これは、愛じゃない

 

四日目

 

翌日。隣に沖田の姿はなかった。いつ戻ったのかはわからない。しかし、昨日の出来事を鮮明に思い出せるのだ。沖田の指や口の中で暴れていた肉棒。神楽は頭を振ると掻き消した。覚えていたくない。それなのに体はしっかりとその熱を刻み込んでいた。このままでは取り返しがつかなくなる。もし次、沖田と危険な雰囲気になった時は何が何でも接触を許してはいけない。本能が警鐘を鳴らしていた。クスリなどとっくに切れている体なのに沖田を思い出すだけで火照るのだ。

「銀ちゃん」

神楽は居ても立ってもいられず部屋を飛び出すと銀時の元へと飛んでいった。銀時はまだ沖田の存在を知らない。いい加減、沖田のことを話した方が良いかもしれない。部屋をノックすると少しして銀時がドアを開けた。

「どうした?」

神楽の顔色の悪さに銀時の表情も曇って見えた。

「銀ちゃん、あのね……」

「悪い、神楽……今日は俺がやばい」

「どういうこと?」

どうやら今日は銀時がガスを嗅がされたようなのだ。血走る目が神楽を見ており、瞳孔がわかりやすく開いた。

「マジで悪い。神楽、今は帰ってくれ」

「銀ちゃん!」

ドアを閉めた銀時はもう応えてくれなかった。こればかりは仕方がないことだと分かっているのだが、不安な気持ちが膨らんでいく。

神楽は一人食事を済ませ、部屋へ戻るとなんでもない時間を過ごした。そんな穏やかな一日にも関わらず、神楽の頭には沖田との事が絶えず流れており気持ちは決して穏やかではなかった。奥の方まで差し入れられた指。それが神楽の体に強い刺激を与えた。きっともう自分の指で満足することは出来ないのだろう。あれを知ってしまった以上、神楽の体は自分以外を求める。クスリの作用が切れた今ですらこうなのだから、もしまたガスを嗅がされてしまったら……神楽は不安で堪らなくなった。しかしどこかでこうも考えるのだ。クスリのせいでおかしくなってしまえば、全部クスリのせいにしてしまえば、沖田とまた触れ合ったって誰かに咎められることもないと。その”誰か”が誰を示すのか。それは明白だが。

結局、この日神楽がガスを嗅がせられることはなかった。それを残念がる自分がいる。強い刺激を求める肉体と心が存在しているのだ。もう誤魔化すことは出来ない。クスリに関係なく性的衝動が生まれている。神楽は数日前よりも敏感になった体に後戻り出来ないことを知った。

 

夜、シャワーを浴びながら前よりも張っている胸に手をあてた。すっかりと大人の女である。まだ本当の意味で男を知らないがそれでも以前までとは明らかに体つきさえも違っていた。これは全て誰のせいか。誰の――――――沖田のことはよく知っているようで知らなかった。いつも突っかかって来て、そのわりに飄々として見える。この自分に触れる時もどんな感情で触れて来てるのか全く分からなかった。ただ性処理に互いを利用しているだけ。それだけなのかもしれないが、不意にされる優しい口づけに参ってしまうのだ。神楽は自分の唇を指でなぞってみた。悲しいくらいに銀時とのキスを思い出せない。今銀時はどうしているだろうか。苦しみながら一人慰めているのだろうか。いつだって神楽は銀時に全て捧げるつもりでいる。一言でいいのだ。お前が欲しいと言ってくれれば、どこだろうがいつだろうが構わず全て捧げられるのに。

神楽はバスルームから出るとクローゼットから適当に白いシャツを取り出し羽織った。紳士物なのか随分と大きい。それをワンピースのように素肌に直接着るとベッドへと潜り込んだ。今夜は早めに寝よう。そう思っていた矢先にモニターに男が映し出された。

