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2010.11.03/万事屋+真選組 (※赤ずきんパロディー)

 

むかーし、むかしと言うほど昔でもない昔。

あるところに、赤チャイナちゃんとメガネが仲良く暮らして居ました。

 

「メガネって何だよォオ!」

「まぁ、事実は小説よりメガネアル。我慢するネ」

 

今日、赤チャイナちゃん――神楽は、山奥で一人修行に励むワケでもなく、ただ風邪で寝込んでいる銀ちゃんの山小屋までお見舞いに行こうとしていました。

 

「神楽ちゃん、途中の峠には恐ろしい狼が出るから気をつけてね。絶対に狼の言うことに耳を傾けたらダメだからね!うっかり話しなんてしちゃったら……」

「しちゃったら?」

「食べられちゃうからねッッ!」

「なわけないネ。その前に私がとって食ってやるネ!アハハハ!」

「……ははっ」

 

メガネこと新八は神楽が出ていく前に、もう一度念を押すように言った。

 

「神楽ちゃん、銀さんに宜しくね。あと、さっき言ったけど絶対に狼と話しちゃダメだからね。見かけたら逃げるんだよ」

「うん、狼はぶっ飛ばすネ!!じゃあ行ってくるアル」

 

新八は手を振って見送りながらも“本当にわかってんのかな”と不安そうな顔で神楽の背中を眺めていた。

神楽はそんなこともお構い無く、久しぶりに銀時に会えることから鼻歌を歌いながらスキップをしていた。

 

「銀ちゃんに持ってくいちご牛乳飲んじゃダメかな?やっぱりダメかな?」

 

お見舞いに持って行く銀時の大好きないちご牛乳を眺めながら、神楽はどうしようか考えていた。

 

「お嬢さん、そんなものよりもっと美味いもの食いたくねェか?」

 

突然聞こえてきた声に神楽は顔をあげた。

見れば煙草を吸いながら樹にもたれてる人間がいた。

いや、大きな耳にバタバタうるさい尾っぽ。

その姿はどう見ても――

 

「オマエ……どっかの幕府の犬アルな!」

「ち、ちげェよ!俺は……オオカ……まぁ、お前がそう思ってんならそっちの方が都合がいい。で、お嬢さんどこまでお出掛けだ?」

「なんでお前に言わなきゃならないアルか。銀ちゃんの山小屋にお見舞いに行くなんて絶対に教えないアル!」

「…………ある意味すげェなお前」

 

道端で出会った幕府の犬――土方は、神楽をまじまじ見ると喉を鳴らした。

これなら今日の狩りは上手く行きそうだと。

 

「そんなに時間はとらせねェ。こっちの道に腕のいいシェフのいるレストランがあるんだが、ちょっと寄って行かねェか?」

「本当アルか!!でも銀ちゃん……うん、いいっか。行くアル!」

 

まんまと狼である土方の口車に乗った神楽は楽しそうに土方について行った。

自分がどんな風に見られてるかも露知らず――

 

「おい、犬!!まだ着かないアルか!」

「…………」

 

隣を歩いていた土方は静かに神楽の前に立ちはだかると、先ほどとは打って変わって鋭い目付きで神楽を見下ろした。

 

「なにアルか?」

 

ゆっくりと神楽に詰め寄ると吸っていた煙草を足元に投げ捨てた。

 

「残念だったな。テメェは大きな間違いを犯したみてェだ。俺を犬だと見誤ったことが命取りだったな!」

「もしかしてお前!」

「あぁ、そうだ……泣く子も黙る狼だッッ!」

 

土方が神楽に飛び掛かろうとした時だった、目の前に一瞬にして現れた男に神楽を拐われてしまった。

 

「テメー!人の獲物横取りするったァ……舐めた真似しやがって!」

 

土方が歯を剥き出して唸る方を見れば、長い尻尾と猫科らしい耳を生やした影が木の上に立っていた。

 

「犬は骨っこでも食ってろィ」

 

