桃色傀儡

 

10,神楽side

 

 沖田が自分の体で気持ち良さそうにしている所を見ることが神楽の悦びであった。いつもは生意気な顔も、この時ばかりは簡単にひれ伏すのだ。沖田自身はそれを分かっていないようであったが、神楽はその瞬間が堪らなく好きであった。だが、それが出来るのも銀八に教え込まれたせいである。人気のない夕方の校舎で握らされた男性器。それがなかったら沖田のモノを握ろうなどと考えなかった。今ではすっかり沖田も神楽の手のひらの感触を気に入り、そして――――――


 ◇

 

 薄暗い国語科準備室。少し日の入りも早くなり、電気の消えているこの部屋は闇の支配を大いに受けていた。

「神楽……顔、こっち向けて……」

 ソファーに下半身を剥き出しで座る銀八。その股ぐらに跪くように座っている神楽は、小さな口に男性器を涙目で押し込めていた。

 苦しい…………

 だが、銀八に言われたのだ。こうすれば沖田がもっと悦ぶと。

 この日、神楽は放課後、銀八の元を訪れて言ったのだった。

「あいつをもっと気持ち好くさせてやりたネ。他に何かないアルカ?」

 それはきっと本心であった。絶対に本心であった。沖田の為を思って銀八を訪ねたのだ。

 職員室前でそんな言葉を口にした神楽に、銀八は特に考えるでもなく一つ返事で了承した。

「健気だねェ…………じゃあ、もっとスゲーこと教えてやるよ」

 その結果がコレである。口を女性器の代わりに使うフェラチオだ。口腔内を銀八の肉棒が擦り上げる度に嗚咽が交じる。苦しい。それでも沖田の悦びだけを想像して神楽は必死に頭を動かしていた。沖田の悦ぶ姿を思い浮かべながら。

「神楽……出すから、ちゃんと飲めよ…………」

 何のことかも分からない内に神楽の口の中には熱い白濁液が注ぎ込まれ、鼻につくニオイが漂った。だが、それを理解出来ないまま飲み込むと、神楽はゲェと咳き込むのだった。

「こんなもん、ほんっとに……グェ……飲むアルカ!?」

 銀八はいちご牛乳の紙パックを神楽に差し出すと、股ぐらで気分悪そうにしている神楽の頭を撫でた。

「お前、AV観たことねえだろ? みんな当たり前にやってるから。それに沖田くんもドSだろ? 悦ぶと思うけど?」

 神楽はいちご牛乳で喉を洗い流すと、手の甲で口を拭った。

 二度とこんなことはしたくないと思っていて、だが沖田が悦ぶのであれば…………少しならしても良いと考えていたのだ。

「つうか、そもそもお前は知識なさ過ぎんだよ。よくそれで学年一モテる男と付き合ってるね。他の子に取られたらどうすんの?」

 そうならない為にもこうして《勉強》しているのだ。色仕掛けで落とされるなんてあってはならない。セックスをしない分、他のことで沖田の欲を満たしてあげたいと神楽は思っていたのだ。それがきっと銀八の言う『健気』という言葉に繋がるのだろう……