「神楽様、今夜は銀時様か沖田様の部屋どちらかでお休みになって下さい。五分以内に決めて頂けない場合は――――」

「わかったわよ」

銀時には来るなと言われている。それなら答えはひとつだ。沖田の部屋で寝るしかない。神楽はその旨を男に伝えると部屋を出て行った。そしてドアをノックすると、開いたと同時に部屋へ引き入れられた。そして壁に押し付けられて唇を奪われた。この男はどうしてこうも強引なのか。股を膝頭で割って、それから片手で胸を……だが今夜の神楽はクスリの効果がない。沖田を跳ね除けるとベッドへと投げ飛ばした。

「あり?」

「残念だったわね。今日はガスを嗅がされてないの。それよりも勘違いしないでよね! あんたにこんなこと許した覚えないんだけど」

まるで恋人とでも言うように当たり前にキスをし、体に触れる。神楽は沖田をきつい目で見下ろすと今夜は何もしないでと強く言った。すると沖田はケラケラと笑い、満足そうににんまりとした。

「強気な女だからこそ、組み敷き甲斐もあるってもんでィ。それくらい反抗的な方が俺好みだ」

神楽は呆れた。どこまでも頭の中はドS一色のようだ。

「俺好みって……別にあんたに気に入られる為にこんな態度とってるんじゃないんだから。銀ちゃん以外に触れられたくないだけよ」

すると沖田はベッドの上に胡座をかいて神楽を見上げた。

「その旦那にいつ触れられんだよ。まだキスしかしてねーんだろ」

「それは……戻ってから……」

「本当に旦那がテメーに惚れてるなら、そもそもこんな危険な治験に協力させるかよ」

そう言って沖田は脚を投げ出してベッドに仰向けに寝転んだ。だが目だけはこちらを見ていて、神楽は逃げるように顔を伏せた。沖田の言葉に動揺しているのだ。もし銀時が神楽を治験に協力させる為に嘘をついていたら? そんな不安が過ぎったのだ。高額な報酬欲しさに指輪や二人の未来をちらつかせているだけなのかもしれない。江戸に帰ったら何かと理由をつけて二人の関係はなかったことにされてしまうのかも。考えれば考える程に妙なのだ。抑えきれなくなる事を理由にキスも嫌がる。神楽の体を慰める手伝いすらしてくれない。実際、沖田は強引ながらも神楽の体を慰めた。もちろんセックスはしていない。神楽は心で呟いた。沖田に我慢が出来ているのだから、銀時にも我慢は出来る筈だと。神楽の体に触れなかったのは単に”触れたくなかった”だけなんじゃないかと、そんな不安に蝕まれてしまった。

「まさか旦那に好きだなんだって言われて、信じたわけじゃねーだろーな?」

「あんたに関係ないでしょ」

愛してると言う言葉も全てお金の為に出た言葉じゃないのか。どんどん信じることができなくなっていく。

「関係あるから聞いてんだろ」

沖田は神楽に手招きした。ベッドへ上がれということなのだろう。今夜はどのみちこの部屋から逃げることは出来ない。神楽は仕方ないと沖田の隣へ身を投げると沖田が神楽の体を抱き寄せてしまった。

「だからやめてって言ってるでしょ」

「口だけならいくらでも言えんだろ」

沖田の腕から逃げることはしなかった。逃げる気力も理由もないように感じたのだ。それでも沖田に心を許したわけではない。今夜は少し疲れてるだけ。

「テメーは何を信じる?」

「何ってどういう意味?」

「言葉か、それとも俺か」

沖田から直接何か言われたわけではない。ただその視線や態度に自分への熱を感じるのは確かだ。何よりも神楽に性的興奮し、実際に欲情している。それが愛情かどうかは測りかねるが、神楽を好いていることは間違いないだろう。その体だけかもしれないが。

