込ませれば神楽の素肌が指先に触れた。その瞬間、神楽の体がピクンと跳ねる。開かれた目は瞬きを繰り返しており、呼吸は浅いものへと変わった。恥ずかしさと緊張で体は強張り、少しもこちらを見ようとしない。沖田はそれを愉しいと思いながら見ており、更に反応が欲しいと欲張った。手を更に上へと移動させてみると…………手のひらにブラジャー越しの乳房が触れた。小ぶりではあるが、女らしく丸みを帯びており、そのあまりの柔らかさに沖田の呼吸も浅いものへと変わっていった。

 神楽の夏服の中でうごめく手。しかしそろそろ手だけでなく、今度はこの目にも映したいと思い始めた。沖田は何も言わずに制服を捲ってしまうと双眼に刻みつけるように見つめた。神楽の淡い色のブラジャーとそこに隠れる白い胸を。

「あッ、み、見るナヨ……」

 言葉を無視し、沖田は凝視した。正直、こんなに間近で見るのは経験がない。何度か女子に抱いてと迫られた事はあったが、実際に触れたのも見たのも初めてである。それも惚れている女のおっぱいだ。その辺のおっぱいとは比べ物にならない程の価値がある。思わず沖田の喉が鳴った。揉みたいし、摘みたいし、吸いたいし、舐めたい。そんな欲棒の渦が己の意識ごと体を引きずり込んだのだった。

「これ、取っていいか?」

 沖田は神楽の返事も待たずブラジャーを乱暴に上へとずらすと、神楽の無垢な乳房を晒してしまったのだ。白い乳房と桜色の乳首。それが目の前に現れて沖田の興奮も更に増した。

 これは……近藤さんにも教えられねェな…………

 誰にも秘密にして自分だけのものにしたい。沖田の中で神楽に対する独占欲が急激に育っていった。神楽も嫌がることなく恥ずかしそうに頬を染めているだけだ。きっと沖田とこうなる事は想定していたのだろう……いや、惚れている弱みかもしれない。好きな男になら何をされても良い、そんな事を考えているのだろうか。沖田は神楽の気持ちを確かめることなく乳房を揉むと神楽の顔をジッと見つめた。

「んんッ……」

 軽く歪み、そして目を閉じる。まるで何かを堪えているかのような表情だ。それは今までに見た中で一番女らしい顔であった。しかし、堪らないのは沖田の方である。神楽の乳首を人差し指でつついてみると、それは徐々に固さを増し、舐めてくれと言わんばかりに立ち上がった。感じているのか、それは分からないがこんなふうに反応してくれるとあっては…………沖田も応えないわけにはいかなかった。

 乳首を軽く摘むと引っ張ってみた。神楽の目がキツく瞑られる。それを離して再び摘むと、今度は軽く指を擦り合わせてみた。神楽の固い乳首が指の間で更に膨らむ。

「やッ……あンッ…………」

 下半身に響く甘い声だ。沖田はそんなはしたない声を漏らしてしまった神楽にニヤリと笑った。

「感じてんのか?」

「知らん……アル……」

 潤む瞳でこちらを見た神楽に沖田はもう限界だと、白い乳房にしゃぶりつくのだった。



 神楽との交際はすぐに学校中に広まった。誰かが下校途中の二人を見ていたらしく、噂には尾ひれがついていたが、それでも事実であると沖田は黙っていた。

 さすがに近藤と土方……と山崎くらいには自分の口から伝えておくかと、昼休みに教室前の廊下で沖田は打ち明けるのだった。どうも沖田の中では《パブリック》という言葉が欠けているようだ。

「噂にもなってんだろーが、チャイナ娘と付き合った」

 これには近藤も土方も山崎も特に何という反応をすることなく、無表情で紙パックジュースに刺さったストローを噛み締めていた。

「なんでィ、もっと驚くとか祝福とか無えのかよ」

 すると土方がつまらなさそうに呟く。

「いや、つうか……寧ろもう付き合ってんのかと思ってたけどな」

 すると近藤も頷いた。

「ああ、俺もそうだ。とっくに《ピー音》まで済ましてると思ってたがな」

 すると山崎が飲んでいたジュースを噴き出した。

「委員長! ちょ、ちょっと女子に聞こえますよ!」

 どうも山崎は生意気にも教室にいるたまを気にしているようなのだ。沖田はハァと息を吐くと、通常運転で安心したような、面白味がないような複雑な気分になった。しかし、きっと次の発言はバカ共も驚くであろうと沖田は思っていた。