豹柄のマントを付けた男――沖田は神楽を抱えながら下で唸る土方に吐き捨てた。

 

「木も登れねぇなんて情けねぇや。チャイナを頂くのはこの俺でさァ」

「ちょっと待つネ!オマエみたいな猫に黙って食べられる程、私はマヌケじゃないネ!」

「どこに目ぇつけてんだ。豹でさァ!猫と一緒にすんじゃねぇ!テメェは黙って食われてろィ!」

 

木の上でギャーギャー喚く二人に土方は怒鳴った。

 

「とりあえずそこのチーター降りて来やがれ!」

「チーター!?マジで言ってんですかィ?とんだバカ野郎でィ」

「いいからオマエは離すヨロシ!」

 

痺れを切らした神楽は沖田を掴むと下の土方目掛けて投げ捨てた。

 

「いってー!!」

「テメェ……よくも!」

「とりあえず私はオマエらに構ってられないアル。銀ちゃんが待ってるから行くネ」

 

取っ組み合って喧嘩をする二匹(二人)を置いて神楽はさっさと歩いて行ってしまった。

 

「時間食ってしまったネ。早く急がなきゃ銀ちゃん弱って益々天パが酷くなるネ」

 

残された沖田と土方はせっかく見つけた獲物を逃がすまいと、喧嘩しながらも神楽の後を追って行った。

山道をどんどん進むと道が二手に別れていた。

久々の山小屋訪問と言うこともあり、道を忘れてしまった神楽はどちらに進むか迷っていた。

 

「どっちだったネ?右だったネ?左だったネ?」

 

首を捻って考えてるところに一頭のゴリラが現れた。

 

「うおっ!生のゴリラアル!」

「嘘!?どこどこどこ?」

「オマエアル」

「違うからねッッ!俺はただの木こりだから!」

「嘘アル。どうみてもゴリラダロ」

「ほら見て!ゴリラはこんな斧片手に林檎をお洒落にかじってたりしないからね!」

 

近くの木を切りに来ていた木こり――近藤は、神楽にゴリラと間違えられながらも必死に人間であることをウホウホと訴えていた。

 

「何でもいいネ。山小屋までの道教えるアル」

「時にチャイナ娘」

「なにアル」

「ここドコ?」

 

神楽は山で迷子になった木こりを静かに見つめ、暫く動けないでいた。

まさか、こんな山奥で迷子になった木こりを見つけるとは思ってもみなかったのです。

暫く近くの切り株に腰を掛けて二人は途方にくれました。

 

「どうかしたんですか?」

 

そんな時、なんと言うタイミングでしょう。

猟銃を持ち山から下りて来る男がそんな二人に声を掛けました。

見るからにパッとしない花のない雰囲気が、神楽にはとても地味に映りました。

でも木こりにはない“まだマトモな方かな”というイメージがあり尋ねるだけ尋ねてみようと思いました。

 

「オマエ、山小屋の行き方知ってるアルか?」

「あ、はい。知ってます」

「じゃあ教えるヨロシ。ついでにこのゴリラを預かってヨ」

「えっ……はぁ」

「はいって返事出来ないアルか?」

 

神楽は近くにあった木を引っこ抜くと真っ二つに割ってみせた。

 

「は、は、は、はいッッ!」

 

猟銃を片手に持った男――山崎、は威勢の良い返事をすると、仕方なく神楽と近藤を引き連れて山小屋まで案内をしました。

 

「やっと着いたネ!ジミーにゴリありがとネ」

「えぇ……まぁ」

「チャイナァ!俺はゴリ…ぐすん…ゴリラじゃ…」

 

神楽は二人に礼を言うと銀時がいる山小屋へと入って行きました。

 

「銀ちゃーん!生きてるネ!」

「あぁ、なんとかな」

 

神楽はベッドで寝てるものの、銀時の普段と変わらない様子にとりあえず胸をホッと撫で下ろした。

 

「そう言えば……」

 

神楽は思い出したかのように、ここに辿り着くまでにあった出来事について銀時に話し始めた。

 

