12,神楽side
信じられなかった。あれほど体だけの関係になりたくないと言っていたにも拘らず…………沖田のモノを自ら口に含んだのだ。それも『膣穴を弄ってもらう』という交換条件の為だけに。沖田を悦ばしたいなど嘘だ。建前である。神楽はそれを知り、愕然としたのだった。なんて淫乱な女になってしまったのだろうと。結局は体の快楽の為だけに沖田に跪き、奉仕なんてことをしたのだ。どうして嫌だと断れなかったのだろう。それを考えるも自分のぐっしょりと濡れている下着に答えはもう解っていた。
少し眠って落ち着きたい……
水道で口と顔を洗った神楽は濡れたままフラフラと廊下を歩き、保健室に向かっていた。すると突然誰かに腕を掴まれたのだ。まるで自分のものだとでも言うような強い力。廊下の角に引っ張り込まれた神楽は力のない目で背後を見ると…………そこには少々焦ったような顔をしている銀八が立っているのだった。
「授業は? 何してんだよ!」
さすがに自分のクラスの生徒がフラフラとしているのを見過ごすほどでもないらしく、銀八にしては珍しく仕事をしているなどと神楽は思った。
「銀ちゃんには関係ないアル。じゃあナ」
だが、銀八は神楽の腕から手を離さなかった。
「で、どこ行くんだって聞いてんだよ?」
「保健室アル」
その言葉にようやく手を離した銀八は神楽の額に手を置いた。
「熱は……まぁないな。具合悪いのか?」
神楽は軽く首を傾げると、口ごもりながら答えた。
「う、うん……なんか、ちょっと眠りたい……アル」
先ほどまで沖田と淫らな行為をしていた事がバレる気がして、どうも落ち着かなかった。だが、さすがにそんな事までは銀八も分からないらしく、適当に返事をすると額に当てていた手をポケットにしまった。
「じゃあ、先生はこれから煙草吸いに行くから、何かあったら《あの部屋》な」
それだけ言うと銀八は階段を上って行ったのだ。
一人廊下に残った神楽は遠くを見つめながら考え事をしていた。そして思いつめたような表情になると、保健室へ向かおうとしていた足を銀八が居る国語科準備室へと進めるのだった。
煙草のニオイと銀八のなんてことない顔。それが妙に鼻につく。初めから神楽が来ると分かっていたように見えたのだ。
「体調悪いのに寝てなくて良いの?」
「悪くないアル」
「じゃあ、なに? サボり? 悪い生徒だねェ。担任誰だよ」
そうやってとぼける銀八に少し救われた神楽は、銀八が座っているソファーの隣に腰掛けた。そして膝を抱えると唇を尖らせ、今にも泣き出しそうな声で言った。
「なんか、全然上手くいかんアル……友達だった時の方がもっと楽しかったネ」
こんなふうに悩むくらいなら昔に戻りたい。随分と後ろ向きな発言であった。それには銀八も険しい表情になった。
「はあ? いやいやダメだろ? そういうこと言っちゃう?」
そう言って煙草の煙を吐き出す銀八に、神楽は意外性を感じていた。銀八なら同意してくれるような気がしていたからだ。
「セックスが出来ないからンなこと言うの? つうか、何があった?」
神楽は抱えている膝と膝の間に顔を突っ込むと小さな声で言った。
「だって、あいつと会うのも、あいつに何かしてあげるのも、全部私の為アル。愛情とかそういうのが、分からなくなったネ」
「……それで自己嫌悪に陥って、ナイーブな感じなわけ?」
銀八は吸っていた煙草を灰皿で消すと『面倒くせえ』と喚いて、そして神楽の頭に手を置いた。
「いいんじゃねーの? みんなそんなモンだろ。お前らだけじゃないから」