神楽は珍しく沖田の胸に頬を寄せると思っていることを話した。

「確かにあんたの態度とか……体とか、嘘ついてるようには思えないけど。だけどやり方ってあるでしょ」

本当に惚れているのなら、順序を踏んで欲しかった。そうすれば少しは神楽も考えたかもしれないのだ。この沖田との関係を。

「普通じゃ、テメーを旦那から引き剥がせねーだろ」

「何よ。そんなに離れさせたいの?」

思いがけずドキッと心臓がときめいてしまった。不覚だ。しかし沖田は神楽を独占したいとそう言ったわけではなさそうであった。

「テメーが離れたあとの旦那の堕ちっぷりを見てぇだけでさァ」

「ほんっとに悪趣味」

「それよりチュウしろ」

神楽は流石にふざけた事を言いだした沖田を遠ざけようとした。

「なんでィ。そう嫌がるな。いつもしてんだろ」

「いつもじゃない! あれはクスリのせいで……」

「本当にそう思ってんのか。そんなクスリが存在するって」

寒気がした。もし沖田の言うように今まで嗅がされていたガスが何の効果もないものだとしたら……全ての行為は隠されていた自分も知らない自分が引き起こしたことなのかもしれないと。

「バカ言わないで。そんなわけないでしょう」

否定してみたが体は震えていた。もちろん沖田にバレているだろう。

「なら証明してみろよ。クスリのない普段のてめーがどれほどの清純(もん)か」

そう言って沖田は神楽の唇を塞ぐといつものように軽くついばみ、舌を差し込んだ。それを神楽は舌で押し返そうとして、舌先を擦り合わせてしまった。いやだ。そう思うのに体温が上昇しはじめ、触れている舌先が痺れる。

「ん、ふ、じゅる、ん」

妙な声が鼻から抜ける。沖田の手はすぐに神楽のシャツのボタンを外しにかかる。男物のシャツははだけていき、白い肌が覗いた。神楽は沖田の手を捕まえにかかったが、すり抜けて太ももへと伸びてしまうと内腿から下腹部へ、そしてショーツに行き着き上からなぞられた。

「……もう濡れてんじゃねーか」

神楽は首を振って否定したが、それが嘘であることはバレている。神楽の脚は大きく開かれ、その股間に沖田が顔を埋めたのだ。

「じゃあ、このシミはなんだよ」

「やぁ! やだ、やめて! 知らない!」

「相変わらず素直じゃねーな」

沖田は布越しにクリトリスを軽く噛んだ。それだけじゃない。吸ったり舐めたりと刺激を与えたのだ。

「やめ、て!」

神楽の手が沖田の髪に伸び、ギュッと掴んだ。だが沖田はやめるつもりはないらしく愛撫を続けた。みるみるうちにショーツにはシミが広がり、神楽の呼吸も浅いものへと変わっていく。沖田の髪を掴む手にも力がはいらなくなり、ついに神楽は下着を脱がされ直接沖田の舌がクリトリスをねぶったのだった。

「やっ、ひゃああん、っ!」

ビクビクと体が跳ね、声にならない声が漏れる。慌てて口を閉じるも遅かったのだ。自分の耳にもその情けない声が残っている。

「どうせじきに黙ってられなくなんだろ。テメーがアンアン鳴いたところで旦那に告げ口するような無粋な真似はしねーから安心して鳴けよ」

「ちょっと、黙っ……んッ、やぁ、ダメ!」

沖田は舌先でクリトリスを舐めながら、すっかりと蜜で溢れている膣穴に指を差し込んだ。耐え難い快感。余裕がなくなる。神楽は逃げようと必死にもがいたが、全く力が入らなかった。

「抜いてン、ひっ、ぁ、いやぁ、あ!」

「おい、変な声出てんぞチャイナ娘。その声じゃ説得力ねーな」

クスリの効果がないにも関わらず神楽は沖田の愛撫で膣を濡らしていた。こんな筈じゃなかった。今までの行為も全てクスリのせいだったのだから。それなのにどうしたのか。素の状態なのに沖田の指に愛液を垂らしているのだ。

「全部、ぶち撒けちまえよ」

「んぐっ、ぐッ、ん!」

神楽は必死で指の動きに耐えた。だが心は折れかかっている。このまま本能に従って、何もかもを忘れて快楽に溺れてみたい。そう肉体は叫んでいたのだ。

クリトリスを吸われ、膣穴はほじられている。そして片方の乳首を痛いくらいにつねられながら、神楽は押し寄せてくる快楽の波に必死に堪えた。皮一枚で繋がった理性が今にも擦り切れてしまいそうだ。

