闇討ち/沖→神(→銀)
見廻りから屯所へ帰れば、取調べ室から怒号が聞こえて来た。
「ふざけんなッ! 雁首、斬られてェのか!」
資料室へ向かおうとしていた俺は、それを廊下で聞いていると、向こうから資料を抱えてやって来た山崎が、青い顔をしながら俺に言った。
「ハァ。俺、取調べられる事になっても、絶対に副長だけは避けたいです」
「心配すんな、山崎。てめーが罪を犯したら、俺が介錯してやらァ」
「ひえっ!」
益々青い顔になった山崎は、逃げるようにその場を去った。たかが土方さんにビビるとは、あいつもまだまだだな。
立ち去った山崎に俺もそろそろ資料室へ向かおうとしたが、聞こえて来た言葉にその足を止めた。
「……たまが……」
「はっぽう……」
どうも土方さんが取調べてるホシは、拳銃所持の上、発砲事件を起こしたらしい。だが、耳障りな怒号が聞こえなくなったところを察するに、ホシは吐いたのか。
しかし、すぐにまた怒号と喚き声が聞こえて来た。
「だから、テメェは通報されたつってんだろッ!」
「ケチくせーな! オイ!どっちにしても、一つくらいイイだろ!」
俺は一体なんの騒ぎか気になった。
「発砲事件じゃねーのかよ」
いつまでもギャアギャアとうるさいホシに、ギャグボールの一つでもぶち込んでやろうと、俺は資料室へ向かうのを中止して、取調べ室のドアを開けた。
そこにいたのは、銀髪頭の侍と、青筋を浮かべまくった土方のバカだった。
「あり? 旦那ァ。今日はなんの用件でさァ」
「見りゃわかんだろ。お宅の副長に難癖付けられて困ってんだよ。俺はてめーらと違って暇じゃねーんだよ」
土方さんはついに血管がいっちまったのか、頭から血飛沫を出しながら旦那の胸ぐらを掴んだ。
「ふざけんなッ! 俺もテメェなんかを相手にしてる程、暇じゃねェんだよ! オイ、総悟! 後はテメェに任せた。やってられるかッ」
煙草を口に加えたまま土方さんはそう吠えると、旦那を俺に預けて取調べ室から出て行った。
「沖田くん、俺帰っていい?」
「旦那、何やらかしたんでィ。弾がどうとか、発砲がどうとか聞こえたが……」
「ああ、それか」
すると、旦那は神妙な面持ちになった。正直、いくら元攘夷志士とは言え、そう簡単に拳銃が手に入るとは思わなかった。と、なると――俺の頭にどっかのバカが使っている、紫の番傘が思い浮かんだ。
まさか、アイツが何か事件を起こしたのを旦那が庇ってるのか?あり得ない話ではなかった。
旦那がアイツを犬っころみてーに可愛がってることは、俺も知っていた。だが、罪を犯したなら償うのが当然だろィ?それは服役という方法もあるが、腹を斬るのもまた然り。
俺はあの女が臓物ぶちまけて死に逝く様を想像すると、ニヤリとせずにはいられなかった。
「旦那ァ、チャイナ娘どこに居まさァ?」
「あ? 神楽? 家にいんじゃねーの? つか、連れて来てくれんの? いや、さっき、土方くんにカツ丼頼んだらダメだって言われて、じゃあ、ラーメンで良いつったら、それも断られて。しかたねーから、八宝菜でって言ったんだよ。今晩はここで晩飯食えば飯代浮くだろ? だから、丁度俺も神楽を呼びつけようかなって思って……って沖田くんいない!!」
俺は旦那の話を最後まで聞かずに、チャイナがいるであろう万事屋へと向かった。
「何しにきたネ」
不機嫌な声でそう言ったチャイナは、俺を玄関の中にも入れずに睨み付けた。
相変わらず、可愛げのねー顔だ。なのに、旦那が溺愛してるところをみりゃ、こいつが旦那にはどんな顔を見せてるのか想像がつく。
