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賽は投げられた:10

 

ベッドに寝かされた神楽は隣で横になっている銀八に一つ確認された。

 

「お前が望んでんのはマッサージだよな?」

 

神楽はくしゃくしゃのTシャツの裾を握るとうんと頷いた。

銀八はその返答に苦笑いを浮かべた。

 

「で、そのマッサージって一体どこまで?また胸揉んだらいいの?」

 

神楽もそんなことは全くと言って良いほど分からなかった。

だってキスまでしちゃったネ。

神楽は先ほどまでの行為を思い出すと顔が熱くなった。

 

銀八と過ごす日が増えれば増えるほど、自分が淫らになっていくのが分かった。

今日なんかは銀八の体全てを知ってしまった気分だった。

こんな先生を知ってるのは私だけ?

神楽は急に不安になった。

 

「銀ちゃんって、えっとぉ銀ちゃんって……」

 

私以外の人とはこんな事をしてないの?

そう尋ねたかったのに、勇気の出なかった神楽は別の事を尋ねた。

 

「今日はなんで電話してきたアルカ?」

 

その質問に銀八は体を起こした。

 

「ちょっと風呂入って来るわ」

 

そう言って逃げようとした銀八に、神楽は待てヨとそのたくましい腕を捕まえた。

 

「だったら一緒に入るアル」

 

神楽は赤い顔で大胆な事を言うと、銀八は驚いた表情でそれを見ていた。

 

 

 

「結局こうなるんだから、お前は待ってろって言ったのに」

「じゃあ、それ止めてヨ!」

 

裸になった2人は狭い風呂場で息を荒くして、酸素を奪い合っていた。

泡にまみれた神楽の胸を背後から手で洗っている銀八は、壁に両手をついている神楽の尻に自分の再勃起したモノを擦り付けていた。

ボディーソープのせいでよく滑り、2人ともが苦悶の表情を浮かべていた。

 

「そういや、なんで電話したか知りたいか?」

 

神楽がフゥフゥ言いながら頷くと、銀八の手が神楽の胸から下腹部へと流れた。

すると、神楽はポタポタと体液を滴らせ、少し股を開いた。

その隙を突いて銀八の硬いモノが神楽の割れ目をなぞれば、2人の呼吸は更に浅いものへと変わった。

 

「お前がさ、あんまりにも切ない顔するから、あのまま関係を終らせるのはどうかと思って」

「嘘アル。銀ちゃんの方が切ない顔してたヨ。こういう事したかったのに我慢してたダロ」

 

銀八は壁に必死で両手をついている神楽を後ろから抱き締めた。

そして、割れ目に熱い性器を擦り付けると、神楽の中に入りたいと腰を動かした。

 

「銀ちゃん!ダメアル!」

「なんで?もう、ほら」

 

銀八は神楽の柔らかく濡れている割れ目に自分の硬いモノを押し付けると、ヌルっと先っぽが押し入った。

 

「抜いてヨ!だって、ダメアル!」

 

神楽がそう言って尻を振るも、体は望んでるようで徐々にズブズブと奥へ進んで行く。

このままじゃ本当に入っちゃう。

恋人でもないのにダメ!

 

神楽は半泣きになると銀八に尋ねた。

 

「私たち、なんでこんな事してるアルカ?」

 

しかし、銀八は答える前に神楽の腰を両手で掴むと、一気に腰を打ち付けた。

神楽の中が銀八でいっぱいになった。

それが気持ち好くて、ずっとこれを待っていて、神楽は口から唾液を滴ながら、声にならない声を上げた。

しかし、銀八は神楽に背後からキスをすると、その声が出ないようにと塞いでしまった。

舌が絡み合って、体も繋がって、神楽は脳みそが溶けてしまいそうな快感にもう全てがどうでもよくなった。

自分と銀八の関係だとか、胸が人よりどうとか、ナマでしちゃってるとか。

全てを考えない事にした。

ただ銀八に突かれながら、神楽は快感に身を任せた。

 

