Kiss me《R18》/土神
その日、土方は限界を感じていた。
次から次へと起こる事件。緊急招集。後に、報告書の提出。休日とは言え、前日に付き合いで呑めば、昼過ぎまで寝床から這い出る事は不可能だった。
あれから。
ユートピア星から戻ってからというもの、まともに神楽と会う時間など皆無であった。たまに神楽から電話が掛かってくることがあったが、いつもそれを不在着信で知っていた。
もう、終わる。それは仕事ではない。神楽との関係の話だった。
土方は薄々気付いていた。会えない日々やすれ違いが、人の心にまで及ぶ事を。
仕事で刀片手に国だ町だと守っているが、肝心の自分の気持ちや2人の関係を守り抜く事は、どうも不得手であった。
今日も土方は自室へ帰って来ると、気が抜けたのか畳の上に倒れこんだ。
「……そろそろ有給取るか」
日々増える煙草の本数が、土方のストレスレベルを表していた。今日だけで二箱以上も吸っている。
マズい。土方もこれにはさすがに苦笑いを浮かべた。体への影響は勿論だが、ここまでストレスを溜め込むと、心にまで何か影響をきたす恐れがあるからだ。
「……トシ」
現実に聞こえる筈のない声が聞こえて来る。神楽の甘えるような可憐な声。
ほら見ろ。土方は目を閉じた。
そろそろリフレッシュをしないと、自分の精神までもが崩壊してしまう恐怖を感じていた。
清涼剤。そんな言葉を頭に浮かべた土方は、畳の上でうつ伏せに倒れながら、ズボンのポケットから携帯電話を取り出した。
掛ける先は、着信履歴に一番多いあの番号だ。
土方は携帯電話を耳に当てると、呼び出し音が途切れるのを待った。だが、考えてみれば時刻は23時を過ぎていて、もう寝ていてもおかしくない時間だ。土方は急いで電話を切ると、体を起こし畳の上に胡座をかいた。
一声だけでいい。神楽の声が聞きたいなどと思っていた。他愛のない会話で構わない。そう思った時に土方は、神楽がいつも通じない電話にどんな想いで掛けていたのかを知った気がした。
切なさと悲しさ、少しの苛立ち。あとは、不安。
愛していると囁き、口付けを交わした以上恋人という関係である。なのに、あの日から何一つ恋人らしい事はしていなかった。
このまま終わらせて良いのか? そんな問いかけに対する答えなど分かり切っていた。
「寝てんだろうな」
土方は軽く食事と入浴を済ませると、着流し姿で屯所から出て行った。
ネオンの光が眩しい夜の街は、土方の眠気を覚ました。
色とりどりの店の看板はまるで花が咲き誇ったようで、そんな通りを歩けば群がる蝶が遊びましょうと誘って来る。
だが、土方はどれにも目をくれず一直線に進んで行くと、ほのかに光る落ち着いた紫の看板を見つけた。
その看板にはスナックお登勢の文字があり、そろそろ近づいて来た万事屋に、土方の心臓が煩く鳴った。
会えるとは思っていない。期待など全くしていない。なのに、胸の高鳴りは収まりを見せなかった。
まだ賑わっているお登勢の前を通り過ぎようとした時だった。品のない、片言で話す女の笑い声が聞こえてきた。
「ソンナノ付キアッテルッテ言ワネーヨ! ギャハハハ!」
「キャサリン様、妬み嫉みはよくありません」
「オマエ! ブンカイシテヤローカ? アアン?」
土方は思わず足を止めると、片言の女が何をそんなに騒いでいるのか耳を澄まして聞いてみた。
「でも、その男も一体何してんだろうね。こんなに良い女を放ったらかして」
「他ニ女ガ出来タニ決マッテンダロ」
「……世の中にはまだまだ良い男がいるんだから、その男一人に執着しなくても良いんじゃないのかい」
そんな会話が聞こえて来たかと思えば目の前の戸が開いて、スナックから出て来た人間と土方は目が合った。
青い瞳。その瞳の持ち主は、土方が会いたいと願っていた神楽であった。
激しく揺れる瞳は、土方がここに居ることに驚いているようだった。
土方も土方で、まさかこんな場所で神楽と会うとは思ってもおらず、目を大きく見開いていた。