「これでもまだ認めねーのかよ。強情な女だな、テメーは」

指の速度が速められ、奥の奥で神楽をたぶらかす。全身に汗が滲み、時折白目を剥く。そして歯がガチガチと音を立てって震えだすと絶頂は間もなくである事がわかった。もし今沖田の指でイカされてしまったら、もう戻ることは出来ないだろう。それなのに体は求めるのだ。イカせて欲しいと。

「あがッ、ぐッ、いやッ、いやぁあああ!」

突然沖田は動きを止めると神楽から体を離した。

「えっ……」

「嫌なんだろ。やーめた」

泣き出しそうになる自分がいた。待ってとすがろうとしているのだ。これ以上、中途半端な状態で放置されるのは苦しくて仕方がない。しかし沖田は全く興味が失せたとでも言うように神楽に背を向けてモニターに話しかけた。

「おい、見てんだろ。変態野郎。ここまで嫌がられちゃあさすがに興ざめだ。コイツを部屋に帰してやれ」

するとニターに男が映し出された。

「神楽様。本日の予定が変更となりました。ご自分の部屋でお休みして頂いて結構です。その代わり特別に調合したクスリを試して頂きます」

何も言葉がでなかった。思考が体に追いつかないのだ。男の言葉を理解するよりも前に事が運ばれる。いつもと少し香りの違うガスが部屋に充満し、それが鼻腔へ広がった。次第に熱を持て余している体は更に敏感になり、空気にすら快感を覚え始める。神楽は疼きの止まらない体に激しい動揺を感じていた。もう自分の手で満足出来ることはないと分かっている。だから、今すぐにでも沖田によって――――――帰りたくない! しかしそれを口に出せばどうなるのか。終わりだ。全てが終わる。銀時との関係はもちろん、沖田との力関係。何よりも自分が自分ではなくなる。目の前が真っ暗になった。そうならない為には淫らな欲望を封じ込め、部屋へ戻らなければならない。自分から沖田へすがる事など絶対にしてはいけないのだから。

「おい、まだ帰らねぇのかよ」

言い返すことも動くことも出来なかった。下腹部は疼きが止まらず、何もせずともピュッピュッと愛液が吹き出ている。すると沖田が神楽に覆いかぶさり、開いた腿の間に腹につくほど反り返った肉棒をあてがったのだ。

「やめてッ! ダメェッッ!」

肉棒の熱に体が震え上がった。いくら体が雄を求めていても、これだけは禁忌であると知っているのだ。裏切り、失望、堕落、罪。様々な痛みが言葉となって頭を駆け巡った。銀時の軽蔑するような冷たい瞳。それを跳ね除けるように神楽は沖田をどうにか押し返すと体を起こした。だが沖田も今回は神楽を逃がすつもりはないのか再び襲いかかったのだ。言葉もなく力でねじ伏せられる。抵抗虚しく組み敷かれ、沖田が覆いかぶさった。こちらを見下ろす瞳は赤く揺らめく炎のようで、その熱量に息を飲む。今夜こそは奪われてしまうかもしれない。さすがの神楽も緊張と恐怖に顔を強張らせた。

「嫌ならさっさと帰れ」

心は嫌だと泣き叫んでいる。だがそれなのに肉体は無慈悲にも沖田を受け入れたいとパクパクと膣穴を開かせるのだ。

「帰り……たい」

神楽はハァハァと苦しそうに声を絞り出した。

「なんでィ、その言い方……自力じゃ帰れねぇってことか?」

頷くのがやっとだった。すると沖田は神楽の上から下りると身なりを整えた。そしてその手にいつかのリードと首輪を持って戻った。それが何を示すのかはもう分かっている。沖田は呆然とベッドに横たわっている神楽の首に首輪を着けるとリードを装着し引っ張った。引き寄せられた神楽はゆっくりと体を起こすと沖田の手が伸びてきて、僅かに留まっているシャツのボタンが引き千切られた。