「心当たりはあんだろィ? てめーが、俺について来ねぇってなら、旦那は一生務所暮しでさァ」
チャイナの悔しそうな表情に俺は心の中で笑った。遂に、この女が俺に屈伏する日が来たんだ。これが、笑わずにいられるか。
「心当たりなんてないアル。銀ちゃんどうせ、拾い集めたパチンコ玉で遊んで捕まっただけダロ? 明日には帰ってくるネ」
「……まァ、俺は旦那がどんな判決受けようと知ったこっちゃねぇ。たとえ、それが死刑でもなァ」
チャイナは玄関戸を強く握ったらしく、バキッと木の軋む音がした。いや、戸が折れた。だが、俺に殴りかからねぇところをみれば、育ったのはその身体だけじゃなく、頭ん中も多少は成長したらしい。
「どうしても旦那を助けてぇなら、分かってんだろな? やる事は……」
ただ一つ。この俺に負けを認めて、大人しく跪けばいい。そして、その後は、俺の手でテメェを地獄に送ってやらァ。
「汚ぇアルナ! オマエ、絶対許さないアル!」
「何言ってんだ。どっかバカの罪を被って執行台に上ろうとしてる旦那は、一体誰のせいでこんな事になったと思ってんだ」
「それは……どっかのバカのせいアル!」
こいつは冗談で言ってんのか?皮肉も通じねぇバカだったとはな。
「まぁ、いい。よく考えろィ。今夜中にてめーが動かなけりゃ、明朝には旦那はただの肉塊だ」
見開いたチャイナの目は瞳が揺れていて、俺を通り越し、どこか遠くに焦点が合っていた。
俺はそんなチャイナに背を向けると、万事屋の階段を降りた。
あいつが今夜俺に跪きに来るかどうか。それは、賭けだったが、少なくとも旦那を助け出しに屯所へは来るハズだ。
俺は屯所へ帰ると、建物の中で一番頑丈な部屋へと旦那を移した。
「で、神楽は? つか、八宝菜と酢豚、あとギョウザ注文してくれた? すげー腹減ってんだけどォ!」
旦那は自分の立場をまだ理解出来てねぇのか、相変わらず呑気な事を言っていた。
「旦那、チャイナが今夜中に俺んとこに来なけりゃ、明日あんたが死刑でさァ」
「だよな。俺もなんかそんな気がして……え? 沖田くん、今なんて?」
旦那は自分が何の罪を被っているのか、分かってねぇらしい。この町じゃ、一般市民が刀、拳銃、その他諸々。それらで人を殺めりゃ、死刑という決まりだ。バカでも分かるハズだ。身代わりになるには、重過ぎる罪だってな。
「チャイナを庇って死刑宣告を受けるとは、旦那の愛は海より深いらしいなァ」
「庇う? は? 何だよ! 俺はな、拾ったパチンコ玉で5000円儲けたらパチンコ屋に通報されて……」
俺は耳を疑った。今、なんて?
いや、そんなハズねぇ。確かに俺は聞いた。発砲が――
「で、沖田くん。俺の八宝菜は? 俺の酢豚は? ギョウザは? いい加減にしてくれよ! 食わしてくれねぇなら、帰らせろ!」
マズイ。今、ここで旦那を帰らせると、チャイナが屈辱を感じながら俺に跪く計画がパァになる。
俺はケータイをポケットから取り出すと、馴染みの店に電話を掛けた。
「真選組屯所まで、八宝菜と酢豚、ギョウザをたのんまさァ。請求書は真選組の土方十四郎で宜しく」
俺は電話を切ると、旦那に丁寧に言った。
「今夜はこの部屋、好きに使ってくだせィ」
「あのさ、あとでいちご牛乳頼める? あと、今週のジャンプと、今月の家賃の120万円と……」
俺は旦那のケツに小刀をブッ刺すと、チャイナが来るであろう夜に備え、刀の手入れをしに自室へ戻った。
夜10時を回っても、チャイナは屯所には来なかった。旦那の入ってる部屋に仕掛けたセンサーに反応はない。その他にも異常は見つからず、意外にもあの女は旦那に恩も情も感じてなかったらしい。