何から話そう。土方は言葉を探すも、話したいことが山のようにあり、選ぶことが困難であった。すると、神楽が一歩こちらへと近付き土方を見上げると、急にその表情を厳しいものへと変えた。
土方は覚悟した。殴られるのではないかと。神楽が怒っていても無理はないからだ。こんなにも放って置いた男を、普通なら許せる筈がないと。
だが、やはり土方は忘れていたのだ。目の前にいるのが、弱々しくただ己の欲望に振り回される女ではない事を。
「生きてたアルナ。良かった……良かったアル」
そう言った神楽は下唇を噛み締めると、必死に溢れてくる涙を堪えようとしていた。
土方はそんな神楽の姿に、胸に熱いものが込み上げた。自分の仕事柄、常に死は付き物であった。だが、それは土方にしてみると当たり前の事であり、それに対する恐怖や不安など、とうの昔に置いてきていた。
だが、神楽は違うのだ。いくら彼女が強いとは言え、大切な人の危機や死を自然の摂理だと受け入れる事は出来ないのだ。
土方は今になってようやく、神楽にそんな心配を掛けていたのだと気付き反省した。
「オマエ、タフだから死なないって分かってたけど、もしかしたら沖田のバカにって……」
「総悟にヤられて堪るか。まぁ、仕事には殺されるかと思ったがな」
神楽はやっぱりと言うと、辺りを見回して土方の腕を引っ張った。
土方は何だと言った顔で神楽を見ていたが、連れて行かれた先にその意味が分かったのだった。
お登勢の裏に回ると、二階へと伸びる階段があった。土方は、顔を見せずに自分の腕を引っ張る神楽に落ち着きをなくすと、足を止めた。
「オイ、待て。俺はテメェの顔を見に来ただけだ。気を遣う必要はねェ」
「まぁ、そう言わずお茶でも飲んで行けヨ」
神楽は階段の一段目に片足を掛け、こちらに背を向けそう言った。
土方は口では軽く断りはしたが、本当は神楽の誘いに胸の動悸が激しくなっていた。
全く期待などしていなかった。会えるとすら思ってもいなかった。だが、例えばそれが、自分が落胆しない為の予防線だったとしたら?
土方は神楽に会えた喜びに、自分が最初からこれを期待していたことを知った。
「……野郎がいんだろ」
「銀ちゃんは今夜いないアル。浮気調査で帰らないって」
自分の腕を掴む神楽の手が熱い。
分かっている。誰もいない家に上がる事の意味など。もちろん、神楽も分かっているから、その手の温度が高いのだろう。
土方はどうするか迷っていた。明日はいつも通り仕事があり、そう長い時間出歩いてもいられない。だが、折角出会えたのだから、時間が許す限り共に過ごしたいと思っていた。
「言っとくが、長居は無理だ……精々30分が良いところだ」
「良いヨ。少しでも一緒に居られるなら」
そんな可愛い事を言った神楽に、土方は心が激しく震えた。そして神楽の手を振りほどくと、驚いた顔をしている彼女を腕の中に抱いてしまった。
「だ、誰か来たらどうするアルカ!」
「黙ってればバレねェだろ」
土方は堪らずに抱き締めてしまったが、これくらいは恋人なのだから許されるだろうと思っていた。
確かに神楽も抵抗せず大人しく抱き締められていたが、やはり急の事で驚いてるのかその大きな目を忙しなくパチパチと瞬かせていた。
だが、次第にそれも収まると、じきにやって来る。
呼吸が止まりそうな苦しい瞬間。
見つめ合う2人の距離は徐々に縮まっていき、熱い息が頬に触れる。
「目ェ閉じろ」
神楽がその言葉に素直に従うと、土方は桜色した唇に静かに自分のものを落としたのだった。
久々のキスは2人の距離を急速に近付けた。
唇をゆっくりと触れ合わせる丁寧で優しいキス。荒っぽさなどどこにもない。しかし、それはあっという間に終わってしまい、神楽の口の中に土方の舌が捻じり込まれた。
土方の胸に添えられていた神楽の手が、ギュッと苦しそうに着物の生地を握る。そして次第に神楽の顔は上気していき、まつ毛がフルフルと震えだす。それを薄っすら目を開けて見ていた土方は、ゆっくりと神楽から唇を離すと、目が合ってしまう前に神楽の頭を胸の中に押し込めた。