その言葉に気持ちが楽になった。これが普通の気持ちであれば、悩む必要もないのだから。神楽は顔を上げ銀八を涙目で見つめると、意地悪く言った。
「みんなって、誰と誰と誰アルカ?」
「そういう事言い出したらキリねーだろ! だいたいどこの世界の人でもって意味だよバカヤロー」
面倒臭そうにこちらを見てはいるが、銀八の言葉は決して冷たいものではなかった。神楽はそれが嬉しくなってようやく少し笑えたのだ。
「ちょっと元気出たネ」
「あ、そう?」
すると銀八の手が神楽の肩へと回された。その調子の変わり方に神楽の心臓は追いつけず、大きく跳ね上がる。今は体に触られると困るのだ。沖田に最後まで触れてもらえなかったせいで興奮が冷めていない。神楽は銀八の腕を払いのけるとソファーから立ち上がった。
「も、もう大丈夫になったから教室戻るアル」
「待てって、神楽」
しかし、銀八に手首を掴まれた神楽は足を止めると再びソファーへと…………銀八の股の間へと腰を下ろした。引っ張られたから仕方なくである。だが、震える胸が何かを期待していることは分かっている。神楽は熱くなり始める顔を伏せると瞬きを繰り返した。
「お前も沖田くんもまだ若いから、自分が気持ち好くなるのに夢中だろうけど…………」
銀八の手が神楽の太ももに伸びてくる。そして、感触を確かめるように撫でると神楽の耳に唇を引っ付けた。
「俺なら見返りなんて要らないけど?」
背後から耳に掛かる熱い息。それが神楽の背筋を震え上がらせる。どうして銀八の息が熱いのだとか、今言った言葉の意味だとか、そんなことを冷静には考えられなくなってしまった。銀八の手が足の付根をゆっくりとなぞるのだ。
「んんっ……」
思わず体を捩る。大事な所にわざと触れないようなその触り方に、神楽のカラダはもどかしいと涙を溢す。しかし、銀八の指は下着の縁を行ったり来たりしているだけで、その中へ挿し込まれることはない。神楽は銀八のズボンの生地を握ると乱れた呼吸で鼻を鳴らした。
「ぎん、ちゃんっ」
「なんだよ、情けない声出して」
神楽はもう限界であった。こんなふうに焦らされては苦しくて堪らない。無意識に神楽は腰を動かすと、銀八の指へ濡れている下着の中心部を擦りつけるのだった。布越しに銀八の指が押し込まれる。
「おいおい、我慢出来ねーの? こんなに濡らして……つうか良いの? 神楽ちゃん。お前のカレシ教室で頑張って勉強してんだろ?」
最早そんな言葉に罪悪感を抱くほどの冷静さはない。神楽はフゥフゥと息をしながら銀八に媚びるような顔を作った。
「ぎんちゃん……」
「何? どうしたよ? ンな可愛い顔したって何もしねーし。まだ授業中だろ?」
その言葉通り銀八の指は動かない。神楽は背後の銀八の顔を甘い顔で見上げた。それがどういったふうに映るかなどもう考えられない。ただ切なくて苦しいのだ。
「ぎんちゃん、指で触って……お願いネ……」
すると銀八の顔が神楽に近づき、桜色の唇は煙草のニオイに染まるのだった。
互いの舌が舌を舐める。ずっとこうしたかったと言ったように求め合うように交わされる口付け。だが、その中にも遠慮が存在し、時折銀八の寂しそうな目が神楽を見るのだった。
その後の神楽は、銀八の手で自在に操られるマリオネットのようであった。割れ目の奥に指を数本咥えさせられ、それが動けば腰を震わせて啼き声を上げる。銀八の指が止まればそれも止む。神楽の体は銀八のものと言っても過言ではないほどである。どこをどうすれば神楽が善がるのか、掻き乱すの指はそれを熟知しているのだ。
「ま、た……イッちゃう……」
「声出すなって……」
銀八の唇に口を塞がれてしまった神楽は、体を仰け反らせながら何度目かの絶頂を迎えた。