「でも、だいぶ知識も身についたデショ?」

 大きな手が神楽の髪を撫で付けていて、神楽は暗闇にぼんやりと浮かび上がる銀八の顔を見上げていた。

「……沖田くんも驚いてんじゃねーの? こんな日に日に彼女がエロくなるんだから」

 そんな事を改めて言われると恥ずかしさがこみ上げる。自分ではエロくなったなどと思ってはいないのだが…………

「今も先生のしゃぶって、お前興奮したんじゃねえの? こっち来てみろよ」

 神楽の体は既に期待していて、恥ずかしいほどに割れ目のナカから愛液が溢れだしていた。触らなくともそれが分かる程だ。

「そこ、足広げて座れ」

 神楽は銀八と場所を交代するとソファーに深く腰掛け、そしてM字に足を大きく開いた。暗闇が殆どとはいえ、スカートから覗く白いショーツははっきりと見えている。

「そう言えば、神楽。沖田くんに言ってる? どうして欲しいだとか、そういうこと。我慢してんだろ?」

「どういう意味アルカ?」

 すると銀八は神楽のセーラー服を突然めくり上げると、ブラジャーのホックを外してしまった。

「な、なにすんダヨ!」

「えっ、いや、お前のおっぱい見たことないなと思って」

「そっちは見て良いって言ってないダロ!」

 神楽は恥ずかしいと手で隠したが、それを簡単に退けられてしまうとツンと上を向いた乳房が顔を出した。

「こんだけ暗いと言うほど見えてねーから……」

 そう言って銀八はM字に開いている神楽からパンツまで脱がせるのだった。

「あれ? こっちは嫌がらねえの?」

「う、うっさいアル…………」

 学校と言う場所で乳房と性器を晒していると言うのに神楽の興奮は増す一方であった。今も乳首は固く、割れ目から流れる愛液のせいで尻の下のソファーまで濡れていた。

「こんな格好したこと無えだろ?」

 神楽は銀八に横顔を見せると何も答えなかった。もちろんしたことなどない。だが、そのせいなのか自分が開放されていくように感じるのだ。それが気持ち好く、触られてもいないと言うのにカラダに快感を覚えた。

「沖田くんにちゃんと言った方が良いと思うけど? どこをどう触って欲しいとか。大事だろ、そういうことって。ここで練習しとけよ、な?」

 どうして欲しいだとか、そんな事はさすがに恥ずかしくて口には出せなかった。触って欲しいと言うことすら言えないでいるのだ。それなのに自分の願望など伝えることなど到底無理で……

 だが、頭の中ではいやらしい言葉が渦巻いていたのだ。

「触って……欲しいネ」

「どこを?」

 神楽はイヤイヤと首を左右に振った。顔が熱くなる。こんな格好をしていると言うのに、口に出す言葉のほうが恥ずかしいのだ。

「言わねーと伝わんないだろ? まぁ、俺はお前がどこをどんなふうにシて欲しいのか、分かってるけどな」

 神楽の呼吸が浅いものへ変わっていく。緊張と興奮に挟まれ苦しいのだ。一度言ってしまえばラクになれるのだろうが…………

「おっぱい……触られたい……アル……」

 消え入りそうな小さな声だ。だが、神楽は口にした。自分の願望を。それでも銀八は納得していないらしく、その指導は厳しいものであった。

「で、どんなふうに触られたいの? ちゃんとそこまで言ってみろって」

 神楽は鼻の奥がツンと痛んだ。何故か涙が溢れてくるのだ。こんな破廉恥な格好をして、なんて言葉を口にしているのか……考えるだけで情けない。だが、それを悦ぶカラダが確実に存在していた。

「りょ、両方の……ちくび……ギュってして、欲しい……アル……」

 すると銀八の両手が伸びてきて、神楽の固くなっている乳首を強めに摘んだ。

「なんで泣いてんだよ? また興奮するだろ。でもお前さ……本当はそれだけじゃねーんだろ?」

 神楽は鼻をすすると、下唇を噛み締め頷いた。本当は乳首を摘まれながら、膣穴を下品にほじって欲しいのだ。しかし、そんな事は絶対に口には出せない。

「でも、もう言えねーみたいだし……今日はこれで勘弁してやるよ」

 そう言った銀八は神楽の両乳首を引っ張ったまま、神楽の割れ目に舌を挿し入れた。そして、次の瞬間には激しく舐め回すのだった。

「あッ……ひゃッ……ンんッ!」

 神楽は痙攣を起こしながら声を上げると、腰をグラインドさせてしまった。勝手に動くのだ。

「いっ……イグッ……ぎんちゃッ……いやッ……ダメェ!」

 そう言った神楽は数秒で果ててしまうと、顔を上げた銀八が言った。

「すぐイケるようになったのは良いけど……なぁ、神楽。そんなデケー声出すなら、そろそろ場所変えた方が良いと思うんだけど」

 まだ定まらないフワフワとした意識の中でもその言葉は聞き逃さなかった。声を抑える事はもう出来そうもないのだ。このままここで《勉強》を続けていれば、誰かにバレる危険性も高まる。神楽は銀八の言葉に静かに頷いた。

「じゃあ、今週末……家に来いよ。AV観せてやるから。まだ観たことねーんだろ?」

 神楽はソファーに倒れこむと、今週末沖田と会う約束をした事を思い出した。それをどうしようかと考えながらしばらく体を休めるのだった。