「もういらねぇだろ」

全裸に剥かれてしまった神楽は膝から崩れ落ちるように四つ這いになると、沖田が引くリードに従った。

 

部屋を出て沖田は銀時の部屋の方へとリードを引っ張った。

「えっ、なんで」

「口答えするな。ワンコロの癖に生意気だな」

そう言って沖田は神楽の尻をピシャリと叩いた。

「ひゃん!」

神楽の小振りな白い尻に赤く手の跡がついた。痛い。それなのに神楽の膣からはポタリと雫が落ちた。ゾクゾクと寒気がする。それは明らかな興奮であった。

「ご主人様に従えねーってなら、分かってんだろーな」

口答えすれば再び叩かれてしまうだろう。以前なら噛み付いて、何をされようとも反発したのだが、今夜はそれが出来なかった。きっとこれも全て嗅がされたクスリのせいなのだろう。神楽は震える体で廊下を歩き、引きずられるがまま銀時の部屋へと向かった。

沖田がドアを僅かに開ける。中からは銀時の寝息だけが聞こえていた。それを確認すると更に中へと踏み込んでいき、神楽も後に続いて部屋へ入った。

「立て」

神楽は躊躇った。もし銀時が起きれば全ての終わりなのだ。しかし、もう抗えるような人格が自分に存在しないことは分かっている。赤い顔で体を腕で隠しながら神楽は立ち上がった。そして銀時の眠っているベッドの傍へと連れて行かれた。

「無理、帰る」

神楽は恐ろしくなり帰ろうとしたが、沖田がリードを強く掴んで引き寄せると耳元で囁いた。

「旦那の前で犯されたくなかったらわかってんだろ?」

もう逃げられないのだ。神楽は諦めた。抗うことに何の意味もない事を知ったのだ。抗えば沖田が悦ぶだけである。抱き寄せられた神楽は眠っている銀時の隣で沖田に唇を吸われるのだった。

ピチャ、ピチャと音を立て丁寧な口づけが行われる。やめて欲しい。もっと乱暴で嫌いになるような不快さを与えて欲しかった。それなのに沖田のキスはいつも優しい。そのせいで神楽の体は雌の匂いを漂わせ、雄を誘う動きを見せる。体を押し付け、大きな乳房は形を変えた。沖田は神楽の舌をねぶりながら、尻へと手を伸ばし、その肉を開くと指を膣穴へと滑り込ませた。

「んッ! ぶっ!」

神楽の目が大きく開かれる。尻の向こうには眠っている銀時の顔があるのだ。慌てて沖田から離れようとしたが、もう出来ない。無理である。神楽は沖田に掴まり立つと、唇を重ねながら膣に与えられる刺激に膝をガクガクと震わせた。気持ちいい。銀時が直ぐ側にいると言うのに全裸で首輪を繋がれ、沖田と舌を絡めているのだ。許されない裏切り。それなのにもう止める事は出来なかった。

沖田の指が神楽を刺激する度にグジュ、ジュボ、と卑猥な音がして次第にそれはピチャピチャと水分を含んだリズムの速いものへと変わった。

「ぁ、ダメ、ぁ、ぁ、だ……」

神楽はイキそうになる体にブレーキを掛けた。まだ沖田の指でイクことを素直に認められない。何よりもこんな所でイクわけにはいかないのだから。

「旦那の前でイケよ、メス豚」

「ひぃ! ちょっと、ちがッ、ん!」

乱暴な言葉に神楽の膣がキュッと締まる。ダメなのに。歯を食いしばり、必死に声を我慢するも快楽にどんどんと飲まれていく。

「イケって言ってんだろ」

「い、ッ、いがな、い、ぁ、あ!」

沖田の指の速度が一気に上がって神楽の頭にモヤがかかり始める。ガクガクと震える膝は気付けばガニ股になっており、尻を突き出しながら絶頂の瞬間を迎えようとしていた。

「だ、やぁ! だめッ、だめぇえ!」

神楽はプシャーっと言う音と共に絶頂を迎えた。銀時の顔の前だと言うのに潮を噴き、指で昇天してしまったようなのだ。しかし休む間もなく、崩れ落ちた神楽の顔の前に沖田は肉棒を取り出し見せつけた。それをどうすれば良いのかは分かっている。しゃがみ込み、おすわりした神楽は沖田の肉棒に口づけをすると頬張った。

