これは、愛じゃない

 

五日目

 

昼過ぎに目覚めた神楽は隣に居た筈の沖田が居なくなっている事に気がついた。朝方、部屋へ戻ったのだろう。一人ベッドの上で神楽は善がり狂った昨晩を思い出していた。何度も注がれた沖田の種。それを掻き出す度に再び火がつき肌を重ねたのだ。それも獣のように。もうこれをなかった事には出来ないだろう。江戸に帰っても何喰わぬ顔で生活することは出来ないようなそんな事を考えていた。

「神楽!」

突然ドアが開き、銀時が飛び込んで来た。

「きゃぁ!」

素っ裸の神楽は慌てて布団を被るも、銀時はそれどころじゃないらしく神楽に抱きついたのだ。僅かに震えている。

「どうしたの? 銀ちゃん?」

すると銀時は神楽を抱きしめながら髪を優しく撫でた。

「いや、なんつうか……スゲー嫌な夢見ちまってな」

「夢?」

銀時は先程見た夢のことを神楽に話したのだ。

「馬鹿だと思うだろーけど……お前が、他の野郎に奪られる夢を見たんだよ」

神楽の顔が強張り、ズキンと胸が痛んだ。

「なんでそんな夢を見たの?」

「わかんねぇ」

数時間前まで神楽は沖田の肉棒をその膣穴に咥え、孕ましてと言わんばかりに性交していたのだ。それも口じゃ言えないような下品な格好で。神楽は震える銀時を同じように震えながら強く抱いた。

「夢なんでしょ?」

「そうだよな。夢なんだよな」

銀時は震えが治まったのか神楽から離れると赤い顔でこちらを見下ろした。

「つうか、お前なんでそんな格好してんの?」

言葉が出なかった。目が泳ぐ。嘘なんて上手くつく方法をまだ知らないのだ。そんな神楽の態度に銀時の眉がひそんだが、すぐに何か察したようだ。

「……あ、そうか。悪い。分かった」

どうやら神楽が一人で昨晩慰めていたと思ったようなのだ。そのせいか慌てて部屋から出て行こうとしたが、銀時は寂しそうにこちらを振り返り見つめた。

「なぁ、神楽。お前をこんなもんに巻き込んですまなかったな。そのせいでお前の気持ちが離れちまっても文句は……」

神楽はベッドから抜け出すと銀時を背中から抱きしめた。

「そんなこと、言わないでよ。私は何があっても……心だけは……ううん、銀ちゃんが好きなの」

銀時の顔が歪む。そして目の周りが赤く染まり、神楽の方へ正面を向けた。

「神楽……悪い。我慢出来そうにねぇんだけど」

そう言って銀時が神楽へ口づけようとして、神楽は慌てて顔を避けた。まだこの体には沖田の残骸が残っているのだ。

「違うの……シャワー浴びさせて……」

銀時の驚いた顔がすぐにクシャッと崩れ、そして頭を掻いた。

「そうだよな。悪い。マジで俺どうかしてるわ」

「ううん、良いの。シャワー終わるの待ってくれる?」

「待つ」

銀時は柔らかい表情でそう言うと部屋から一旦出て行った。神楽は笑って見送ったが、心臓が張り裂けそうになっていた。沖田とのことがバレてしまったんじゃないか。避けた事がヘンに思われたんじゃないか。不安と恐怖が入り混じり、素直に状況を喜べないでいた。だが、シャワーを浴び頭を冷やすとだいぶ気分も落ち着き、先程の出来事が銀時との関係を大きく進展させるものだと分かったのだ。キスをしようとした銀時はそれだけで済むような雰囲気ではなかった。触れようと思ってくれたのだろうか。期待と興奮が一気に押し寄せてくる。服は何を着よう。少しコロンをつけようか。色々と考えが頭を巡る。そうして少し長めの入浴を終えた神楽がバスタオル姿で部屋へ戻ると――――――整えられたベッドに座る沖田が居たのだ。胸の奥が冷たく温度が下がっていくのが分かった。