「悪い」
「全くアル。お陰で……離れたくなくなったダロ」
それは俺も同じだ。そう言ってしまいそうだったが、言えば最後。本当に帰れなくなりそうだと、言葉を飲み込んだ。
「家に上がってヨ」
そう言った神楽を土方は離してやると、先に階段を上る神楽の後をついて行った。
少し後ろを歩く土方は、先程から短い丈のチャイナドレスを着ている神楽が、気が気じゃなかった。足を上げる度にスカートの中が見え隠れし、土方は額に汗を掻くといつもこうなのかと心配になった。だが、当の本人は全く気にして無いのか、隠す様子もなく階段を上り切った。
「たまたま下の婆さんに用事を頼まれて、スナックに行ったアル。まさか、外に出たらトシが居るなんて思ってもみなかったネ」
そう言いながら戸を開けた神楽に、土方は適当に返事をしながら玄関の中へ入り込むも、頭の中は神楽の短いスカートの事ばかりであった。
万事屋には男が2人居るのだが、いくら相手が何も不埒な事は考えないと言えども、やはり少し短過ぎないかと思っていた。ましてや、今さっきまで飲み屋に居たのだ。他の男にイヤラシイ目付きで見られてやしないかと心配になった。
そんな事を考える自分は思ったよりも心配症なのかもしれないと、土方は自分で自分を笑ったのだった。
「直ぐにお茶淹れるから待っててネ」
神楽がそう言って台所に立つと、草履を脱いだ土方は神楽の背後に立ち、やはりスカートの丈は短過ぎると睨み付けていた。
少しこうやって屈めば簡単に……神楽の下着がチラリと土方の目に飛び込んで来た。
そんな不可解な行動を取る土方の視線に神楽は気付いたらしく、後ろを振り返ると赤い顔で土方を睨み返した。
「オ、オマエ……何見てるアルカ?」
土方は急いで視線を外すと、別にとだけ答えた。だが、神楽は疑うような目付きでこちらを見ていて、全く誤魔化し切れていないようだった。
やや怒り気味の神楽は土方の胸をトンと強めに手で押すと、後退りする土方を壁際まで追い詰めた。そして、胸の前で腕を組み赤い頬で土方に言い放った。
「み、見たいなら、言えば良いダロ!」
土方は神楽の言葉の意味が理解出来なかった。そのまま何も言わずにいると、今度は神楽の手が土方の肩に置かれた。それに力が加えられ、しゃがむように促されると、土方は神楽の足元に座らされた。
一体何なのか。
土方を見下ろす神楽の表情は、どこか恥ずかしそうに見え、土方は益々ワケが分からなくなった。
だが、次の神楽の行動で土方はこれらの意味を知るのだった。
「ちょっとなら……良いヨ」
神楽はそう言って自分のスカートを摘まむと、ゆっくりと上に引き上げ始めた。
土方はそれを口を開けたまま、何も出来ずに眺めていた。
裾の位置が徐々に上がっていき、神楽の白い腿が露わになる。
触れたい。そう思わせる滑らかそうな素肌。だが、土方はただ生唾を飲み込みながら、目の前の光景を眺めているだけだった。もし、触れば……触るだけで済まないのを分かっていたからだ。
しかし、神楽のスカートの裾はどんどんと上がっていき、遂に下着が見えるか見えないかの境まで来てしまった。後もう1センチでも上がれば、神楽の下着が白日の下に晒されるだろう。
土方は心なしか呼吸が荒くなり、目が血走っていた。
「本当に見るだけアルヨ?」
神楽の上気した顔が土方の欲情を掻き立てた。少し見るだけで良いからお願いだと、必死に願っている自分がいるのだ。鬼の副長ともあろう男がなんて様だ。
しかし今は、イヤラシイ女の前で跪くただのスケベな男でしかなかった。
「息、掛かってるアルヨ」
いつの間にか神楽の腿を間近で眺めていた土方は、神楽の言葉に少しだけ冷静さを取り戻した。
何やってんだ。馬鹿馬鹿しい。そう思って離れようとしたが、神楽の過激な言葉に体が動かなかった。
「パンツ、穿いてなかったらどうするアルカ?」