「謝っとけよ」

「ぎんひゃん、ごめん……じゅぼぼ、なさい」

神楽は沖田を舌で味わいながら、背後の銀時を思った。銀時もこうされると嬉しいのだろうか。銀時のはどんな味だろうか。銀時は――――――そうして遂には謝罪の言葉も消えてしまうと、罪悪感も薄れてしまった。

「もう良い、やめろ。それよりちゃんと旦那に面と向かって謝れ」

神楽は銀時の方へ体を向けられると、再び恐ろしい程の罪悪感が湧き上がった。どうして一瞬でも忘れてしまったのだろうか。それもこれもクスリのせいなのだろう、きっと。そう思うことにした神楽は眠っている銀時に向かって謝った。

「銀ちゃん、こんなことになって本当に……」

「違ェだろ、ちゃんと他人の指でイッたメス穴を見せながら謝れよ」

神楽は犬が小便をする時のような格好にさせられると銀時にテラテラと光った割れ目を向けた。泣きそうだ。それなのに今も膣からは蜜が滴り落ちていく。

「いやぁ! やめて……もう、いや」

「じゃあ、濡らすな」

しかし止めることは出来ない。体が勝手に反応してしまうのだ。銀時は何も知らずに眠っていて、神楽は自分の愚かさにどうすることも出来ず目に涙を溜めた。

「銀ちゃん以外の人とこんな事して……ごめんなさい……ごめん……銀ちゃん」

「デカイ乳ぶら下げて、あそこ濡らして……情けねー格好だな」

沖田はそう言って神楽の割れ目を指で広げた。まだそこはヒクヒクと何かを求めていて、指でイカされるくらいじゃ満足しない体であることがよく分かった。

「なんで泣いてんだよ」

「泣いて、ないわよ……」

「さっきから嘘ばっかだな。躾のなってねぇメス犬、いや、メス豚か」

沖田は神楽の膣内に乱暴に指を入れると掻き回し、再び神楽を絶頂へと誘った。

「んっ、んん! いやぁ、や、めて」

「良いのか? デケー声出したら旦那が起きちまうぜ」

神楽は崩れ落ちそうになりながらも必死に快感を感じないようにと堪えた。しかし膣穴はクチュクチュ言いながら沖田の指を咥えて離さない。

「もうイクんだろ。旦那にイキ顔見せてやれよ」

「いっ、ん、ううッ、ンあッ! ンぐぐぐッ!」

涙と鼻水、汗。もう良くわからない。顔はグチャグチャに濡れて、表情も崩れていた。それを満足げな目で見下ろす沖田は神楽の膣から愛液を吹き出させると笑った。

「上も下も漏らしっぱなしかよ。下品なメス豚らしいカオになったじゃねーか」

神楽は髪を掴まれ、銀時にほうけた顔を見せていた。もう戻れない。絶望を感じる状況なのだが、まだまだ火照りの取れない体に羞恥心も薄れはじめていた。

「このまま旦那の前で公開種付けも良いが……今のテメーにはその価値もねぇ。こっち来い」

そう言って沖田は神楽を部屋から引っ張って連れ出した。犬のように四つ這いで廊下を歩きながら神楽はもう自分が飽きられた事を悟ったのだ。こうして堕とすまでが沖田のゲームであり、こんなにも従順になってしまった自分は遊ぶ価値のなくなった玩具なのだと。もう膣穴を満たしてもらえる事はないのだ。それがどれほど安心出来ることなのかを今の神楽には理解出来なくなっていた。それほどまでに脳には快感のダメージが与えられ、修復困難となっていたのだ。

自分の部屋へついた神楽は沖田の手によって首輪を外された。これで自由の身だ。それなのにまだ求めている。沖田によってもたらされる強い刺激を。神楽がフラフラとベッドへ倒れ込むと、沖田は何も言わず部屋から出て行った。

