桃色傀儡

 

13,沖田side


 珍しく学校帰りに神楽が家に寄った。体育館裏で口淫の強要をしてから初めてのことであった。なんとなく学校でも避けられていて、もう関係の修復は無理だろうと正直諦めかけていたのだが……


 沖田の部屋でベッドに並んで座ってはいるが……神楽の表情は浮かないもので、今日来たのも関係修復の為でないことが窺えた。それでも沖田はもうこんな機会はないだろうと、素直に心を口に出した。

「……アレは俺が悪かった」

 すると神楽の顔が歪み、目に涙を溜めた。その表情の意味はなんだろうか。沖田の頭に色んな考えが駆け巡る。素直に沖田が謝ったことに関する感動か。それとも、もう戻れないと別れを悟っての涙か。反対に関係修復に対する悦びか……沖田には何も分からなかった。

「ごめん……アル……」

 そう言って反対に神楽が頭を下げるものだから、沖田も首を掻くと反応に困った。

「なんでテメーが謝る? いつもみたいにぶん殴れよ」

 しかし、神楽は震えて泣きながらただ顔を伏せていた。

 いつからこんなに弱々しくなったのか。神楽の女性が以前と比べ随分と際立つようになっていた。やはりそれはセクシャルなことを知ったからなのだろうか。今もそこで泣いて震えているだけだと言うのに、性的な魅力を感じる。

「わたし……お前とはもう……付き合えないアル」

 その割には沖田を見つめる瞳は熱く、まだ愛情が溢れているような気がした。

「そら、嘘でィ」

 沖田が顔を寄せ、顎を掴むも神楽は逃げなかった。それが《嘘》である証拠のような気がしたのだ。唇が重ねられてもそれは変わらず、沖田の舌が割り込むも神楽から絡めて来るほどであった。

「はむ……ちゅるッ……んんッ……」

 神楽の唇から漏れる音がいやらしく、沖田の欲情を大きく煽った。

 舌に触れる熱がもっと欲しい。沖田は我慢ならず神楽の体をベッドに押し倒すと……手がすぐに神楽の胸へと伸びた。

「や、やめッ……」

 だが、神楽が本気で嫌がっていない事を察すると、セーラー服の中へと手を滑り込ませた。しかし、それはハズレだったらしく、神楽の手が強く沖田の手首を掴んだのだった。

「やめろヨ」

 濡れた唇のままそう言う神楽に沖田の顔は険しくなった。

「なら、理由を言え。それが言えねーってなら……」

 沖田は神楽の手を振り払うと、神楽の上に馬乗りになった。抑える事が出来なくなっていたのだ。自分の中に眠る加虐性を。沖田はズボンのファスナーから中途半端に反応している性器を取り出すと、神楽の口元にひっつけた。

「こいつを突っ込む。それでも良いのか?」

 それまで弱々しく見えた神楽だったが、急に強い眼差しで沖田を睨み上げるとはっきりと口にした。

「お前こそ、それで良いアルカ? もう後悔しないアルカ? 全部知る覚悟はあるネ? どうなっても……いいアルナ?」

 何に対しての発言なのだろうか。全部知るとは一体何か。言葉に違和感を覚えたが沖田は神楽が最後に抱かせてくれる事を察知した。しかし、それは沖田に対する同情ではない。更に言えば、愛情でもない気がした。だが、このチャンスを棒に振ることもないと、沖田は神楽の口に固くなり始める肉棒を遠慮することなく突っ込むのだった。


 ジュブジュブと卑猥な音を立てて舌を這わす神楽に、沖田も目を閉じて快楽に溺れた。どうすれば気持ち良いだとか、焦らしになるだとか、よく知っている舌使いである。神楽の顔も恍惚と言ったもので、男の性器をしゃぶりながらなんて顔をするのだろうかと淫乱なメス豚が頭に過る。

「一回……出させろ…………」

 沖田がそう言うと神楽の手の動きは速まり、唇が竿を吸い上げる。その動きに悶絶した沖田はどれくらいか振りに神楽によって搾り取られるのだった。しかし、神楽は沖田の精液を口には出させず、手の中に留めた。それがやはり温度差を感じ、もう関係が終わるのだろうと思っていた。

 汚れ――――――それをティシュで拭った神楽は沖田を退かせ、体を起こすと頭の髪飾りを外した。パラパラと解けていく髪。そして、セーラー服を脱ぎ始めると、思っているものよりも派手な下着が露出した。しかし、それも神楽は取ってしまうと全裸になり、沖田の体をベッドへ倒すのだった。

「何してんでィ」

「何って、お前……したいんダロ?」

 確かにセックスをするつもりではいるが、こんなふうに神楽に押し倒されるのは御免であった。沖田は自分も着ているものを全て脱ぐと、今度は神楽をうつ伏せに寝かせた。白い小ぶりな尻がこちらを見ており、まるで誘うかのようにそれが上げられた。猫の背伸びのような格好をする神楽は、こちらに性器を見せつけながら笑っている。