時折、銀八の唇が神楽の唇から離れると耳元で何かを囁いていた。

 

「可愛い」

 

神楽にはそう聞こえていた。

それが恥ずかしくて神楽は何も答えられなかった。

可愛いなんて今まで一度だって言われた事がない。

本心で言ってるのか冗談なのか。

神楽にはもう何も分からなかった。

 

「マジで可愛い」

 

もう、何度目だろうか。

神楽は恥ずかしそうに首を振った。

それを見た銀八は神楽の腕を掴むと、更に一段と激しく腰を動かした。

熱くなるカラダ。

意識はどんどんと薄くなる。

神楽はもうダメと言葉を発すると、体を震わせ立っていられなくなった。

 

 

 

神楽は気が付くと銀八のベッドの上で休んでいた。

銀八は隣の部屋にいるようだったが、神楽は体のダルさに起き上がることが出来なかった。

枕元のケータイを見れば0時を回っていて、この部屋に来た時からだいぶ時間が経っていることを知った。

 

結局、最後までヤってしまった。

神楽は銀八と体を重ねたことについて考えていた。

好きな人とこういう関係になれたのは嬉しいはずなのに、全然そんな気分じゃなかった。

やっぱりああは言ったけど、好きだと言われたいし大切にされたかった。

 

神楽はぼんやりと暗闇を見ていた。

そう言えば、雨の音は聞こえない。

もう止んだのだろうか?

どうしても気になった神楽は無理に体を起こすと、この部屋の窓辺へ立った。

 

「今なら帰れるネ」

 

神楽は窓の外の様子に家に帰ろうかと思った。

ここに居ると色々気が休まらない。

自分の部屋でゆっくりと眠りたかった。

だけど、着るものはまだ乾いておらず、さすがにこのまま外に出るわけにもいかないと、やはり当初の予定通りこの部屋で一晩過ごすことにした。

 

ベッドへ戻り横になるが、なかなか寝付けなかった。

銀八が自分をどう思ってるのか、知りたくて堪らなかった。

胸はとても苦しく、息がつまる。

自分は全部与えてしまったが、銀八は遊びのつもりかもしれない。

そう思うと悔しくて悲しくてどうしようもなかった。

やっぱり言ってしまおう。

好きだって。

そして、ちゃんと聞きたい。

私をどう思ってるのかを。

 

神楽は意を決すると、銀八が寝てるであろうリビングを襖の隙間から覗き見た。

すると、まだ銀八は起きているらしく、窓際のイスに座って煙草を吸っていた。

神楽は襖を開けると銀八に声を掛けた。

 

「眠れないアル」

 

すると、銀八はくるりとイスを回転させて神楽を見た。

 

「じゃあ、眠くなるまで起きとけよ」

 

神楽はうんと頷くと、銀八へと近寄った。

 

「ストップ。神楽、こっちくんな」

 

銀八は焦ったようにそう言うと、神楽を追い返すように手を払った。

神楽はそんな銀八の態度に目に涙を浮かべた。

やっぱりこのカラダだけなんだ。

銀ちゃんの欲求が満たされれば、私に用はない。

神楽は顔を両手で覆うと、その場にしゃがみ込んだ。

 

「は?神楽?」

 

銀八は煙草を急いで消すと神楽に駆け寄った。

明らかに泣いている神楽に銀八は慌てると、一緒になってしゃがみ込んだ。

 

「え?神楽?なに?先生が悪いの?どうした」

 

神楽は涙でぐちゃぐちゃの顔を上げると、銀八の胸ぐらを掴んだ。

言わなくちゃ。

こんなに苦しいのは誰のせいか教えなくちゃ。

 

神楽は止まらない涙に視界がボヤけていたが、銀八の目を見てはっきりと言った。

 