月明かりだけが照らす薄暗い部屋。もっと蔑んで欲しい。もっと罵って欲しい。もっといたぶって欲しい。もっと、もっと。欲望は止まらず次々に湧き上がるのに、埋めてくれて沖田はもういない。神楽はうつ伏せになると尻をあげ、割れ目に指を這わせた。

「はぁ、んっ、あ」

指を入れて動かす。少し前までならそれでも脳が溶け、それなりに体を満たせた。だが今感じるのは緩やかな興奮。そうじゃない。今望んでいるのは自我を忘れる程の激しく大きな快楽の波。しかしどんなに奥深くにまで指を入れても満たされない。

「なんでッ、ハァハァ……気持ちよくなれないの……」

グチャグチャと音がする程に愛液は溢れるのに自分では絶頂へと達することが出来ない。神楽は膣から指を引き抜くと、沖田がいなければイケない体になっているのだとはっきりと自覚したのだ。沖田の言葉を思い出す。嘲笑うような目と冷めた口調。その癖に興奮し、肉棒をパンパンに腫らしているのだ。それを口に頬張りながら、自分で膣を慰める。それだけで良いのに。それ以上の贅沢言わないからと神楽は心の底から沖田を欲しがった。

「沖田の馬鹿っ、うッ、うう……」

神楽は乳房を強く揉みしだきながら、再び膣へと指を入れる。そして欲望の全てを吐き出したのだ。

「おちんぽ、欲しいのにぃ……あっ、ん、ああ、欲しいよぉ、ぁ、はぁ」

何もかもを忘れて獣のように交わりたかった。銀時のことだとか、これからのこと、全てを消し去るように激しく体を貪り合いたいのだ。沖田に頼み込んで、跪いたら叶うのだろうか。でも出来ない。そんな姿を晒せば、本当に全てが終わってしまうのだ。

「欲しいなら欲しいって言え、そう言ったのはテメーだろ」

沖田の声が背後から聞こえたかと思えば、腕を掴まれ背後から――――――

「ぁ、ああっ、はぁああんっ!」

ズブズブと音を立てて貫かれる感触。指ではない太く硬い肉の塊。それが神楽のトロトロに溶け切った膣内へと沈んでいく。たった一突き。それだけなのに神楽の背は仰け反り、声にならない声が上がる。

「これが欲しかったのか?」

もう隠す必要などないだろう。神楽は激しく首を縦に振ると髪を乱しながら言った。

「これがぁあ、欲しかったのぉお!」

「なら好きなだけ食え」

沖田はそう言って神楽の腰を掴むとパンパンと卑猥な音を立てて肉棒で突いた。ジュブジュブと泡を立て、神楽の膣はめくれながらそれを悦んで受け入れた。

「ンぁ、ぁ、気持ちいい、んッ、あ」

背後から獣のように犯され、悦びの声を漏らす。脳が痺れる。すぐに突き抜けるような快感が押し寄せ、そして簡単に絶頂へと誘われる。

「イクっ、イク、ぁ、ああ、イクっ、ん!」

神楽は体をビクビクっと震わせ、口からはだらしなく涎を零した。クリトリスは苦しそうにパンパンに膨らみ、乳房も敏感にその先端を尖らせていた。

「スゲー、締まる」

沖田はイッたばかりの神楽を鏡の前へと連れて行くと、手をつかせ尻を突き出させた。

「待って、今イッたばかり……」

「テメーは黙ってろ」

沖田はそう言って再び神楽の中へ入ると、背後から手を伸ばし神楽の乳房を強く掴んだ。そして乳首を摘みながら腰を打ち付けたのだ。その刺激に神楽はまたしてもだらしのない顔を見せる。それが鏡に映り、薄明かりの中でもはっきりと浮かび上がっていた。