「……旦那もチャイナを庇ってたわけじゃなく、チャイナも旦那を助けに来ない。全て思い過ごしかねィ」
深い愛情で繋がってるように思えたが、どうやらそれは俺の勝手な思い込みだったらしい。男女間の情なんざ、所詮そんなものか。まだ、俺たち"真選組"の方が、太いもので繋がれてるようだった。
「あ、やべっ。連続窃盗事件の容疑者、洗うの忘れてた」
俺は捜査中の事件の資料を閲覧しに、資料室へと急いで向かった。勤務時間は10時の時点で終わっていたが、土方さんにサボった事がバレる前に、今日中に資料に目を通しておきたかった。
敷地の奥にある暗い資料室。俺は一人で資料を閲覧していた。他の隊士は見廻りか、自室にいる時間帯で、資料室付近には人の気配を感じなかった。
だが、微かに土を踏みしめる音が聞こえた。随分と慎重に動いてるらしく、他に音は聞こえない。野良猫か?そう思ったが、資料室の戸の開く音に、それが猫の仕業じゃない事を確信した。俺は資料を静かに棚に戻すと、右手を腰の刀に置いた。
遂にヤツが来たか?俺は胸の高鳴りと、体の火照りに、自分が興奮状態であることを感じた。
「ッ!?」
突然、資料室の電気が消され、俺は暗闇に視界を塞がれた。
すると、背後にガチャリと嫌な音が聞こえ、俺はその音に向かって刀を斬りつけた。
「どこに目ぇつけてるネ」
聞こえて来たその声に、俺は口角を上げた。
「随分、遅かったじゃねーか。旦那は片思いだと悲しんで、自決しちまいそうだったぜィ」
「……言ってる意味がわからんアル」
チャイナは俺に引き金を引かず、傘で殴りつけて来た。それを俺は刀の背で受け止めると、チャイナが何をしに来たのか尋ねた。
「俺をヤって旦那を助け出すか? だが、てめーは浅はかだったな。旦那の処遇は俺が決めるわけじゃねぇ。言わば、俺はてめーにとって天使にも悪魔にもなれる存在だ。俺を殺しちまったら、上の奴に掛け合う者は消える。結果、旦那は助からねぇ」
「んな事、分かってんダヨ! だから、余計腹立つアル! せめて、一発殴らせろヨ!」
暗闇で見えねぇが、どうやらその顔は俺を涙目で睨み付けてるらしい。いい気味だ。そのまま負けを認めて、俺の靴でも舐めな。バカ兎。
「その傘、下ろせよ」
「お前も、その刀しまえヨ」
俺たちは同時に体を離すと、互いの得物を収めた。だが、隙は見せられねぇ。油断したが最後。こいつは旦那を助ける為なら、ここにいる野郎共全てを敵に回すことの出来る女だ。俺を平気で殺しに来るだろう。
窓のない資料室。月明かりすら届かない、電気の消えた部屋は、何一つこの目に映すことが出来ないほど、深い闇だった。
俺は棚に背を預けると、暗闇のどこかにいるチャイナに向かって言った。
「で、てめーは、何をすれば良いか分かってんだろな?」
実際は、旦那はくだらねぇ事でしょっ引かれただけで、死刑とは無縁だったが、このチャンスを利用しない手はなかった。
この女がその白い膝を地に汚し、頭を垂れる。そして、屈辱を感じながら、慈悲を請う言葉を口にする。想像するだけで、愉快だった。
だが、その姿を目に、ケータイに焼き付けるには、ここはちと暗すぎた。
どうせなら、明るいところがいいだろう。俺は場所を変える事を提案した。
「俺の部屋に来い」
「いっ!?」
チャイナは不細工な声を上げると、ガタンと何かにぶつかった。まさか、逃げる気か?だが、そんな気配はなく、鼻をすする音だけが聞こえていた。
あ?もしかして、こいつ泣いてる?
