これは、愛じゃない

 

三日目

 

銀時に会いたい。そんな思いの中、目を覚ました。昨日のクスリはすっかりと抜けていて、今はまだガスを嗅がされていない。このタイミングしかないと神楽は銀時の元へと向かおうした。そんな時、モニターに男の姿が現れた。

「タイミング惡すぎ!」

きっとガスを嗅がされる。そうなれば銀時に会いに行くことは出来ないのだ。神楽はふくれっ面でモニターを睨みつけると、男が何か考え込んでいるように見えた。そして、ある提案をして来たのだ。

「神楽様、今から夜九時までは自由時間としましょう。その代わり夜九時にはお部屋に戻って頂きガスを嗅いでもらいます」

「本当に?」

「はい、どうぞ銀時様と久々にゆっくりお過ごし下さい……」

神楽は喜んで部屋から出ると銀時の元へと向かった。ご機嫌に鼻歌交じりにノックをして、そして銀時の顔が覗く。

「今日は大丈夫なのか?」

心配そうな銀時の顔。神楽はニコリと微笑むと自由時間をもらった事を話した。その言葉に銀時もホッと息をつくと神楽を部屋へと招き入れたのだ。しかし、神楽の部屋のモニターはまだ男を映したままであった。

「まだお話の途中だったのですが困りましたね。夜九時以降は神楽様の部屋に沖田様を招き、朝まで過ごして頂くことが条件なのですが」

そんな条件など知らない神楽は、この日久々に銀時とゆっくり時間を過ごした。二人でゴロゴロとベッドに転がり、お腹が空けば食事をし、テレビを観たり、ゲームをしたり。性的な関係になくても二人だけの時間は素敵なものであった。神楽はそう信じていた。

「なぁ、神楽」

ベッドで横になりながら二人はテレビを観ていた。すると銀時がいやに真面目な声音で話し始めたのだ。

「お前とはなんつうか、ただの男女以上に繋がってるって俺は思ってんだよ」

神楽は黙ってその言葉を聞いた。

「セックスとか、まぁそりゃ出来るなら……したいけど、けど! そうじゃなくて例えば……」

思わず笑ってしまいそうだったが、銀時が真剣であるのだからここは我慢した。

「今みたいな状況とか、セックス出来ない体になったとして、それでもお前とはずっと繋がってたいって思うんだよ」

神楽はリモコンでテレビの電源を消すと銀時の方へ体を向けた。

「……銀ちゃん、私も同じ気持ちよ。体じゃなくてここ、分かる? ここで銀ちゃんを好きなの」

神楽はそう言って銀時の手を自分の胸へと押し当てた。すると銀時の顔がみるみるうちに赤くなり、そしてそっぽを向いた。

「だあああああ! 分かったから離せ!」

照れているのは胸に触れたと言うこともあるだろうが、きっと神楽の言葉に何よりも照れているのだろう。神楽は江戸に戻ったらたくさん愛の言葉を伝えて、その体にも教えようと思った。

「じゃあ、そろそろ九時だから戻るわ」

「もうそんな時間か」

「本当はずっと一緒にいたいけど……」

名残惜しいのは神楽だけではない。銀時も同じように寂しそうな表情をしていた。

「よ、よし、一回だけ……来い」

銀時は神楽に向かって両手を広げた。それは抱きついていいと言う合図なのだろう。神楽は嬉しくなって勢い良く飛びつくと、銀時が強く強く体を抱きしめた。

「何度も言うけど、金の為だけじゃねえから。本当にキツくなったら言えよ」

嬉しい言葉。神楽は子供のような顔つきになると力強く頷いた。そして体をゆっくりと離し、銀時におやすみと言った。

「次、いつ会えるかわかんねーからお前に言っておくわ」

銀時の口が小さく動く。

「愛してる」

「銀ちゃん……」

神楽は目に薄っすらと涙を浮かべ頷くと静かに部屋から出て行った。好きな気持ちがどんどん溢れていく。それなのに穏やかで静かなのだ。激しい愛情とは違って、心をじわじわと温めていく。これが愛なのだと神楽は確信した。そして何があってもこの気持ちだけは失いたくないと思ったのだ。

神楽は部屋へ戻ると今夜は良い夢が見れそうだと嬉しくなった。そうしてシャワーを浴びてミニ丈のチャイナドレスをパジャマ代わりに着ると――――――ガスを嗅がされた。

「待って! どういうこと!」

するとモニターに男が映り、今朝は会話の途中で神楽が出て行ったことを話したのだ。九時まで自由時間を許すには条件があり、一晩沖田とこの部屋で過ごすことだと。神楽の顔色が青白いものへと変わり、幸せに満ちていた心は音を立てて崩れ去った。