自分を壊すのは銀八だけである。沖田では…………こんなにも、はしたなくイキ狂ったりしないのだ。
ずぶ濡れになった太い無骨な指が引き抜かれると、神楽は遠くを見つめたまま浅い呼吸を繰り返した。
「もうチャイム鳴るから終わりな。それにしてもお前感度良すぎだろ。先生ェ勘違いしちゃうけど良いの?」
銀八は俺のテクニックってそんなに凄いのか、などと一人ブツブツ言っていたが神楽はそれどころではなかった。
懇願してしまったアル…………
恋人以外の男とキスを交わし、体を弄られ、悦びの声を上げたのだ。
神楽は身なりを整えるとドアの前に立った。だが、このまますぐ教室へ戻るわけにはいかない。まだ顔が熱いのだ。
「あ、それで週末どうすんの?」
銀八の声が背中に投げられた。
週末――――――沖田と約束をしていたのだが、神楽はつい一時間ほど前に断っていた。そんな答えを出してしまったと言うこと…………もう自分のカラダに抗うことが出来ないことを悟った。今もまだ銀八に触れて欲しいと思っている。沖田の顔が先程から一ミリも頭に浮かんでこないのだ。
神楽はドアに手を掛けると銀八を振り返り見た。
「行くアル……昼過ぎには着けると思うネ」
胸に渦巻く思い。それは心だけはどうにか沖田のものでありたいと言う願いだ。それが傍若無人で我が儘であることは分かっている。だが、それでも沖田を好きだと、離れたくないと思う心だけは守りたかった。
神楽は部屋を出ると少し遠回りして教室へ戻るのだった。
◇
その日、神楽はセーラー服で家を出た。父親には補習と嘘をつき、沖田には家の用事と嘘をついた。制服を身にまとっていると言うことは、色んな嘘に対応出来ると言うことなのだ。
罪悪感――――――それはもちろんある。だが、別に性交渉をする為に銀八の家に行くわけではないのだ。少しだけイケナイ事をすることにはなるだろうが、それでも浮気ほどではないと、どこか軽い気持ちであった。実際、沖田が嫌がればそれは浮気なのだろうが、この秘密を沖田が知ることはないと神楽は考えていた。特に束縛も独占欲もない男だ。それに銀八から教えてもらう事は沖田を大いに悦ばせてきた。そんなことが免罪符になると、神楽は本気で思っていたのだ。
築年数の結構経っているアパートに着くと、神楽は一室の前でインターホンを押した。すると素早くドアが開き、誘拐されるように口を手で塞がれ部屋に押し込められた。
「な、なにアルカ?」
「いやいやいや! お前こそなんで制服着てんだよ! 通報されんだろ!」
嘘をつくことに気が取られ、一番重要なことを忘れていたのだ。銀八が銀魂高校の教師であるということを。
靴を脱いで室内に上がった神楽は、思いのほか整頓されている室内に驚いていた。自分の兄貴の部屋とは大違いだと思ったのだ。神楽は居間のソファーに腰掛けるとスカートのシワを伸ばしながら呟いた。
「でも、先生……セーラー服好きダロ?」
すると居間の入り口でぼさっと立っていた銀八の顔に笑みが浮かんだ。
「あれ? そんな事言った俺? まあ……嫌いじゃねーけど」
そう言った銀八はテレビの前にしゃがみ込むと一枚のDVDを取り出した。観せると約束していたアダルトビデオなのだろう。神楽は慣れない部屋と私服の銀八に緊張すると、辺りをキョロキョロと見回した。
「このアパートな、古いから全然住人いねーんだよ……」
「でも、小奇麗に使ってるネ」
ギシッとソファーが鳴って、銀八が隣に座った。こちらを見つめる瞳が今までに見たものの中で最高に熱いものであった。
なんでこんな目してるネ?