「いやっ、こんなのッ、私じゃ……」

「よく見てみろよ。どっからどう見てもちんぽ好きな淫乱メス豚女だろ」

恍惚の表情を浮かべ、沖田に背後から串刺しされている。それを悦んで受け入れる体はもう以前の神楽ではなかった。その表情もその声もその瞳も全て。

沖田の手が口へと移動し、口の中の舌を引っ張り出す。それを嫌がらず涎を垂らしながら神楽は後ろからズブズブと突かれていた。

「あひぃ、ぁ、はあん、あ、あ」

「また締まって……イク時はちゃんと謝りながらイけよ」

沖田に尻の肉を開かれ、神楽は震える膝で鏡の自分に口づけするような体勢で突かれていた。熱い息で鏡が曇る。時折見える沖田の顔も興奮しているのか上気して映った。それが神楽を更に刺激し、肉棒を食いちぎるように膣が締まる。

「他人ちんぽで、ぁん、あ、イッちゃう、イク、銀ちゃん……ごめん、ごめんね、んひッッ!」

もう戻れない。堕落していく自分を目に映しながら神楽は何度も絶頂を迎え、イク度に謝った。その謝罪になんの意味もない事を知りながらも、膣で他人の肉棒を扱くことに罪悪感はあったのだ。それなのに止めることが出来ない。

ベッドの上で仰向けの神楽に覆いかぶさる沖田。二人は全身汗だくになりながら、舌を絡め唾液を交換し、そしてそのカラダを一つに重ねていた。

「ハァハァ、んちゅ、レロ、ぁん」

全身で繋がっていてもまだ足りない。神楽は腰を浮かせると自分でヘコヘコと動かして、肉棒を更に奥へと誘った。互いの唇はすっかりと充血しており、そこに愛がない事が不思議に思えるほどに熱く絡み合っている。

「もうっ、ダメっ、またイッちゃう!」

神楽が沖田の背中に爪を立てると、沖田は子宮を揺さぶるようにピストンした。もう何度も失神しているのだが、沖田はその動きを止めず神楽はその度に狂ったように乱れていた。

「いっ、あっ、イグっ、うっ、う!」

衰えをしらない肉棒が出たり入ったりと繰り返し、神楽の膣穴がヌルヌルした愛液を溢れさせる。そのせいで滑りが増し、神楽はつま先に力を入れながら快感をその身に受けた。声も出せず、ただ膣だけがキュウっと締まり、絶頂に達する。頭は真っ白になり、意識が飛ぶ。それでも沖田の動きは止まらず、またしても襲い来る快感に引きずり起こされるのだ。

「ッ……ハァハァ、俺もイク……」

そう言って沖田は神楽から離れようとした。しかし神楽の体はしっかりと沖田をホールドし、離そうとしないのだ。

「やだっ、やだぁ、おちんぽ、ズボズボやめないでッ」

「俺の種で……孕んでいいのか……」

「いいッ、中で出していいから、やめないでッッ!」

沖田はその言葉通りパンパンに膨らんだ肉棒で突きまくった。そして遂に暴発してしまうと膣内に大量の精液が注ぎ込まれたのだ。

「ひゃぁ、あン、熱いッ」

ゆっくりと肉棒を引き抜けば、膣から溢れ出した精液が尻の下まで流れ落ちた。コポコポと音がする程に大量に濃い精液が注がれたようなのだ。それをぐったりとした神楽は指にすくうとこれが現実であると理解した。

「私、どうしよう……なんで……」

「今更そう言うな。見てみろよ」

沖田は神楽の隣に倒れ込むと、膣内に指を入れ精液を掻き出した。

「まだ吸い付いてくるなんて、テメーの体はどうなってんでィ」

「うるさい……」

沖田がニヤリと笑った。

「さっきまで俺の咥えながら、中出しをせがんでた女とは思えねぇな」

顔が熱くなった。そんな言い方されると、ほらまた……神楽の中から流れ出す精液に甘い蜜が混じった。

「またイクのか。だらしねぇ」

「やめて、よ……」

その後、二人は何度も一つに重なり溶け合った。散々貪り合い、汚し合い、罵り合いながら。そこに愛は存在しない。あるのは誰にも言えない秘密の共有だけである。