「私を好きじゃなくても良いなんて言ったけど、本当は銀ちゃんのカノジョになりたかったヨ!私だけが特別になりたかったアル!だって私、私……」

 

神楽は銀八の胸ぐらから手を離すと涙を拭いた。

銀八は険しい表情で神楽を見ている。

だけど、それに負けたらダメだ。

もう賽は投げられたのだから。

 

「私、銀ちゃんが好きアル」

 

神楽はようやく口に出せたことに胸の支えが取れると、一気に体が軽くなった。

だけど、まだあと一つ聞かなきゃいけない事があった。

 

「銀ちゃんは私をどう思ってるアルカ?ちゃんと聞きたいネ。どんな結果でも受け入れるから」

 

銀八は頭を掻くと少し考えていた。

その表情は面倒臭そうで、鬱陶しそうで、何だか神楽を不安にさせた。

待ってる時間がすごく長く感じて、神楽は胸が押し潰されそうだった。

覚悟は決まっていたが、傷付く事を望んでいるわけではなかった。

 

「なんつーか、お前はバカだよな」

 

神楽は銀八のその言葉に大きな目を更に大きくした。

 

「知ってんの?俺の嫉妬深さ。沖田と付き合ってるって噂に、どうにか奪えねぇかとか思ったりしてよ」

 

神楽は銀八の言葉に自分の耳を疑った。

そして、その言葉に期待して神楽の冷たかった体がまた熱を帯び始めた。

 

「お前が俺のものになれば良いなとは思ったよ?だけどな、そうなったら毎日学校でお前を監視して、束縛しそうな気がして――」

 

だから、付き合うことは諦めたと銀八は言った。

誰と神楽が仲良くしようが勝手なのに、俺はそれを望ましく思わない。

神楽は銀八の想いを初めて知り、それを汲めなかった自分はまだまだ子供だと恥ずかしく思った。

 

「なのにお前との関係は深くなって行くし、お前も全然嫌がんねぇし。ただどうにか一線を越えない努力はしたよ?俺じゃなかったら、お前絶対保健室の時点でヤられてたからな」

 

神楽はうんと頷くと、銀八の頭を撫でてやった。

すると銀八は呆然と神楽の顔を見つめていた。

 

「お前のそう言うのが良くねぇんだよ。結局、俺の頑張りを無駄にしやがって」

 

銀八は急に神楽を抱え上げると、不機嫌そうな顔で神楽を見た。

 

「今だってな、さっきのが不完全燃焼のせいで、またお前をどうにかしたくなるから近寄んなつったのに」

 

銀八は抱き上げた神楽に軽いキスをすると、寝室のベッドに神楽を寝かせた。

寝かされた神楽は、自分を上から見下ろしている銀八に柔らかく笑いかけた。

 

「私だって銀ちゃんが他の子と楽しそうだと嫉妬するアル」

「……いや、でもお前が思ってる以上に俺は嫉妬深いんだけど」

 

神楽は何でも良いよと言うと、銀八がベッドについている腕を引っ張った。

 

「だから、ちゃんと聞かせてヨ」

 

グッと近付いた2人の顔は早く引っ付きたいと疼いたが、言葉が出るまでは重ならないと神楽は首を振った。

 

「先に一回だけ」

「だめアル。言ってから」

 

銀八はハイハイとようやく諦めると、神楽に覆い被さったまま片手で抱きしめた。

 

「あー、えー、神楽ちゃんが誰よりも好きです。だから、もうヤバいって言うかなんて言うか……結婚してぇんだけど」

 

神楽は自分の首元に顔を埋めている銀八を驚いた表情で見つめた。

今のは聞き間違い?

カノジョじゃなくて、結婚って――

 

「ぷろっ、プロポーズ!?」

 

突然飛躍した関係に神楽は頭が追い付けなかった。

だけど、当の銀八は神楽の混乱よりも自分の体が問題だと、それどころではないようだった。

 

2013/06/15