「最後デショ? だから、思いっきりしても許すアル」

 そんな事を言った神楽の割れ目からはポタリと雫が溢れ、既に物欲しげに涎を垂らしていた。

「テメー……こんなに淫乱だったのかよ」

 そう言って沖田が人差し指を挿し入れほじると、神楽が腰をゆっくりと動かした。

「女の子は……みんな、こうアル…………」

 教室で早弁をしている時とのギャップに沖田は堪らなく熱くなった。さっき出したばかりだと言うのに、ソレは腹につくほどに元気になったのだ。

「もっと……指、入れて……かき回してヨ……」

 その言葉に従う沖田は神楽の中へ更に指を食わせる。そして乱暴に動かすと、神楽のいやらしく可愛い声が部屋に響いた。

「あン……はァ……グチャグチャに、してヨ……」

 その声を聞いているだけで卒倒してしまいそうだ。それほどに神楽の喘ぎが沖田の腰に刺さった。もう早く入れてしまいたい。そして、獣のように何も考えずに突きまくりたい。今の沖田に労るなどという言葉は出てこなかった。どうせもう別れるのなら、嫌われても良いと思ったのだ。

「足、もっと開けよ……」

 そう言って沖田が神楽の尻を引き寄せると、ほぐれた割れ目に亀頭をピタリと押し付けた。これが今から神楽の中へ飲まれていくことを想像すると……喉が鳴る。沖田は神楽の割れ目を指で広げると、ゆっくりと体を繋げるのだった。

「ああ……待って、イク……」

 ただ挿れただけだと言うのに神楽は体を小刻みに震わせると、四つ這いのまま絶頂を迎えたようであった。しかし、沖田はもう余裕がなく、動かずにはいられないと腰を打ち付けた。

 ヤバい…………

 そんな感想が浮かび、他に何も考えられなくなった。ただ自分の快楽を優先して沖田は夢中に突きまくった。突く度に神楽の乳房が揺れ、背後からそれを掴み、強めに乳首を引っ張れば神楽の膣がキュウキュウと締まる。

「好きか……なら、もっと突いてやらァ…………」

「ぎもちィ……もっと……してヨ、ああッ……はぁ……」

 神楽は髪を振り乱しながら踊り狂った。沖田も壊れゆく恋人の姿を見ながらひたすらに腰を振った。セックスを頑なに拒んでいたわりには随分と好きそうで、もしかするとこんな壊れた姿を見られるのが恥ずかしくて断っていたのではと思う程であった。そして、嫌なことに気がつく。

 こいつ、初めてじゃねーのか?

 額から汗が流れた。だが、何も確信はない。それに神楽が過去に恋人が居たかどうかも知らないのだ。しかし、もし自分の前に男がいたとしても、それは大した問題ではない。誰だって過去は持っているのだ。沖田だって神楽に話していない過去の一つや二つはあった。それに神楽はこんなにも……可愛い。気性にさえ目を瞑れば、惚れている男が他にも居たっておかしくはない。

 沖田は神楽の体にしがみつくと、そのまま倒れ、側位で激しく突き上げた。

「おかしく……なっちゃう……やめッ……て……」

「もっとって言ったり……やめろって言ったり……どっちだ?」

 沖田は神楽のクリトリスに手を伸ばしながら、性器を出し入れさせた。そうすると神楽の目には涙が溜まり、口からも涎が慣れ始める。

「うう……ああ……イグッ……いっぢゃう…………」

 激しく乱れる神楽はシーツを強く掴むと、自ら腰を振りはじめた。そして、乳首を尖らせながら叫ぶように言った。

「ぎん、ちゃん……好きアル……奥にッ、射精して……!」

 沖田は神楽の中で精液を垂れ流すと、胸は氷の刃が刺さったかのように冷えていった。ゆっくりと神楽から体を離す。自分のベッドの上でまだビクビクと痙攣している神楽を見るも、どこかそれが汚らわしい存在に見えた。

 今のセリフは一体何だったのか。乱れに乱れた神楽を思いだしながら沖田は考えていた。感度の良い肉体。初めてではないセックス。慣れたフェラチオ。そして『ぎんちゃん』と言うよく知った男の名前。沖田はその場に崩れるように座ると、涙を流しじっと動かない神楽を見ていた。神楽の言った知る覚悟とはこの事なのだろうか。奥歯に力が入り、ギリっと音が立つほどに強く噛み締めた。それに神楽も気付いたのか、ゆっくり体を起こすと髪を耳にかけた。

「わたしのカラダ……銀ちゃんのものに……なちゃったアル……ごめんアル……」

「いつからだ」

 沖田が睨みつけて怒鳴るように尋ねれば、神楽は分からないと首を振った。それとも言いたくないと言う意思表示なのだろうか。どちらにしても事実は変わらない。神楽は自分とセックスするよりも先に、教師である銀八とセックスしていたのだ。それが分かった途端、悲しみや怒りよりも先に笑いが込み上げて来た。もう何も悩まなくて済むということに何故か楽しくなったのだ。沖田は神楽を再び押し倒すと、薄笑いを浮かべて言った。

「なら、もう遠慮は要らねーな。今日からテメーは俺のメス豚だ」


 それから夜になるまで沖田は神楽にお仕置きと称して、変わったことをたくさんしてやった。それなのに神楽はただ涙を浮かべ『ごめんアル』と謝るだけである。もう先ほどのようには啼いてはくれないのだ。

「もっと啼けよ! エロい声、出るだろ」

「……ごめん、アル」

 神楽の赤く腫れる尻を見ながら、沖田は満足そうに笑ってみた。それなのに少しも嬉しくはなく、ただ愛しかった日々が走馬灯のように思い出されるだけであった。