「帰って」

神楽は強い口調で言い放つと沖田を無視し、着替えを手にした。それを持って再びバスルームへ戻ろうとして、進路を塞がれてしまった。

「何しに来たのよ。昨日のことなら……」

「今から旦那とヤルのか?」

不躾にも程がある。神楽は頬を赤く染めると沖田を睨みつけた。

「なんでィ。照れることかよ。昨日散々俺のでいき狂ってた癖して」

「そんな事言う為に来たなら早く出て行って」

しかし沖田は神楽の胸元に指を置くと、見えている谷間をなぞった。

「いいのか? これも、それも、なんて言い訳するつもりだ」

気づかなかったが、胸元に赤い印がいくつかつけられていた。神楽はそれを急いで手で隠すも沖田は他にも首筋を触り数えていった。

「テメーは色白だから簡単につくってこと知らねーだろ」

「やめて」

神楽は遂に沖田を突き飛ばすと沖田はわざとらしくベッドへと倒れ込んだ。

「誤魔化せるとでも思ってんだろーがやめとけ。俺の存在を旦那に教えることくらい、なんて事ねーからな」

その言葉に奥歯の辺りがキュッと痛んだ。そうだ。誤魔化すことは出来ない。沖田の存在が判明すれば、神楽の胸についた証が誰によってつけられたものなのかバレてしまうだろう。

「断るしかねーだろ。今日は体調悪いとかなんとか言って。だが、そうやって断れば旦那の気持ちはどーだろーな」

離れていく。そんな気がしたのだ。それだけはどうしても避けたい。折角銀時から求めてくれたと言うのに。

「あんたに関係ないでしょ。早く帰って」

神楽は沖田を見下ろしそう言うも、沖田は少しも帰る気配を見せない。それどころか神楽を手招きしたのだ。

「そう嫌がられると帰りたくなくなるのが俺の性でィ」

「それなら《ずっと居て》って言えば帰ってくれるの?」

神楽はため息を吐いた。沖田は銀時と神楽の仲をどうにかして割いてやろうと画策しているのだ。

「今から言うことに素直に従えば考えてやる。どうだ?」

「どうせロクでもないことでしょ。あんたの考えなんて全部分かってるんだから」

神楽はもう相手に出来ないと着替える為にバスルームへ向かった。ショーツを穿き、ミニ丈のチャイナドレスを着ようとした所で沖田がバスルームへと入って来た。

「何考えてんのよ!」

神楽は急いで両胸を手で隠したが沖田がその手を退けてしまった。張りの良い桜色の乳首が沖田の目に映る。

「昨日散々しゃぶったんだ、別に見るくらいヘーキだろ?」

「嫌だって言ってんの!」

神楽は沖田をバスルームから押し出そうとして、部屋のドアが開く音を聞いた。銀時が入って来たのだ。慌てて沖田とバスルームに閉じこもるとカギをかけた。心臓が信じられないスピードで脈を打つ。

「おい、神楽。まだ入ってんのか?」

銀時がドアの前に立った。しかし神楽はその言葉に返事をすることが出来なかった。沖田に唇を塞がれたのだ。そして手が胸へと伸びていき、乳首を引っ張った。それがバスルームの鏡に映る。

「あれ? 神楽ちゃん?」

ようやく沖田が唇を解放すると神楽は返事をした。

「今ちょっと……具合悪くて……」

沖田が神楽の乳房にしゃぶりつくと、ショーツに手を入れながら神楽の乳首を吸ったのだった。

「大丈夫? 出てこれねぇのか?」

神楽は口元を手で押さえると沖田を睨みつけた。だが、沖田は気にする素振りも見せず、神楽の乳房からゆっくりと下腹部まで顔を下ろしていった。洗面台に座らされた神楽は股を開かされるとショーツを剥ぎ取られ、クリトリスを舐められてしまったのだ。

「んッ! うッ!」

思わず声が出てしまい銀時がドアを叩いた。

「おいおい、マジで大丈夫か?」

「へ、いき。うんッ、大丈夫」

銀時がドア一枚を隔てた向こうに居ると言うのに、神楽の体は危険を顧みずに沖田の愛撫に反応を示す。ピチャ、ピチャと水を含んだ音が立ち始めたのだ。割れ目の中へと指が差し込まれる。それを擦るように動かされると神楽はメスの顔になった。とろけた表情と疼く体。息は上がり、頬は真っ赤に上気している。

「俺に出来ることがあれば言ってくれ」

心配する銀時の声が聞こえる。だが、神楽は洗面台の上で脚を大きく開き、沖田の指に乳房を揺らして耐えるので精一杯だ。時折指を噛んだり、下唇を噛み締めたり。

「神楽? 聞こえてんのか?」

「んっ、ふぅ、聞こえてる……ん」

沖田はズボンのファスナーを下ろし膨張した性器を取り出すと、亀頭を割れ目へとくっつけた。神楽は沖田の肩を押してそれを拒んだが、沖田は何喰わぬ顔で神楽へと腰を突き出す。もう受け入れたくない。神楽は嫌だと首を振ったがそんな抵抗は何の意味もないとでも言う様に無慈悲にも膣穴へと肉棒が突っ込まれてしまった。