そんな事を口にした神楽の指が、遂にスカートを捲り上げようとした所で、火にかけていたヤカンが音を鳴らし沸騰した。そのせいで、神楽の指はスカートから離れ、下ろされた裾は腿まで一気に隠してしまった。
ヤカンを火から下ろした神楽は、忙しそうにお茶を淹れる用意をすると、さっきの事などすっかりと忘れてしまったかのように見えた。
土方はそんな神楽の後ろ姿に思わず片手で目を覆うと、嘆かずにはいられなかった。
「……お茶を飲んだら帰る。お茶を飲んだら帰る。俺はお茶を飲んだら帰る」
呪文のようなその言葉にどれ程の効果があるのか、それはまだ分からなかった。
居間のソファーでお茶を飲む土方だったが、もう意識はさっきから別の所へ行ったっきり戻っては来なかった。
土方の左隣にぴったりとくっ付いている神楽が、土方の腕に自分の腕を絡めると肩に頭を乗せているのだ。
「飲みづれェだろ」
だが、神楽は離れることなく、たわわに実った豊かな胸の間に、土方の腕を挟んだままだった。
柔らかい。思わず顔が歪む。
土方の湯呑みを飲む手はプルプルと震え、その顔には玉の汗が噴き出ていた。
「万事屋では、お茶を振る舞う時はこうしなさいって教えアル」
「あの野郎、とんでもねェ教育してんじゃねェか。ふざけんな」
平静をよそおってはいるが、神楽の柔らかい胸が絶え間無く押し付けられており、女日照りの身としては我慢ならない状態であった。
そんな頭を埋め尽くす不埒な考えを押し流すように、土方は夢中で熱いお茶を流し込んでいた。
「お代わりいるアルカ?」
正直、お茶などもうたくさんであった。暑くて堪らないのだ。貰えるならば、神楽のその体。神楽そのものを渇望していた。
"一つになりたい"
きっと神楽もそう望んでいる筈だ。
土方は分かっていた。これだけのセックスアピールがただの気まぐれや、無意味なものではない事を。
久々に会った恋人同士が、誰も居ない部屋で2人っきりなのだ。触れ合う事でしか埋める事が出来ない隙間もあるワケで――
土方は空になった湯呑みを座卓に置くと、神楽に掴まれている手をそっと見えてる白い腿に置いた。
すると、それまで大人しくしていた神楽が小さく跳ねた。そして、腕を掴んだまま俯いてしまうと、土方は神楽の腿から手を退けた。
「焦ることねェ……今度の休みにどこか出掛けるか?」
まだ俯いたままの神楽に土方は、その表情を窺い知ることは出来なかった。
「……今が良い」
小さな声だが確かに聞こえた。今が良いと。それが何を指し示すのか、土方は考えた。だが、話の流れからすれば、つまりはあの事しかないだろうと、土方は汗をダラダラ掻いた。
「じゃ、邪魔したな。そろそろ帰るか」
「だって、恋人なんでショ?」
それまで俯いていた神楽の顔が上げられ、土方を真っ直ぐ見つめた。その瞳は真剣であり、少し怒っているようにも見えた。
確かに今まで仕事とは言え、放っておき過ぎた。いくら神楽が強いとは言っても、女の弱さが皆無なワケではないのだ。
土方も実のところ、それは分かっていた。だが、何も言ってこない神楽の心の広さに甘えていたのだ。
ならば、今夜くらい彼女のワガママに付き合ってやるべきではないか。
居間の時計を見れば0時を迎えようとしていた。
時が止まれば良い。今夜程そう強く願った夜はなかった。この時ばかりは、あんなに嫌っていたユートピア星が恋しく思えた。
「スナックで言われた事を気にしてんのか?」
土方は先ほど下のお登勢の前を通りかかった時に聞こえてきた会話が、神楽の気持ちを急かしているのではないかと思っていた。
それだけの為に焦る必要はなかったが、土方も時間さえ許すならいつでも抱いてやるつもりでいた。だからこそ、いつか来るその瞬間を大切にしたいと、適当に済ませたくなかったのだ。
「そんなんじゃねーアル。彼女なら普通の欲求ネ」
そう呟いた神楽は、不満そうな顔で土方の膝の上に跨がると自分から口付けをした。