「ってことがあったヨ。だから何か少し疲れたネ」

「神楽……おまっ、それ……とりあえず休んだ方がいいな」

 

銀時は布団をはぐると自分の隣を空け手招きをした。

 

「マジでか!ベッドで寝てもいいネ!キャホーイ!」

 

神楽は普段は押入れで寝てる為、本物のベッドで寝られることに喜んで銀時の隣に滑り込んだ。

 

「なぁ、神楽。犬とか猫とかゴリラは見たことあっても本物の狼みたことねぇだろ?」

「うん、ないアル」

「マジでかー。あぁ、神楽可哀想にな。マジで可哀想だわ」

「なんでネ?なんで可哀想アルか?」

「つーか、見てみたくねぇ?」

 

神楽は首をブンブン上下に振りながら見てみたいと訴えた。

 

「じゃあ特別にみせちゃおっかなー。銀さん実は……」

「見せてくれるアルか!ってか銀ちゃんさっきから目付きが変ヨ」

「マジか……つーか神楽、銀さんが変なの目付きだけか?よーく見てみ?」

 

神楽は銀時の顔をまじまじと見つめた。

どことなくいつもの銀時じゃないような……でもどこが違うのか正確にはわからなかった。

 

「神楽ァ、実はな銀さんが狼なんだよ」

「えっ?」

「つーことで、いっただきまー……」

 

その時、小屋の扉が蹴破られ犬のような狼から猫のような豹、人間のようなゴリラに地味な狩人が飛び込んできた。

 

「テメーら!何しに来た!」

 

銀時が慌ててベッドから飛び出せば山崎が猟銃を震える手で撃ち込んだ。

 

「銀ちゃーん!」

 

しかし、それは銀時を反れ机の上に飾られてる花瓶に当たり割れたのだった。

 

「うわぁぁああ!すみません、すみません、すみま…」

 

山崎はパニックになると沖田がガルルと唸りながら怒鳴った。

 

「何やってんだ!テメェ、それ貸しやがれィ!」

 

しかし、沖田は山崎から猟銃を奪うも、フカフカな肉きゅうのついた手では上手く引金が引けないでいた。

見かねた土方は更に沖田から猟銃を奪うと銀時に狙いを定めた。

 

「やめるアル!お前等一体何のつもりネ!」

「退きやがれ!」

 

神楽が銀時の前に立ちはだかると、土方は引金を引くに引けなくなってしまい、結局銃を降ろしたのだった。

 

「銀ちゃんに怪我させたら私が黙ってないアル!銀ちゃんがオマエらに何したって言うネ」

「いや……俺は物語に忠実にやって来たって言いますか……だって、狩人が赤チャイナちゃんを助けるって決まって……」

「俺はただ、獲物を同じ狼に横取りされるのが気に食わねェだけだ。こっちも生活がかかってんだよ」

「ケッ、よくいいまさァ。チャイナを食おうと思ってたら銃くらい撃ち込めんだろィ。あっ、そっか。いっけねぇ。そっちの食うって意味じゃないらしいや」

「はぁ?テメェ!」

「まぁまぁ、お前ら落ち着け。俺なんて木こりなのに山で迷子になってだな……しまいにはゴリラに間違えられて……」

「つーか、なんでゴリラが居んの?俺やっぱり本当に熱でも出てんの?まぁ泣くなゴリさん。いつかお前さんも進化して人間になれっから」

 

山崎は任務を全うできない事を嘆き近くにあったぶどう酒で飲んだくれ、沖田と真っ赤な顔の土方は取っ組み合いの喧嘩中、近藤は涙を浮かべながら銀時に慰められている。

神楽はこの状況に肩をすくめた。

 

「どうしようもないネ」

 

結局、赤チャイナちゃんは狼に食べられることもなく無事にまた山を下りて行ったのでした。

めでたしめでたし。

 

 

 

「新八、ただいまヨ」

「おかえり神楽ちゃ……えっ……えぇぇっ!」

「可哀想だからみんな引き取って来たアル!」

 

2010/11/03

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