「あの男と一晩なんて……そんなの……」

「ではここで中止となりますが宜しいでしょうか?」

その一言に神楽は反発しても無理であることを思い出した。首を横へ振るとモニターから男が消えた。そしてしばらくして薄暗い部屋のドアが開き、沖田が入って来たのだ。薄手の浴衣を着ていて、小脇に枕を抱えている。しかし神楽には分かっていた。沖田が大人しく寝る筈ないのだと。

「なんで俺がテメーと寝なきゃならねーんでィ」

「それはこっちのセリフよ」

沖田は神楽の隣に枕を置くと横たわった。神楽の体が火照り始める。

「寝相悪かったらベッドから突き落とすからな」

沖田はそう言うと神楽に背を向け動かなくなった。あまりにもあっさりとしていて、神楽は動揺してしまった。いつもなら馴れ馴れしく体を触ってくるのだ。しかし、今日は全く興味がないとでも言うように背中を向けている。これは良いことなのだ。神楽はそう思っている筈なのに、体は泣いていた。先程変えたばかりの下着が汚れ始める。神楽も沖田に背を向けると熱い体を無視して眠ろうと目蓋を閉じた。銀時との楽しい思い出がある。今日は、今夜だけは大人しく眠りたかった。しかし、疼く体にじっとはしていられないのだ。神楽は薄手のチャイナドレスの上から胸を弄った。軽く揉んで、そして先っちょを指でつつく。すぐにそれは反応を見せて硬く尖っていく。それを指で摘めば呼吸が僅かに乱れた。下着の中はと言えば、蒸れ始めており、ヌルヌルと愛液が割れ目の外へと流れ出す。神楽はチャイナドレスのボタンを外すと服の中へと手を入れた。ひんやりした自分の指先が乳首に触れる。それを擦りながら静かに静かに神楽は快感を得ていく。息を押し殺して、唇を閉じたまま。もう片方の手はゆっくりとショーツの中へと入り、クチュっと軽くクリトリスを弄る。それを軽く擦りながら胸も同時に刺激を与える。いつもなら声を漏らし、脚を大きく開いて気持ちのよいポイントを探り当てるのだが今夜は背後に沖田が居る。バレないように静かに、小さな動きでどうにか身を鎮めようとしていた。

「ハァ、ハァ……ふぅ……」

それでも乱れていく呼吸は隠しきれない。どんなに我慢しても静かな部屋では隣の沖田にも聞こえていることだろう。お願いだから眠っていて欲しい。祈りながら神楽は自慰に耽った。

気付けばショーツは足首にまで下りており、胸元からは大きな乳房がツンとはみ出ていた。膝を立て開かれた脚。次第に指は割れ目の中を掻き分け、奥へと差し込まれる。それを膣穴は喜んでチュウチュウと吸った。ぎこちない手つきで刺激を与える。

「ん、ふぅ、ん、ん……」

もうすぐで軽い絶頂が訪れる。ビチャビチャと音が立ち、乳首の先も尖っていく。神楽はビクンと軽く跳ねると歯を悔いしまって体を震わせイッた。しかし、いつもこれだけでは満足出来ず二回、三回、四回と数を重ねるのだ。それで疲れて眠るだけで、満たされているわけではない。神楽は膣から指を抜くと冷静になる頭で考えた。どうすれば満足出来るのか。まだ膣はヒクヒクと何かを求めていて、愛液も止めどなく流れ出ていく。火照りも引くことはなく――――――次の瞬間、神楽は膣に入れられた何かに驚き、そしてあまりにも大きな快感に状況を忘れて声を出した。

「あぁッ、いッ、気持ちい、あっ、ん、ああッ!」

ジュブジュブと繰り返し差し込まれるものが神楽の今まで届かなかった奥まで刺激を与え、そして想定出来ない動きに腰が浮くと思わず自分でヘコヘコと動かしてしまった。

「い、く、イク……んあああッ!」

ビクビクっと体が揺れて、何が起きたのか判断出来ずに呆然と体を横たわさせた。そして気付く。自分以外の人間の熱に。ズルリと穴から引き抜かれたもの。それは沖田の指であったのだ。衝撃であった。殴られたような痛み。それが心に広がったのだ。