もう何度目だろうか。唇で唇を塞ぐこの行為を2人が行うのは。それなのに、いつまで経っても慣れなかった。
たどたどしい動きで神楽は土方の中を這い回ると、今までにはなかった積極性に土方は胸の奥が痺れた。
神楽はどうしても今夜抱いて欲しいのだろうか。土方は神楽の熱を舌先に感じながら、そんな事をぼんやりと考えていた。
もう帰れない。
さすがに土方も愛する女にここまでされて、抗えるような聖人君子ではなかった。
神楽の小さな舌が土方の首筋を舐める。
一体、どこで覚えるのか。そんな事が気になりはしたが、今は体の快感にただ力なく息を吐いているだけだった。
「私、オマエをもっと気持ち良くさせること、知ってるアルヨ」
神楽はそう言って、既に硬くなっている土方の下腹部にそっと片手を添えた。
「ちょっと待てェ!」
軽く怒鳴った土方は肩で呼吸をしながら、神楽の腕を強く掴んだ。
すると、土方の首筋に顔を埋めていた神楽がようやくその顔をこちらへと向けた。
熱っぽい瞳と唾液のせいか艶かしく光っている唇が、土方の動悸を激しくさせる。
堪らない。喉がゴクリと唾を飲み込んだ。
そんな土方のイヤラシイ目付きに神楽は気付いたのか、沸騰しそうな程に茹だった顔で恥ずかしそうに言った。
「……いいヨ。オマエも私のこと触って」
そんな言葉を口にした神楽は、土方の膝の上に跨った状態で、下腹部の熱い塊を白い手で優しく撫でた。
すると、ゾクリと体が反応した土方は、神楽の腕から手を離すと、剥き出しになっている太腿に手を置いた。
「くすぐったいアル」
さっきから神楽の下着が見えてしまっていて、もうくすぐったいから止める止めないと言う期限は過ぎていた。
差し出されているなら触る。土方は食べてくれと言わんばかりの神楽の体に、食指を動かさずにはいられないのだった。
先程から神楽の手はぎこちなく土方を弄っているが、土方も土方でそんな神楽の体を揉んだり摘まんだりと愉しんでいた。
互いの体を誰にも邪魔される事なく愛する。そんな2人だけの時間が永遠に続けば良いと思っていた。だが、そうもいかないのは、疼き出す体が更なる熱を求めるせいだった。
土方は神楽のチャイナドレスのホックを外すと、胸の前を大きく開いた。そして、淡い色の下着を器用に上へとずらしてしまうと、神楽の張りのいい胸を露出させた。
前に1度だけその胸を好きなように愛した事があった。あれは地球へ帰る前日の夜の事だった。
月明かりに照らし出された神楽の体は、まるで人形のように美しかった。だが、今はその印象と大分と違ったのだった。
舐めて、齧って、吸って。触って、愛して。とにかく、思い付く全てのことを試したいのだ。それくらい今見ている神楽の体は、肉感的で煽情的なのだ。
土方は、口をだらしなく開き蕩けてしまったような表情の神楽に、更なる追い打ちをかけた。
舌先を使って神楽の胸の一番敏感な場所を刺激したのだ。
神楽の体が軽く仰け反る。その様子に嬉しくなった土方は、一気に柔らかな乳房を口へ含んでしまうと、神楽の腰を抱き、貪るように激しく愛撫した。
「もう、駄目アル」
何度も神楽はそう叫んだ。だが、次第にその言葉は形を失い、ただの音と成り果てた。
土方の耳に神楽の可愛い声が入り込む。それが脳を刺激して、快楽へと変換する。
堪らない。早く解放されたい。
神楽の力をなくした手の中で、太く硬く反り返ったソレが脈を打って耐えていた。
そろそろ限界か。だが、その前にやる事があると、土方は神楽の白くちらつく下着を見つめた。
土方は神楽を抱き寄せ前屈みにさせると、許可なく神楽の下着の中に手を突っ込んだ。
「触るナ!」
そう叫んだ神楽だったが、土方の指が触れた先には愛液が溢れており、言葉とは裏腹に早く触ってくれと物欲しそうに待っていた。
「力抜け、痛かったら……」
止めるから。そんな言葉を続けようかと思ったが、その必要はなくなってしまった。勝手に侵入してしまった土方の指を、神楽が咥えて離さないのだ。