神楽は慌てて顔をテレビに向けると、初めて観るポルノ映像に鼓動を速めるのだった。
先ほどからテレビ画面に映し出されている男女は、いつも銀八と神楽が行っているような行為をしていた。女が男に体を弄られ、艶っぽい声を上げている。
「私も……あんな声出してるアルカ?」
神楽が赤い顔でそう呟けば、隣の銀八が答えた。
「いや、お前の方がもっとヤバいから」
あまりにも普通にそんな事を言ったものだから、神楽は思わず恥ずかしくなり銀八を殴った。
「嘘アル!」
だが、銀八は神楽の手首を掴むと真面目な顔をしたのだ。
「なら、証明してやろうか?」
「う、えッ……ぎんちゃん?」
神楽は手を下ろすと、銀八と見つめ合った。視線が繋がって、心地の良いリズムが走りだす。だが、気のせいであると神楽はすぐに目を逸らすと呼吸を整えた。こんなことはあってはならないのだ。心だけは沖田に向いていると、そう決まっているのだから。
「神楽、こっち来い」
しかし、銀八の言葉に抗うことは不可能であった。いくら心が沖田を向いていても、実行部隊のカラダは目の前の銀八を欲するのだ。言われるがまま神楽は銀八の膝の上に乗ると向かい合った。
「神楽ちゃん、ちょっと舌出してみ」
唇の僅かな隙間から舌を差し出す。するとそれに銀八のものが触れた。そうしている内に桜色の唇は吸われ、舌先が痺れだす。
「んッ……ふぅんッ……」
神楽の小さく甘い声が漏れ始めると、互いの体を押し付けるように背中に腕が回った。それが気持ち好くて、神楽はキスだけで体を濡らしたのだ。沖田とのキスではこうはならない。しかし、神楽は伏せたまつげを震わせながら、触れている唇が沖田のものであると思い込もうとした。そうすれば少しは罪悪感も薄れるような気がしたのだ。だが、煙草のニオイや触れる体温、まとう雰囲気。全てが沖田のものとは違って――――――神楽はそこで気づいてしまった。もう沖田の温もりを思い出すことが出来ない事実に。
好きだと囁いて、愛しい気持ちのまま抱きしめ合ったのはもうずっと昔のことに感じた。完全に忘れ去ってしまう前に、手の届かない所へと温もりが消える前に、神楽は再び確かめなければと焦った。
銀ちゃん家の帰りに……総悟のところに寄って……それで…………
そんなことを頭でぼんやりと考えてはいるのだが、唇をなぞる銀八の舌に意識が遠退く。完全に持って行かれてしまう前に神楽はどうにか顔を離すと、銀八の胸を軽く押した。
「なんで、好きでもないのに……キスするネ? おかしいダロ」
その言葉に何も答えない銀八は神楽の背中に面するテレビに目をやると、濡れている唇で言った。
「ローション使ったことねーだろ? 制服汚れんの嫌なら、脱いじまえよ」
神楽は振り返りテレビ画面を見ると、体をテカらせ善がっている女の姿が目に入った。恍惚の表情をしており、どこか下品だとそれを蔑む心が芽生えたが……だが、あんなふうに壊して欲しいと思ったのだ。
神楽は膝から下り立ち上がると、セーラー服のリボンを解いた。そして一つ残らず脱ぎ捨てるのだった。無垢というベールと共に。
白い肌を引き立てるような真っ赤な下着。いつの頃からか、子ども染みたと揶揄される下着を身につけなくなっていた。それを沖田は知らない。今日初めて披露するのだ。恋人でもない男に。
この姿に銀八が目を細めた。
「それ、どしたの?」
「別に……ただ買ったから着てみただけネ」
本当は道行く大人よりもアダルトな遊びに夢中である自分を誇らしく思い買ったのだ。これくらいは似合う大人だと、そんなふうに勘違いをしていた。まだあどけない表情と線の細い体。それが下着に不釣合いである事には気づいていない。それでもセックスを知らない癖に、醸し出す色気だけは一人前であった。
