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レディバード:15(神楽side)


 沖田は神楽の座っていた席の右隣に座ると神楽を見つめた。

「どうも俺達、別れたって話らしいな」

 にっと笑った沖田に神楽は、その皮肉めいた言葉に怒ればいいのかどんな態度を見せれば良いのか分からなかった。何せ準備など出来ていないのだ。

 神楽は椅子に座ると沖田に横顔を見せた。

「……それで? 何しに来たネ?」

 会いに来た理由として一番に考えられるのは、やはりこの関係に終止符を打つと言うこと。しかし、それだけで沖田が動くとも思えないのだ。この男に何の得もない。それなのにお登勢に頼んで自分に引き合わせてもらうなど、考えられない話であった。それならば会いに来た理由は他にあるのだ。それはやはり神楽を抱きたいと――――神楽は再び椅子から勢い良く立ち上がった。

「ば、場所考えろヨ!」

 そんな事を言った神楽に沖田は眉間にシワを寄せると軽く首を傾げた。

「あー悪りい。テメーの家知らねーから」

 そう言えば沖田に家を教えていなかった。どうりで会いに来ない筈だ。神楽は早とちりに恥ずかしくなると咳払いをして椅子に座った。

「で? 用件は何ネ?」

「それだが……何で来なくなった?」

 沖田の言葉に神楽は隣をチラリと見た。今の言い方ではまるで沖田が、神楽に会えない事に淋しさを覚えているような風であった。

 こいつが? そんな感想を抱いた神楽は、沖田に横顔を見せたままそれに答えた。

「仕事が忙しかったネ……」

 嘘ではないがきっとこれは沖田の知りたい答えではないだろう。神楽もそれは分かっていたが本当のことはなかなか口に出せなかった。会う度に抱かせる自分が嫌で、抱く癖に愛してると言わない沖田が嫌などとは。

「さっき言ってただろ。俺に会うのに勇気が必要だってな」

「そ、それは……」

 突破口が見つからない。あともう少しで向き合える所まで来ていると言うのに、横顔を見せ続けることしか出来ないのだ。このままでは本当に“もういいや”と投げ出されて終わってしまう。それで本当にいいのだろうか。神楽は自分に問い質した。沖田を盗み見ればジッとこちらを見ている。逃げることはそう簡単ではなさそうだった。神楽は一息吐くと、覚悟を決めて沖田の方へ向いたのだった。

「次にお前に会った時、この関係についてハッキリさせようって決めてたアル。だから……」

 すると沖田は声を出して笑った。少々バカにするような鼻につく笑い方だ。そんな無神経な態度に苛立って神楽は軽く睨みつけた。

「何がおかしいアルカ!」

「あんなにさらけ出せる癖にここん中見せるのは苦手か? 」

 沖田はそう言って神楽の胸の中心を指でつついた。確かにその通りだ。一言二言吐き出せば簡単に解決する問題なのに、言葉を紡ぐことは思いのほか難しい。以前は不自由ながらも、もっと上手く言葉を操れていた筈だ。それが肌を見せる回数が増えれば増えるほど、伝える事が下手になって行った。

「かく言う俺もテメーのことは言えた義理じゃねーけどな」

 そう言って沖田は頭の後ろで手を組むと、椅子をくるりと回転させ背中を見せた。いつからこうして簡単に背中を見せるようになったのだろう。神楽は広く頼もしい背中を見つめながらそんな事をふと考えた。前までならチャンスだと言わんばかりに飛び掛かったが今は――――好きだと言って抱きついてしまいたいのだ。

「正直言うと勝手に“そういう関係”だと俺は思い込んでたが……やっぱりアレか? 言葉がねーと始まんねェのか?」

「言われなきゃ分からんことは多いアル」

 神楽は心臓が徐々に大きな音を立てるのが分かった。先ほどまでは遠くの方で聞こえていたのだが、今では耳の中で煩く騒いでいるようだ。沖田に期待しているのだ。望む言葉が聞けるのではないかと。

 沖田はそんな赤い顔の神楽を首だけで見ると軽く笑った。

「なら俺も言うぜィ。言われなきゃわかんねーことは多いってな」

 つまり言われたかったら先にテメーが言えと言うことなのだろう。神楽は待ってよと立ち上がると沖田の正面に回った。

「な、ななななんで私が先に言わなきゃならないアルカ! お前が先に言えヨ!」

「なんて言や良いんでィ? パターンが色々あんだろ?」

 そう言われると確かに――――――好きだと簡単にもっとも分かりやすく言われるのが良いのか、心の底から溢れる気持ちを愛してると言う言葉に詰めるのが良いのか、他には付き合って下さい等の関係の始まりを申し出るのか。告白にも種類はあった。