神楽は土方の首にしがみつくと、下半身に受ける刺激に膝を震わせて喘いだ。
次々に神楽の中から滴り落ちる愛液が土方の指の動きを更に速くさせると、神楽は絶頂に達したのか力を無くし、土方の胸へズルズルと倒れ込んでしまった。
もう神楽はぐちゃぐちゃだった。
髪は乱れ、衣服ははだけ、涙とよく分からない液体とで、その白い体を濡らしていた。
なのに、そんな姿を何よりも美しいと土方は息を飲んだ。
明日も早い。こんな事をしている暇があるなら寝ろ。
頭の中では生真面目な馬鹿が吠えていたが、美しい女を前に上半身で物事を考えないのは仕方ない事と、土方は神楽をソファーへ寝かせたのだった。
そして、室内の明かりを落とし、着流しの腰紐を解くと、土方は神楽の体にゆっくりと重なったのだった。
神楽の吐息が漏れる。土方はそれに安堵すると、更に深い場所へと押し進めた。
「ダメ」
神楽の声に土方は焦ると、急いで腰を引こうとした。
「動いちゃ駄目アル!」
土方は慌てて動きを止めるが、そういつまでも止まっているのも難しいと、またゆっくりと動き始めた。
痛くないように、少しでもマシなように、ねっとりと中を掻き回すように。
「だ、からっ」
動いちゃダメだと神楽は言ったが、その声は吐息混じりの随分と艶っぽいものだった。土方の胸の奥が熱く燃え上がる。
神楽にのし掛かると土方は唇を求めた。神楽もそれに気付くと観念したのか、もうダメだと言わずに土方を受け入れたのだった。
何度も交わす口付けに互いのリズムを覚えたのか、呼吸のタイミングや舌を絡める深さ、どこが好いとか悦ぶとか、もうすっかりと分かっていた。
神楽は土方の首にしがみ付くと、より一層体を密着させた。
甘い時間。
何も考えずに神楽の体にだけ夢中になれば良い。
いつもなら頭の中に絡まっている雑多なつまらない事など、考え込む隙もなかった。
これ程までに一人の人間の事だけに染まるなど、土方は初めての事だった。今まで抱いてきた女達など、比べるに値しないのだ。
2人はどちらともなく手の平を合わせると、指を絡めて手を繋いだ。
土方は余すことなく全身で神楽を感じていた。だが、悠長に愉しんでいる場合ではなかった。土方の体は溜まったものを吐き出したいと、痺れを切らしたように神楽の中で暴れ出した。
土方は神楽から唇も、手も、遠く離してしまうと、神楽の女らしく括れた腰を両手で掴んだ。そして、激しく揺さぶりながら神楽を愛した。
神楽の切ない声が寝室に響く。そして、快感に溶け切った淫らな表情と熱い吐息が、土方を益々掻き立てた。
時折、神楽の揺れる柔らかな胸に手が流れたり、余計なところを刺激したが、最終的には2人で抱き合うと、たった一つの存在になってしまったかのように混ざり合った。
神楽は全身を使って土方にしがみ付くと、自分に流れ込む全てを受け止めた。土方も残らず何もかも注ぐと、神楽の胸に倒れ込んだ。
互いにそれがどういう事かは分かっていたが、もう離れる必要がないと繋がったままだった。
「大丈夫アル。責任は取ってやるネ」
神楽が悪戯っぽく笑いそう言うと、土方は焦った表情を見せた。
「人の台詞を盗るんじゃねェ」
すると神楽はケラケラ笑って、土方に軽くキスをした。
「……好きヨ」
恥ずかし気もなく愛を囁く神楽に、土方はまた体が熱くなるのを感じた。
神楽の言葉が心地良くて仕方が無いのに、穏やかな気持ちになるどころか、更にエンジンが掛かったように燃えるのだった。
それに気付いた神楽は待ってと目を大きく開くも、土方はゆっくりとまた腰を動かしたのだった。
「やあっ、待てヨ! ちょっとお腹空いて来たアル!」
「テメェがンなこと言うからだろうが!」
「だっ、だって、好きアル。本当の事だもんっ、あっ!」
結局、時間など惜しくないと再び愛し合うと、2人で初めての朝を迎えたのだった。
2013/11/23
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