「てめー、泣いてるだろ」
「は、はぁ? 泣いてねーアル! 腹くくって来たネ! 私が泣くっ、ぐすん、わけねーダロ!」
泣いてんじゃねーか!俺は益々、体が熱くなり、もうすぐやって来るであろう勝利の瞬間を期待して、脈拍数が急上昇した。
「とりあえず、いいから部屋に来い。あんまり手間取らせるな。てめーがこんな遅くに来たから、予定が狂っちまっただろィ」
俺はチャイナを跪かせ、嘲笑い、写メを取ったら、さっさと資料に目を通したかった。もう、10時は確実に過ぎてんだ。チャイナごときに、時間を取られるのは癪だった。
「……し、仕方ねーダロ! 色々と準備があったアル」
「準備? ああ、心の準備か。なら、もう充分だろィ?」
俺はすぐそこにいるであろう、チャイナの腕を引っ張った。だが、奴の力でそれはすぐに引き剥がされた。
「ま、待てヨ! ここじゃ、どうしても駄目アルカ?」
よっぽど、屈辱的な顔を見られたくねぇらしいな。だが、それじゃあ意味がねぇ。俺を満たすには、こいつの悔しがる顔が何よりも必要だった。
「どうすんだよ。早くしねーと、日が昇っちまうぜィ」
「……分かったアル。お前の部屋に行ってやるネ。だけど、一つ条件があるネ。お前がいつも着けてる、あのヘンテコなアイマスク貸せヨ。それがダメなら、ここを火の海にしてやるネ」
アイマスク?俺は、正直迷った。こいつの屈辱感溢れる顔を見ることを優先させるか、俺のドS心を満たすアイマスク着用姿で跪かせるか……だが、アイマスク一つでチャイナが大人しくなるなら、貸してやるのが得策か。
俺はチャイナの条件を飲むことにした。
「いいだろ。貸してやらァ」
俺は再度チャイナの腕を掴むと、資料室を後にし、自室へと向かった。
俺は畳の上で、膝で立ってるチャイナを見下ろしていた。チャイナの目を塞ぐアイマスクが、俺を馬鹿にしたように見ていた。
このアイマスク、腹立つ顔してんな。
「……オマエ、どうしても見てたいアルカ?」
「当たり前だろィ」
チャイナはよっぽど俺に見られたくないらしく、への字口が今にも泣き出しそうだった。
「コレしたら、銀ちゃんを釈放してくれるアルナ」
「しつけぇな。俺がそんな悪魔に見えるか?」
「悪魔以下のくず野郎アル!」
その薄汚ぇ口に得物でも突っ込んでやろうか。だが、チャイナの次の行動に俺の頭は混乱し、それどころではなくなった。
「お、おい?」
見下ろしているチャイナは、俺の前で確かに膝をついている。だが、そのチャイナの手は地に伏せることなく、俺のズボンのベルトを外した。
金属のぶつかる音がいやに大きく聞こえる。それと混じって、俺の心臓の音が聞こえる。顔が熱い。
チャイナは俺のズボンを膝あたりまで下ろすと、次は俺の下着に手を掛けた。
ま、待て。そう思うのに、俺の体は動かない。心臓がさっきからバクバクとうるさい。ただ、チャイナに下着を脱がされるだけだろ?それくらい何だって――脱がされる!?
チャイナは下着もズボンと同じように脱がしちまうと、俺の股間に手を伸ばした。そして、その手で俺のモノを包んだ。
「っ!?」
チャイナのその手は驚くほど熱く、そして小刻みに震えていた。怖がってんのか?なのに、チャイナは俺の股間により一層顔を近付けると、手に握ってるモノを――
「待て! チャイナ、待て」
すると、チャイナは主人に忠実な犬の様に、俺の言葉通り動きを止めた。
「……どういうつもりでィ」
「何がアルカ! お前がどうすれば良いか分かってるな? って言ったんダロ!」
確かに俺ァ言った。だけど、俺が言ってるのは、跪いて泣きすがることであって、俺に奉仕しろなんてことじゃねぇ。
チャイナは俺のモノを握ったまま、アイマスクで塞がれている目で俺を見上げていた。
非現実的な光景。眩暈がしそうだ。
あまりにも突然にこんな事になっちまったが、チャイナがその身を俺に捧げようとしてるなら、俺はそれを断るつもりはなかった。
相手がチャイナとはいえ女で、ましてや……上玉だ。
嫌ってる男に抱かれる。悪いシチュエーションでもねぇな。俺のどS心をくすぐった。
「分かった。てめーが俺を気分良くさせる事が出来たら、旦那を釈放してやらァ」