「じゃあ、本題だ。どうやれば《ピー音》に漕ぎ着けるのか教えてくだせィ」

 ここで言う《ピー音》はセックスであり、それ以上でもそれ以下でもない。近藤も土方も山崎もまた無表情になると、つまらなさそうに言った。

「まぁ、そんな気はしてたが……まずはチャイナ娘に男として意識されるのが先じゃねェのか?」

 土方がそう言えば、近藤もウンウンと頷いた。

「そうだぞ、総悟。あの辛口チャイナ娘をまずは普通の女子に変える所から始めねーとな」

 沖田はこれには少しだけ嬉しくなった。まさかあの神楽が自分の前では、甘い声を出す女の子になるとは誰も知らないのだ。誇らしく思った。

「あ、いっけねェ。土方さんも近藤さんも彼女いねーこと忘れてた。聞く相手間違えたみてーだ」

 すると土方も近藤もこめかみに青筋を浮かべると、空になった紙パックを握りつぶした。

「てめェ、調子乗ってんじゃねーぞ」

「俺にはちゃんとお妙さんと言う(妄想)彼女が居るからッ!」

 沖田はさすがにつついてはいけない所をつついてしまったと、急いでその場から逃げ出すのだった。

 しかし、本当に悩んではいるのだ。神楽と二人で会う度に……と言ってもまだ数回程ではあるが、キスを交わし良い雰囲気にはなるのだが…………興奮しているにも関わらず、自分のモノが少しも動かないのだ。初めは病気を疑ったが、神楽が帰ったあと妄想では簡単に果てる事が出来る。つまりは神楽を前にすると、緊張やら何やらで勃つどころではなくなってしまうのだ。しかし、こんな事はさすがに近藤にも土方にも話すことが出来ない。それに情けなくも感じる。こうなったら慣れるしかないと、沖田は放課後に神楽を自宅へ招くのだった。


 神楽もそのつもりなのか、沖田の部屋に着くも落ち着きがなく、鞄の中を漁ったり、テレビをつけてみたりと忙しなかった。沖田も同じく手汗が止まらないと、今日もやはりダメな気がしていた。キスをして、胸を触って、それから神楽の足の付根に指を這わせて…………頭の中では上手くいくのだが、実際はそう簡単ではないのだ。何度か神楽の膣に指を入れてみたのだが『痛い』と声を上げられ、気付けば蹴り飛ばされている。そのせいで勃たないと言うのもあるが…………正直言って苦痛に歪む顔は嫌いではないのだ。ドS故の喜びが溢れてしまう。しかし、セックスまで一気に済ませる気にはなれない。やはり神楽の体は労ってやりたい。それに、するからには『気持ち良い』と言われたいのだ。

 だが、そうは言っても本番に向けての練習などはなく、いつだって神楽相手に真剣勝負である。失敗を恐れなければどうにかなりそうな気もするのだが、沖田はガラスのハート故にそれを怖がった。一度の失敗が命取りだと信じて疑わないのだ。それでも本音は今も隣でテレビに釘付けになっている神楽の体を抱き寄せて、キスをして、触って触られて早く一つになってしまいたい。出来ることなら、キスも舌を口の中に入れたりする激しいヤツをやってみたい。だが、一度《命令》をしてしまえば、きっと歯止めが利かなくなると沖田は我慢していたのだ。

 せめぎ合いである。命令して『跪いて、舐めろよ』と言う事は簡単だ。だが、この神楽が大人しくそうするとは思えない。言い返して、やり返して……きっと《いいムード》と言うものからは、何万キロも遠退いてしまうことだろう。どうにもならない歯がゆさに沖田は思わず奥歯を噛みしめると、それに気付いたのか不意に神楽の顔がこちらへ向いた。そして、少し尖った唇から可愛くない声を出たのだった。

「なんだヨ、さっきからジロジロ見て」

 相変わらず色気がないと沖田は思った。少しはこっちの苦労を知れとも思ったのだ。だが、それを言い出せない自分も悪いわけで…………

 沖田は神楽の頭に肘を置くともたれかかった。

「重いダロッ!」

 結局、何も言い出すことが出来ずに沖田は神楽を床に倒してしまうと、その柔らかい体に抱きついた。ラグカーペットの上に横たわる二人。神楽は頬を赤く染めて大人しく俯いており、沖田はそんな神楽を胸の中に押し込めると少々悔しそうな顔をした。

 実際に満たされた気持ちにはなっているのだが、やはり何も出来ない自分に情けなくもなる。全ての原因は神楽を愛してしまったことにあった。もう側に居てくれればそれで構わない、柄にもなくそんなふうに思うのだ。なかなか体を繋ぐことは出来ないが、セックスなどその気になればいつでも出来ると、まだ清き交際で十分だと思っていた。

 神楽の腕が背中に回る。そして、少しキツメに締め付けられる。

「そんな強くするな……」

「…………うん」

 そう答えた神楽の顔に笑みはなかった。そのことを知らない沖田はどこか柔らかい表情になると、しばらく神楽に抱きすくめられているのだった。