「んぐっ、ひぃッ!」

必死に声を我慢してはいるのだが、沖田の形にピタリとハマる神楽の膣はこじ開けていく鍵に悦び叫んでいた。これが好きなのだと。心では拒んでいるつもりだが、神楽の肉体はすっかりと沖田を歓迎しているのだ。結合部がハッキリと見える。どこからどう見ても肉体を結んでいた。沖田の肉棒がゆっくり膣から出てくるとテラテラと光って見え、自分の体がすっかりとメスになっているのだと軽い絶望を味わうのだった。

「じゃあ、そこで待ってるから」

すると沖田が腰を振りながら神楽の耳元で囁いた。

「旦那、追い出せよ。デカイ声で喘ぎてぇだろ」

ゾクゾクと寒気がする。快感の波が徐々に大きさを増し、結合部には泡が立ち始めていた。乳首はビンビンに勃っていて、クリトリスも充血している。じきに絶頂を迎えることは分かっていた。神楽は沖田にしがみつきながらフゥフゥとどうにか呼吸をしている状態で、正直余裕がない。

「旦那に帰れって言え」

「でも、んっ、ぁ、ぁ」

「言わねーならおあずけだ」

そう言って沖田は神楽の外へと出てしまった。ズルっと抜かれる肉棒。神楽の物欲しげな膣はまだ足りないと口を開き涎を垂らしている。思いっきり、昨晩のように突かれたい。神楽は沖田に反抗することなく銀時に聞こえる声で叫んだのだ。

「銀ちゃん、部屋に戻ってて。あとで行くから」

「そんなに時間かかるのか。マジで大丈夫?」

ドアの前に銀時がやって来た。だが神楽の頭に銀時のことはない。目の前の沖田だけが映っており、媚びるような表情を見せていた。

「……うん、大丈夫だから早く行って」

「そうか。じゃ、また後でな」

銀時が立ち去り、部屋から出て行く音が聞こえた。それが耳に入る瞬間には沖田の肉棒が神楽の鍵穴をこじ開けており、体を揺らしながら神楽は啼いていた。

「気持ちいい、ん、あはぁ、気持ちいぃ……」

二人は唇を重ねると激しく大きく体を揺さぶった。

「好きぃッ! これぇええ! 好きなのッッ!」

「旦那、今頃、泣いてるんじゃ、ねーか?」

「ぁ、あ、ぁ、銀ちゃんのこと、だめっ、言わないでッ!」

体を仰け反らせ、絶頂を迎える。沖田の肉棒からも白濁色の体液が発射され、神楽の中に注がれる。沖田は神楽の中から出て行く様子もなく抱きしめたまま余韻に浸っているように見えた。図々しい。嫌な奴。それなのにどうしてまた体を繋げたのか。神楽は沖田を抱きしめ返しながらも答えが分からなかった。

「旦那とも、ヤんのか?」

「あんたに関係ないでしょ」

だが、もう神楽は銀時と性的なことはおろかキスすら出来ないと思っていた。いくらシャワーで洗い流しても、細胞の奥まで沖田が染み付いて取れないのだ。

「会ってやれよ」

「じゃあ、離しなさいよ」

「テメーが咥え込んでんだろィ」

沖田は神楽へ口づけすると着ている物を全て脱いだ。そうして二人は体を離すことなくバスルームへと消えると、汚れを洗い流すようにモラルを全て排水溝へと流すのだった。

 

どれくらい時間が経っただろうか。ぐったりとした神楽はベッドの上で天井を仰いでいた。沖田はもう居ない。先程部屋へ帰ったのだ。時刻は夕方で、銀時にはまだ顔を見せることが出来ずにいた。何故なら沖田と獣のように交わったのだ。膣からは精液が溢れ、それでも沖田の肉棒が何度も突っ込まれた。グチャグチャと音を立て、体液が混ざり合う。何も考えず欲望に身を任せ、すっかりと沖田を受け入れていたのだ。もう拒絶する心すら残っていなかった。そんな状態で銀時に会えるわけがないのだ。でも、それもあと一日で終わる。江戸に帰ればもう二度と沖田とは触れ合わない。ここでの事はなかったことにして、銀時と新しい生活を始めるのだ。だからもう明日で沖田とのこの穢れた関係は終わる。そんな事を考えているうちに眠くなって来た。少し寝て、それから銀時の元へ顔を出そう。そう思って少し休むのだった。

 