「脱いだけど、どうするアルカ?」
腕で体を隠す神楽は、服を脱ぎパンツ一枚になった銀八を不思議そうに見ていた。いや、ハッキリと不思議だと思っているのだ。
今から何が始まるのか。神楽がセーラー服を中途半端に剥かれる事はあっても、銀八が服を脱ぐことなど一度もなかった。途端に不安になった神楽は手汗を握った。
「へんな事、するアルカ?」
「へんってなんだよ? 今までも変な事いっぱいしてきただろ?」
そう答えた銀八は神楽の体を抱え上げた。そして、居間から繋がる襖の向こうへ神楽は運ばれると…………布団の上へと仰向けに寝かされたのだ。
「な、なにするアルカッ!」
「ぬるぬるしたヤツな」
寝かされた神楽は銀八の手に《ローション》と呼ばれるものが握られていることに気付いた。
「下着も汚れるから」
そう言って神楽はあっという間に素裸にされてしまうと、まだ日が高いうちに真っ白な肌を惜しげも無く晒すのだった。それを見つめる銀八の目は満足げに細くなり、そしてドロォっとした粘液性の高い液体が胸にこぼされた。すぐにそれを塗り広げるように銀八の指が体を這い――――――
「きゃッ!」
神楽はあまりの衝撃に小さく悲鳴を上げた。
「お前、ほんと感度いいよな……」
いつもの倍以上は感覚が伝わってくるのだ。そのせいで銀八の人差し指に擦られた乳首がもう勃ち上がっていた。それを嬉しそうに弾く銀八は神楽の反応を見て楽しんでいるようであった。
「あふッ……ダメぇ……それ、なんか……どうしようネ……」
身を捩り、悶える神楽。白い肉体は光輝き、まるでシルクのような肌をしていた。だが、興奮しているせいか所々が赤く紅を散らしたように染まっている。神楽の手がシーツを苦しそうに掴んだ。内股は擦り合わされ、歯を食いしばる口からは泡が溢れる。
「んッ、い、イク……やめて……ぎん、ちゃん……」
乳首を激しく擦られ、神楽は悶絶していた。小ぶりな乳房ではあるが感度は最高で、いつの間にか開発されたカラダは乳首だけで意識を飛ばせるようになっていたのだ。
「あッ……ハァ……ハァ……ああッ!」
神楽は体を震わせると軽く仰け反った。だが、休んでいる間もなく銀八の指が……今度は神楽の下腹部をまさぐった。
「神楽ちゃん、ヌルヌルしてるけど……ローションだけじゃねェよな? そんなに気持ちよかった?」
「わ、わからんアル……いやッ……待ってヨ…………」
神楽はまたしても大きな波に飲み込まれた。先ほどの比ではない程の快感が脳に、腰に、全身に突き刺さるのだ。神楽は顔を両手で覆ってしまうと、膝を立てて銀八が触りやすいようにと股を開いた。体が勝手に動くのだ。気持ち好い事をもっとしてもらおうと望んで……
銀八の指が生き物のようにうごめき、そして神楽の中へと飲まれていった。いつもよりも簡単にヌルっと入る。そして、滑りのいい指が…………
「神楽、動かしても良いか? 多分、いつもより激しくなると思うけど」
神楽はまだ両手で顔を覆ったままである。だが、腰が動いてしまい言葉よりも分かりやすい返事をした。
「こんなピンク色してる癖に……ほんとエロいよな…………」
「言う、ナヨ」
震える声でそう言ってはいるが、ふしだらな腰使いは純情さとは大きくかけ離れていた。
早く……して欲しいネ…………
浅い呼吸で神楽はそんなことを望むと、銀八の指は宣言通りに激しく出入りするのだった。
「今日は……声我慢しなくて良いから……出せよ」