「バレてねーとでも思ったのか」

沖田は神楽に覆いかぶさるようにこちらを見ていた。薄暗いが嘲笑うようなニヤけた面が目に浮かぶ。最悪だ。この男の接触を許し、快感を与えられ、そして絶頂を迎えてしまったのだ。それも情けない声を上げて。

「こっちはガス嗅がされてんの。仕方ないじゃない」

「誰もやるなって言ってねーだろ。どうせやるならスケベなメス犬らしくちゃんとやれって言ってんでィ」

悔しい。否定できないからだ。神楽は起き上がろうとして沖田に押さえつけられた。

「俺の指が気持ちよかったんだろ? テメーの指の時との反応の違いはどう説明すんでィ。素直に認めたらどうだ」

「不意打ちだっただけで、あんたの指に感じたわけじゃないんだから」

自分の指で届かなかった奥の方まで強い快感が得られたことは確かである。しかし沖田が相手だからではない。それだけはハッキリと言える。

「そうまで言うなら賭けろ」

沖田は神楽の乳房を鷲掴むと強めに揉んだ。思わず顔が歪む。

「俺の指でイったら、一晩俺の命令に従う」

「……イカなかったら、あんたは私に従う」

沖田は良いだろうと了承した。途端に不安襲われた。何故こんなことに意地を張ったのだろう。いくら体が強い刺激に絶頂を迎えたと言っても、クスリの効果が切れたとは思えない。まだジンジンと体が熱い。神楽は力の入らない体を沖田に引き寄せられた。

「判定は変態野郎が勝手にするだろう。この部屋を見てるだろーからな」

その沖田の言葉に部屋が明るくなった。神楽ははだけたチャイナドレスからはみ出た胸と、足首にかかったままのショーツ、パックリと開いた割れ目から思わず顔を背けた。なんて格好なのだろう。それを沖田が見ていて、いや見ているだけではなく指が割れ目をなぞっている。動きが早くなるとビチャビチャと卑猥な音が聞こえ、シーツを掴む手に力が加わった。気持ちよさを感じているのだ。クリトリスと割れ目を乱暴に雑に撫でられているだけなのに、それなのに奥から愛液が溢れてくる。

「テメー、本当にこれで勝てると思ってんのかよ」

「うっ、るさ、い……」

神楽は息も切れ切れにそう言うと下唇を噛み締めた。するとニュルと沖田の指が中へと侵入し、奥へと進んでいく。

「くっ、う……」

ゆっくりと奥まで到達し、中指が見事に飲み込まれていた。

「もうキュウキュウ締まってらァ」

「だッ、黙って!」

神楽は目をキツく閉じたが沖田がそれを許さなかった。

「目は口程に物言うって言うだろ? 次、目を閉じた時点でイッたとみなす」

「そんなルール聞いてないんだけ……いやッ、あ!」

沖田の指が突然動かされた。神楽はズルズルと膣へ出入りする指に体をビクっと震わせた。気持ちいい。脳が溶けそうな程に気持ちいいのだ。だが沖田にそれを悟られてはいけない。ようはイッた事がバレなければ良いのだ。神楽はガタガタと歯を震わせながら、涙を溜める目で必死に堪えていた。指が奥で不規則な動きを見せる。足先に力が入り、背中が仰け反る。それでも声も出さず、部屋には神楽の膣からビチャビチャとした音だけが響いていた。

「ここ、好きだろ? 締まるからすぐ分かる」

そう言って沖田は神楽の入り口付近を素早く擦った。

「ん、ぐッ! ひッ、い!」

それでも必死に声だけは堪えた。白目を剥きながら膣が沖田の指をキュウっと締めるも神楽は体をビクつかせるだけで決して喘いだりしなかった。沖田の指の動きがようやく止まる。

「……あん、たの指で、い、イクわけないって、これで分かったでしょ?」

沖田は何も答えなかった。負けを認めたのだろう。そう思っていたのも束の間、沖田は神楽に二本目の指を差し込むと、とろとろになった膣内を掻き乱したのだ。

「や、やめッ、て! イッたの! 今イッたばかりぃいい!」

神楽はシーツを両手で強く掴みながら、背中を大きく弓なりに反らせた。そして腰を浮かし、沖田の指を奥の奥まで飲み込んだのだ。愛液がピュピュと吹き出す。

「ンぁ、やめでぇ……いぎッたぐっ、ないッ!」

しかし堪えきれず神楽は大きな胸を揺らしながら派手に絶頂に達したのだ。涙は溢れ、愛液はシーツに大きなシミを作った。肩で呼吸するのがやっとで、こちらを覗き込む沖田に焦点を合わせることもできなかった。