ドアの開く音が聞こえる。そして誰かがベッドに腰を下ろした。ギシリとスプリングの軋む音が聞こえ、こちらを覗き込む影が見えた。

「大丈夫か?」

銀時であった。神楽は薄っすらと目を開けて、銀時の手を捕まえた。それに頬ずりをしながら微睡んで、幸せそうに笑ったのだ。

「昼間は悪かったな。お前……実は嫌だったんだろ? そうだよな。こんなところでやめとこうぜって言ったのは俺の方だったしな」

銀時は神楽が銀時との触れ合いを嫌がってバスルームから出てこなかったと思っていたようだ。実際は沖田の肉棒で膣穴をほじられ、孕まされていただけなのだが。そんなことは決して口に出せなかった。

「でも、正直お前が……どんどん色っぽくなっていって、なんつうか……マジでくらっとくるわけよ」

神楽はすぅすぅと半分眠りながら言葉を聞いていた。

「今も神楽ちゃん見てるだけで……結構マズいって言うか……」

「ん……」

神楽が掴んでいる手が引き抜かれ、眠っている神楽の唇へと向かう。親指が桜色の唇をなぞると銀時の顔が近づいた。そして落とされる熱。神楽は目を開けるとこちらを血走った目で見下ろす銀時を見つけた。

「銀ちゃん?」

「悪い、神楽」

しかし銀時はそう言いながら神楽への口づけをやめなかった。再び唇が塞がれ、そしてぬるっと熱い舌が入って来た。痺れる。沖田とのキスでは味わえない胸の高鳴りと僅かな緊張に包まれた。チュッと吸われる舌。銀時の息遣いがうるさく、ひどく興奮している事が分かる。

「銀ちゃん、ん、待って、ンはぁ、抑えられるの?」

「わかんねぇ、はむっ、ん……」

銀時は神楽に被さると顔に手を添えて唇を奪った。このままでは報酬はもらえなくなるだろう。それはもうこの際どうでも良いのだが、ここで銀時に抱かれると今まで抗っていた時間が無駄になったような、どこか損をするような気分になった。これならもっと早く抱いて欲しかった。銀時がもっと早く動いてくれていたら、沖田とはこうならなかったのだから。

「神楽ぁ、愛してる、神楽」

銀時の手が胸へと伸びる。その時だった廊下から大きな物音が聞こえたのだ。バキッと言うような、宇宙船が揺れる程の大きな物音。二人は慌てて起き上がると、銀時が神楽に待つようにと言って廊下へ飛び出した。

「おいおいおい、なんだよ! 廊下の壁に穴空いてんだけど!」

「穴?」

神楽は急いで飛び出すと銀時の元へ急いだ。見れば壁に殴られて空いたような穴があり……そこで沖田の部屋を見た。多分これは沖田の仕業だろう。モニターで神楽の様子を見ていたに違いない。二人の雰囲気を壊す為にわざとやったのだろう。そうまでして銀時と神楽の仲を割きたいのだろうか。

「銀時様、神楽様、緊急事態が発生しましたので急遽予定を繰り上げて江戸へ帰還します。また全過程を終了することが出来なかったので、最低支払額の10万円が今回の報酬となります。ありがとうございました」

突然のアナウンス。銀時は怒って何かを言っていたが、神楽は辺りに立ち込めたガスで意識を失ってしまい、その後どうなったのか分からなかった。ただ最後に床へ倒れる瞬間、そこに沖田が居たような気がしたのだ。しかし次に目覚めた時には万事屋のソファーの上で、なんだか長い夢から覚めたような不思議な感覚に包まれていた。向かいのソファーには銀時が横たわっており、机の上を見ると茶封筒に10万円が入っていた。そして紙が一枚。

《契約書にもあったように、いかなる場合でも全過程終了することが出来なかった時の報酬は、最低支払額の10万円となります。お納め下さい》

その文字に夢ではなかった事を知るのだった。本当に約一週間もの間、宇宙船に居たのだろうか。窓の外を見れば夕暮れ時で、空が茜色に染まっていた。

「はっ! 神楽!」

遅れて目を覚ました銀時は、飛び起きると神楽を強く抱きしめた。

「銀ちゃん」

「神楽、良かった、お前……」

そう言って銀時は神楽に口づけすると、抱え上げ隣の寝室へと連れて行くのだった。

 

敷きっぱなしだった布団。その割には湿ってもなく、埃っぽさもなかった。そこへ寝かされた神楽は自分に被さる銀時をただ静かに見つめていた。甘くとろけそうな口づけ。優しく乳房へと伸びる手は壊さないように、痛くないようにと気遣いが見える。