そんな銀八の声が近くで聞こえた。神楽は自分の足を抱えると涙でぐしょ濡れの顔のまま感情のままに哭いたのだった。
「もっとぉ……そこ、擦ってぇ!」
神楽は目を閉じると、もうすぐにでも絶頂に達してしまうことが分かった。このまま激しく逝かせて欲しい。そう思っていやらしい声を部屋中に響かせていたのだが、またしても銀八の手が止まった。
「ぎん、ちゃん」
また自然と媚びる表情を作る。しかし、銀八の指は引き抜かれてしまった。
意地悪アル…………
大きな目に涙をいっぱい溜めた神楽は、下唇を軽く噛み銀八を見上げた。すると銀八は眼鏡を取り、神楽に覆い被さると言うのだった。
「じゃあ、神楽ちゃん言ってくれねェ? 先生が好きだって。沖田くんよりも先生の方が良いって……言ってくれたら続きしてやるよ」
神楽は目を閉じると深呼吸した。それだけは言えないのだ。カラダがどんなに銀八を望んでも、心だけは沖田を見つめていたいのだ。これだけは譲れない。しかし、急に割れ目に感じた熱に目蓋を開けると、自分の下腹部を見た。
見れば銀八の固く反り立った男根が神楽のクリトリスの上を滑っているのだ。その刺激と熱に神楽は顔をとろけさせると、上がる息でどうにか答えた。
「そ、それ、やめ、やめてヨ……」
「なんで……気持ち良いんだろ?」
銀八はそう言って擦りつける動きを止めると、神楽へキスをした。
「で、言ってくれねーの?」
割れ目に押し当てられる熱の塊。神楽の膣穴が僅かに口を開けると、何かを飲み込もうとうごめき出す。
「だ、だって……んッ……ううッ……」
神楽は自分のカラダが何を欲しているのか気づいてしまった。押し付けられている銀八の肉棒だ。それを根元までずっぷりと突っ込まれたいのだ。だが、それだけは絶対に許されない。それに銀八も言っていた。セックスは卒業してからだと……
「神楽……」
いつになく甘く切ない銀八の声が聞こえ、神楽の腰が誘われるようにピクリと動く。
「だ、ダメ、ダメアル……い、や……あッ……」
もう声にならない。今スグにでもひと思いに貫いて欲しいのだ。しかし、それだけは絶対に叶えてはならない。神楽はその意志をなくさないように強くシーツを掴むと、震える熱い唇を動かすのだった。
「いッ……言えない……アル……」
すると銀八の顔が軽く歪んで、神楽の下腹部に太く熱い塊がめり込んだ。それが下の口をこじ開ける銀八の男性器であることに気が付くと、神楽は弱々しい手で銀八の胸を押し返した。入れられるわけにはいかないのだ。
「ま、待ってヨ……セックスは大人になってからって……先生が言ったアル……」
だが、神楽の腕は銀八に掴まれてしまうと、ニヤリと笑った顔がこちらを見下ろした。
「あれ? 俺言った? ンなの待ってたらお前みたいなのは、どっかの男にハメられちまうだろ?」
『こんなふうに』
その言葉が聞こえたと同時にズブリと根元まで挿し込まれる男根。その太さと固さ、そして熱量に神楽は大きく仰け反ると舌を痺れさせた。
「あひッ……い、イグッ……ううッ…………!」
ビクビクと体を震わせ、神楽は初めて受け入れる男の体に簡単に達してしまった。
肉体が言うのだ。これをずっとずっとずっと待ち望んでいたのだと。
「好きでもない男のモノ咥え込んでイッてたら……まあ意味ねーけど?」
神楽はまだ意識をこちらに戻しきれていなかったが、銀八は容赦なく神楽を突き上げた。
「んああッ!」
その度に神楽の小ぶりな乳房が揺れ、啼き声が上がる。染まる頬、震える心臓。神楽は銀八によって快楽を与えられると、隠し切れない本能をあます事なくさらけ出した。