「絶対約束守れヨ」
チャイナはそう言うと、手に握ってるモノを軽くしごいた。そのぎこちない動きと、僅かにかかる熱い息に俺のモノは一気に血液を集めた。
「な、なにこれ……」
「何って、ナニでさァ。まさか、てめー初めてか?」
チャイナの見えてる顔が赤くなると、俺はその事実に言葉を失った。まさか、始めての癖に俺にカラダを捧げるとは。旦那が聞いたらどう思う事か。
そんな事を考えてると、またカラダが熱く火照った。
「もう、充分ダロ? お前のすごく固くなってるアル。この反応、気持ちいいんダロ?」
確かに、自分でするのとは随分と違う。だが、困ったことに、既に達してしまいそうだ。チャイナの手の平の柔さと、温かさが俺から何か搾り出そうとしていた。
だけど、俺はまだそうなるワケにはいかなかった。多分、イケば終わる。
巡って来たこの機会を俺は、早々終わらせたくはなかった。たっぷりチャイナを堪能してやる。このカラダでチャイナに負けを思い知らせるまで、果てる事は避けたかった。
「もう、やめろィ! それ以上は、やるな」
「なんでヨ! オマエ、気持ちいいんダロ? 」
ヤバイ。チャイナは俺のモノを丁度いい加減でしごき上げると、口の中で溜めていた唾液をそれに垂らした。
「っ!?」
初めてってのはウソだろィ?俺は、思わず歯を食いしばった。
何だこれは。滑りやすくなったチャイナの手の中で、俺のが刺激されている。 その危ない手付きに、今にも爆発しちまいそうだ。なのに、チャイナは更に追い討ちを掛ける如く、それに唇を近付けた。
今までのと比じゃないほど、熱いものに包まれた。
チャイナの口の中。うごめく舌が、俺のモノに絡みつく。
「どこでっ、覚えたんでィ」
「……出て来る前に、勉強してきたアル」
チャイナは糸を引かせて口から俺のを抜き取ると、そう口にした。
唾液で濡れた俺のモノとチャイナの唇が、部屋の明かりを受けて卑猥に光り輝いていた。その光景に俺は我慢出来なくなった。どうにでもなれ。
俺はチャイナの頭を掴むと、無理やりに口に肉棒を突っ込み、チャイナの頭を動かした。
「うがっ、んぐっ!」
苦しそうな声が聞こえるが気にしねぇ。むしろ、その苦痛に耐えかねる声が俺を欲情させた。だが、俺は忘れていた。この女が普通の女じゃない事を。
チャイナは急に俺をぶっ飛ばすと、咳き込みながら叫んだ。
「殺す気アルカ! このクソどS!」
チャイナは床にへたり込むと、苦しそうに息を荒くしていた。
俺はと言うと、ぶっ飛ばされ、肘が障子にぶつかり、軽く半紙が破れちまった。
「オイ、俺にそんな口聞いていいと思ってんのか? くそチャイナ」
俺は、足にかかっていたズボンと下着を脱ぎ捨てた。そして、隊服の上着も脱いだ。さて、どうしてやろうか。
チャイナを敷きっぱなしの布団に転がすと、耳元で言ってやった。
「旦那を助けてぇんだろィ? なら、もう分かってるよな?」
「上等アル。どっからでも来いヨ」
相変わらず色気のねぇヤツだ。
俺はまだ強気でいるチャイナの隣に体を横たえた。そして、短いチャイナドレスの裾から伸びている足に手を置いた。
「この……垂れてるのは何でィ」
「ひィ!」
チャイナは強く股を閉じるも、滑る肌に俺の手は簡単にチャイナの下着まで辿り着いた。
濡れている下着。多分、間違いない。チャイナは興奮しているようだった。
「俺のしゃぶってヨダレ垂らすたァ、旦那が知ったら悲しむだろうな」
「銀ちゃんのことは言うナ!」
強気な口調だったが、その様じゃ説得力は皆無だった。
俺はチャイナの下着越しに指を滑らした。すると、情けない程に、そこから次々とヨダレが溢れ出した。俺の指は、チャイナの愛液であっと言う間に汚れちまった。
「まだ軽く擦っただけだろィ?」
チャイナは何も答えず、ただ顔を俺のいる方とは反対側に向けていた。
どうやら悔しいのか、チャイナの両手は布団のシーツを強く掴んだ。
俺の手は更にチャイナの奥へ進むと、今にも何かを加えたそうに疼いている熱を見つけた。そこへ、望みのまま指を挿し込んで――いや、そう簡単には入れてやらねぇ。
「あっ……な、なんでヨ」