「こうもあっさり勝てちゃつまんねーな」

神楽にとってこの勝負はあっさりではなかった。必死に我慢したつもりなのだ。だが、興奮剤を嗅がされた身では不利である。神楽は身なりを整え、ゆっくりと体を起こすと枕を沖田に投げつけた。

「八つ当たりかよ」

「こっちはクスリ嗅がされてんの。あんたも同じ条件で勝負しなさいよ」

「俺はテメーらに巻き込まれた被害者ってこと忘れたのか」

その言葉に改めて沖田のことを考えたのだ。突然江戸から連れて来られたのは同じだが、沖田にも何か報酬が出るのだろうか。なんのメリットもない実験に付き合わされるなど理不尽もいいところだ。

「あんたもお金もらえるんでしょ?」

「それよりも一晩俺の命令に従う約束、覚えてるだろーな」

またあの犬の格好をさせられるのだろうか。それとも口での奉仕か。浴衣を脱いだ沖田が神楽へと近づく。そして口づけた。いつも思う。沖田のキスはその強引な愛撫とは対照的に丁寧で優しいと。神楽はそれが嫌で肩を押して体を離した。感情の読めない目が神楽を見る。

「ちょっと、なによ!」

「そんなにイヤなら、俺のXXXしゃぶりながら謝れ」

「なんで謝らなきゃ……」

しかし、沖田とのこの約束を守らなければ何をされるかは分かっている。神楽はベッドから下ろされると、縁に腰掛けた沖田の脚の間に座らされた。下着を押し上げている熱の塊はひどく膨張している。神楽は沖田の肉棒の熱さを思い出すと再び秘部を潤ませた。

「ほら、早くしろ」

頭を押さえられ下着から出てきた肉棒に頬を押し付けられた。自分の体を見てこんなに興奮しているのだ。感情的に見えないこの男にも欲情する心はあることが未だに信じられないでいた。

「口開けろ」

喉の奥まで熱が行き届き、粘膜が擦れる。能動的に動かす口。頭を上下させ沖田の男根をしゃぶりあげる。

「ちゃんとこっち見てしゃぶれよ」

神楽は沖田を睨みつけた。だが沖田の手は神楽の髪を掻き上げ、愛しそうにこちらを見たのだ。調子が狂う。こんなことをさせ、謝れなんて言う癖になんて顔をするんだろう。謝る気なんてなかったが、こんな顔を見せられると神楽の心が僅かにくすぐられた。

「ごめん、なひゃい……」

「そうじゃねーだろ。旦那になんて謝んだよ」

「ぎんひゃん?」

神楽は沖田の股ぐらに顔を突っ込み、他人の肉棒をしゃぶりながら膣をひくつかせているのだ。神楽は途端に涙目になると沖田の亀頭を頬張り、頬の形を卑猥にも変えながら言った。

「ほかの、ひとのおひんひん、しゃぶってごめんなさい」

「それだけか?」

神楽はジュブジュブと音を立てて吸い上げると、舌を絡めながら言った。

「いやなのに、ことわれなくて、ごめんなひゃい」

口の中を肉棒が擦れば擦るだけ気分が高まっていく。割れ目からは涎が流れ落ち、乳首は痛いくらいに尖っていた。神楽は謝った。銀時以外の男の肉棒に舌を這わせていることや命令に背けないこと、そしてしゃぶりながら興奮してしまっていることを涙ながらに謝った。

「他人棒しゃぶりながらあそこ濡らしてるメス犬じゃ、旦那も浮かばれねーな」

「ぎんひゃん、ごめんなはい、じゅるっ……ごめんなひゃい……じゅぶじゅぶっ、ごめんな、ひゃい……」

そうして沖田は絶頂に達すると神楽の口の中へ精液が注がれた。締まりのない口元から零れ落ちる沖田の欲望。それを汚いと拭うことも出来ないほどに神楽は力が抜け、放心状態になっていた。

「俺はもう寝る。テメーがひとりで盛ってても、もう襲わねェから好きにしろ」

沖田はそう言って一人ベッドに寝そべった。神楽はその言葉にゆっくりと立ち上がると後悔と自己嫌悪、そして罪悪感を洗い流す為にシャワーを浴びに向かうのだった。