「ぎッ、ちゃん……もっとぉ……そこ、してヨ……」
「なら、言ってくれよ……なあ、神楽…………」
神楽は体を揺らしながら覆いかぶさる銀八の背中に手を回すと、膣をめくり上げていく肉棒の感覚に酔いしれた。
「ああ……うう……好きッ……好きアル……銀ちゃん好きアル……」
言葉を出せば出すほどに興奮していく。心拍数は上昇し、血液が全身を駆け巡る。
「銀ちゃんの、好き……総悟よりも……ずっと気持ちいいアル……」
「あーあ、言っちゃった。沖田くん聞いたら……なんて言うだろうな」
意地悪な顔が神楽を見下ろし、銀八の額から雫がポタリと落ちてきた。それが神楽の肌を滑ってシーツに吸い込まれる。その感触すら心地がよく、神楽は銀八をもっと熱くさせてやりたいと思ってしまった。
腰を浮かせて体を密着させると、艶かしい声とカオで言った。
「壊してヨ……優しくしなくて……良いアル…………」
すると銀八の顔に赤みが増し、そしてフッと笑った。
「そう? 良いの? じゃあ、遠慮なく…………」
銀八の張り裂けそうなほどに張った肉棒が、神楽の膣穴を素早く突く。その度に卑猥な音がパンパンと響いている。激しく揺れる神楽の乳房。本当に壊れてしまいそうな華奢な体ではあるが、銀八は躊躇うことなく腰を打ち付けていた。
神楽の呼吸が乱れ、髪も乱れ、それに絡むように銀八の吐息が混ざっている。
「ハァ……ハァ……神楽……」
神楽の唇に銀八の唇が触れ、そして唾液が交換される。上も下も神楽の体は銀八によって濡らされ、そして痺れていた。麻痺し始める感覚。脳は既に考えることをやめ、ただ身に受ける快感に涎を垂らすだけの傀儡と化した。
繰り返し出入りする熱の塊。それが神楽を善がらせてどれくらいの時間が経っただろうか。神楽は声にならない声を上げながら、ただ銀八の顔を定まらない目線で見つめていた。
「神楽、もう……良いか……」
その言葉の意味を神楽はよく理解が出来なかった。だが、銀八が腰を止め、自分の中から出ていこうとするもんだから、足を絡めてそれを阻止した。
「抜いちゃ、いやアル」
「じゃあ……どーすんの……?」
神楽は銀八に全身でしがみつきながら耳元で囁いた。
「ぎんちゃん、好き」
だから、銀八に何をされても構わない……その言葉にはそんな意味が含まれていた。銀八の腰がまた動き始める。
「あいつ以外の……沖田くん以外の……精子受け入れていいの?」
すると途端に沖田の顔が浮かび上がり、神楽の視界は一気に開けていった。古ぼけた天井、そこで揺れている白い足と銀八の顔。そして、割れ目に突き刺さる肉棒が目に入ると顔を引きつらせた。
「やっぱり、待って……!?」
しかし、銀八は歯を食いしばり神楽の奥深くに放出すると、神楽の子宮に恋人以外の男の精子が注がれた。
「あー……残念」
神楽はハァハァと苦しそうに呼吸をしながら涙を流した。それと同時に体の中から肉棒が引き抜かれると、白濁液がドロォっと流れだした。
「俺なら、セキニン取れるから」
そんな言葉が降って来て、まだ火照りの冷めない体を抱き締められた。だが、神楽の心には犯した罪に対する悲しみしかなかった。
もう……元には戻れないアル…………
このあと沖田の家に行こうと思っていた予定を変更した。銀八の精液で塗れたカラダでは、会いに行くことなど許されないのだ。沖田との関係はこれで終わらせなければならない。神楽は濡れる頬を銀八の唇で拭われると、静かに目蓋を閉じるのだった。
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