「そうかィ。そんなに、俺のが欲しいか」
「違う! 仕方なく付き合ってやってるだけネ! 勘違いすんなヨ!」
チャイナは赤い顔でそう言ったが、カラダは正直なようだった。
「仕方ねぇってわりには……本当は欲しいんだろィ?」
俺はそんな言葉を口にしながら、チャイナドレスをゆっくりと脱がし始める。そして、ずっと隠れていたチャイナの胸を露わにさせた。それを鷲掴めば、ゆっくりと揉んだ。柔らけぇ……。
俺はそこに顔を埋めると、一瞬全てがどうでもよく思えた。これが誰のカラダだとか、この後何をどうするだとか。だけど、そういうワケにはいかないらしく、俺のカラダがこいつを欲した。疼いて仕方ねぇ。
俺はチャイナの無駄に育った乳房を口で弄ったりしながら、下腹部を指で遊んだ。
チャイナはただひたすら、体に感じる刺激に負けないよう、シーツを握りしめ、歯を食いしばっていた。
「どうせなら、てめぇも楽しめよ」
俺のその言葉にも何も答えないチャイナは全身汗まみれで、たまに小さな声を漏らしていた。
嫌々と言った風でもないが、楽しむほどでもないようだった。カラダはこんなに悦んでるのにな。
いつの間にか、チャイナのカラダは何も身にまとわず……いや、アイマスク一枚だけをその顔につけていた。
そして、布団の上で座ってる俺のモノを必死にその口に含んでいた。
「気に入ったのかよ」
「……痛いとヤだから、濡らしてるだけヨ」
可愛げのない声でそうは言ったが、チャイナの舌の動きは、オトコを悦ばせる使い方だった。
「そこまでして旦那を釈放させたいかねィ……虚しくねぇのか?」
俺には愛だなんだと言った事は、よく分からなかった。
好きな男の為に嫌いな男に抱かれる。女ってのは、どうも解せねぇや。俺なら、好きな女しか抱きたくねぇ。例え、そいつに愛されなくとも。
「そのアイマスク、外せ」
こいつが何故これを着けたがったか、俺は今になってようやく気付いた。
こいつは、少しでも俺を感じないようにしてる。その暗闇に俺以外の誰かを浮かび上がらせてんだ。
「その目で見ろィ。てめぇを抱くのは誰なのか」
俺は仰向けに倒れてるチャイナの体を引き寄せると、その体にのし掛かった。そして、既に爆発しそうになっているコイツをチャイナに押し当てると、先の方が軽く割って入った。
「随分と簡単に入るじゃねぇか。やっぱりてめぇも、望んでんだろィ」
さっさと奥まで入っちまいたかったが、それじゃあ興がねぇと俺はぐっと堪えた。だが、腰が勝手に動く。俺は顔を歪めると、チャイナのアイマスクを取るか迷った。こんな面を見せるわけにはいかねぇ。そうは思っても、チャイナの顔を拝みたいのが本音だ。何よりも、間抜けな面でもかまわねぇから、その目に俺を映して欲しかった。
「取るからな」
俺はチャイナにそう言うと、見えてる顔に着いているアイマスクを剥がし取った。
それと同時に俺のモノがチャイナの奥の方へ突き刺さる。眩しそうに片目を瞑るチャイナの顔が、途端に苦痛に歪んだ。
「……いてぇのかよ」
思わず、腰の動きを止めると、チャイナはそこでようやく俺を見た。だが、その目には薄っすらと涙が浮かんでおり、睨みつける目付きは俺を殺したいと言っているようだった。
「お前が勝手に捧げた身だろィ。他にやり方なら、いくらでもあった」
「……ベラベラと、さっきから1人でうっさいアルナ」
チャイナは俺の首にかかってるスカーフを引っ張ると、無理やり顔が近付いた。
不意打ちを食らった。俺はチャイナにこの口を塞がれ、息を吸われ――そして、溺れちまった。
そこから後の記憶は曖昧だ。ただ、飽きもせず長い時間、同じような事を繰り返し、チャイナが見せる反応に胸を痛めた。
「俺の上でお前がヨダレ垂らしながら腰振ってるのを知ったら、旦那はどう思うかねィ」
そうだ。全ては旦那の為の行動だ。俺の体に酔うのも、俺の体に鳴くのも、俺を溺れさせるのも全て。どんなにチャイナが感じてようが、果てようが、俺の為の行動じゃねぇ。
虚しいのは、一体、誰だ――
2013/09/06
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