「あー……もう我慢できねぇ、見て良い?」

「……好きにして、いいよ」

銀時に一枚、一枚、脱がされていく。ボタンを引きちぎられることもなければ、無理矢理でもない。丁寧に優しく優しく。そうしてチャイナドレスを脱がされ、ショーツだけの姿になった神楽は銀時の愛撫に心を震わせた。舌がゆっくりと胸を刺激する。焦れったい。もっといやらしく音を立てながらしゃぶったり、噛んだりして欲しいのだ。だが、口に出せない。それが少し続いて、ようやくショーツへと手が伸びる。剥ぎ取るような脱がせ方ではなく、恐る恐ると言った手つきだ。反対にそれが恥ずかしい。神楽は赤い頬で静かに見守っていた。

「痛かったら言えよ」

その優しい気遣いが神楽の胸をグサリと刺した。痛むことはないのだ。もう銀時が思っている程にウブではないから。銀時はそんなことも知らず、ゆっくりと神楽の中へと指を入れた。

「ぁ、んッ……」

「なんか、スゲー濡れてんだけど……」

ハァハァと銀時は興奮すると指を速く動かした。それが神楽の体に火をつけるも、どんな反応を見せることが正解なのか分からず必死に声を押し殺した。

「あれ? 痛い? 気持ちよくない感じ?」

「ううん……そうじゃない……」

不安そうな、心配そうな顔がこちらを見る。その顔を見る度に神楽の心は痛んだ。そして謝るのだ。ごめんなさいと。神楽の体はもう普通の刺激ではもの足りないものになってしまったのだ。乳首をつままれ、クリトリスをしゃぶられながら激しく指を出し入れされたい。そして沖田が嫌な笑顔を浮かべて言うのだ。

《おい、もう雄を求めてんのか。こんな淫乱メス穴じゃ旦那も満足させるのが難しいだろーな》

神楽は沖田との情事を思い出すと、途端に感度が上がった。銀時の指をキュウっと締め付けたのだ。

「そのまま……ズボズボ、してぇ」

銀時の喉がゴクリと鳴った。銀時の指が膣穴を激しく攻めると神楽の腰が浮かび上がった。

「ぁ、んあッ、イクっ、うッ」

次の瞬間には潮を噴きながら神楽は全身を震わせた。銀時を見れば赤い顔で今にも倒れそうな雰囲気であった。あまりにも興奮したのだろう。銀時も着ている服を脱ぐと裸になり、そしてガチガチに反り返った性器をさらけ出すと避妊具を装着した。

「神楽」

「銀ちゃん」

名を呼びあった二人は見つめ合うと、遂に待ち望んだ瞬間を迎えるのだった。銀時が神楽の中へと入っていく。どんなにこの瞬間を待っただろうか。神楽は感動し、心震えるものだとずっと思っていた。しかし、実際に訪れたのはゴム越しの温もりとすぐに果ててしまった銀時だけであった。

「悪い、ハァハァ、神楽、マジでごめん」

「気にしないで、溜まってたんでしょ?」

銀時は再び神楽の中へ入ったが、じっと動かず抱きしめたまま満足そうな笑みを浮かべていた。

「お前ん中、マジでヤバイから……動けねーんだけど」

その言葉に神楽は照れて笑ったが、冷静な体と頭が存在している事に悲しくなった。どうして愛ある行為なのに我を忘れる程の快感が得られないのか。銀時のことは好きで、心の底から愛している。それなのに体はこんなにも満たされないのだ。神楽の目に涙が浮かんだ。それを見た銀時は自分のせいだと思ったのか、結局神楽の中から何をするわけでもなく出て行くのだった。

優しく抱きしめられ口付けられる。愛されていると自覚し、幸福度が増す。普通ならそうなのだろうが今神楽の頭にあるのは全く別のことであった。どうしてイケないのか。どうして気が狂ってしまいそうなほどに気持ちよくなれないのか。何が足りないのか。もっと罵って欲しい。もっといたぶって欲しい。もっと乱暴に扱って、ナマで中出しして欲しい。そればかりであった。

「今日はもう寝るか。お前もキツイだろ?」

「……そうね」

隣の銀時は幸福に包まれているのだろう。幸せそうに笑みを浮かべながら目を閉じた。しかし神楽はどうしても眠れない。考えてしまうのだ。江戸に戻ったら終わらせると決めたいたにもかかわらず沖田のことが頭から離れない。今頃何しているのだろう。さっきからずっとそればかり考えている。しかし頭を振って掻き消した。違うのだと。錯覚しているのだと。あれは全てクスリによってもたらされた幻覚なのだと言い聞かせた。だけど、本当に幻覚だったら?

銀時が寝息を立てている事を確認すると神楽は静かに布団から出た。そしてシャワーを浴びて服を着ると静かに万事屋を出て行くのだった。