「三パターン思いつくが……どれが良い?」

 神楽はどれも全て聞いてみたい気もしたがそんな事はさすがに言えないと色々考えた挙句に二番目を選んだ。すると沖田は椅子から立ち上がり神楽の両肩に手を置いた。それには神楽も息を飲む。

「じゃあ、言うからな。ちゃんと聞いとけよ」

 神楽は静かに頷くと震える体に奥歯を噛み締めた。

「神楽。俺の濃い○△*%ミルクをお前の熱い□★の奥で受け止めてくれ!」

 神楽は作った拳を沖田の喉めがけて押し込んだ。するとグエっと変な声を出して床に倒れた。しかしそれだけでは済まない。神楽は倒れた沖田に馬乗りになると――――キスされたのだった。久々に唇に伝わる沖田の熱。今も怒っていて殴ってしまいたいのに力が抜ける。弱点を突くなんて卑怯だと神楽は沖田に余計に腹が立った。しかし沖田は逃がさまいと神楽の後頭部を押さえて更に唇は密着した。そうして隙間から舌が挿し込まれて、あっという間に神楽は侵入されてしまったのだ。でも、これじゃダメ。また流されて有耶無耶になってしまう。神楽はなんとか唇を離すと沖田の首に巻いてあるスカーフを掴んだのだった。

「ふざけるのも……んッ!」

 しかし、また直ぐに口は塞がれてしまった。せっかく我慢して離れたと言うのに、こんなに求められると神楽も気が削がれてしまう。このままでは沖田の勢いに押され、タイミングを失ってしまいそうだ。神楽は再度沖田から離れた。

「もうっ何でアルッ……」

 でもやはり沖田の口づけは止まらない。頭が痺れて理性もどんどん薄れていく。神楽は溶け出す脳に、もうどうにでもなれと思い始めていた。ここがどこだとか、何をしなければならないだとか、恥ずかしいことだとか。神楽は沖田の舌に自分のモノを絡めると鼻にかかった甘い声を上げてしまった。

 もう限界……そう思った時だった。ようやく沖田の唇が大人しくなったのだ。ゆっくり離れる唇。そして溶けそうな程に熱を帯びている目と目が合う。

「好きだ、神楽」

 その言葉に胸が震え、涙が溢れそうだった。しかし神楽も言わなければならない。大切な言葉を。

「総悟……」

 神楽は息を吸い込むとゆっくり吐き出した。そして沖田に頭突きを食らわせるとメンチを切った。

「お前! 毎回毎回毎回何で中出しするアルカ! せめて先に告白しろヨ! 順序が逆ダロッ!」

 そう叫ぶと神楽はスッキリとした表情になった。そして目を回している沖田の赤い額に口づけすると小さな声で言ったのだった。

「大好きアル」

 白雪姫さながら沖田はキッスで目覚めると神楽に薄笑いを浮かべた。

「覚えてねーのか? 赤ちゃん出来ても良いから中に出してって言ったのはテメーだろ」

「は、はぁああ? 言ってないアル! え? 言ってないよネ? あれ? 言ってないデショ!」

 泣きそうな顔で慌てる神楽に沖田はまた口づけをした。

「ったく迷惑な話だね。仲が良すぎるってのもさ」

まさか店の外でお登勢が、入るに入れず困っていると考えもしない二人はキスに夢中になるのだった。


2014/09/10


:おまけ:

 薄暗い部屋に荒い息遣い。全裸の男女は愛と言う免罪符を手に入れて、禁断の果実に手を伸ばす。と言えば随分と崇高な様に聞こえるが実際はただのセックスである。布団の上で後ろ手をついて神楽に奉仕してもらっている沖田と、従順なメス豚の如く跪く神楽。剥がれかけの紅の着いた口はソレを懸命に頬張っていた。

「悪くねぇが……そのでかい胸も使えよ……」

 偉そうに沖田がそう言うと、神楽は上も下もヨダレを垂らしながら応えるのだった。熱い舌が沖田の肉体を舐め上げる。かと思えば柔らかなものに挟まれてシゴかれ弄られ……それだけで神楽を二回は孕ませることが出来そうな程の精液が搾り取られた。だが沖田のソレはまだ収まらない。神楽の中に挿れるまで終わらせるつもりはないのだ。

「もう良い。尻をこっちに向けろ。それで懇願しろ。いつもみてーにな」

 沖田が意地悪く不敵に笑うと、神楽は四つ這いになってこちらを睨みつけながらも息を荒くしていた。

「……そ、総悟様のふ、太くて固い○△*%を神楽のイケナイずぶ濡れ○△*%に挿れて下さいアル」

「上手く言えるようになったじゃねーか」

 そう言って沖田は獣の交尾のように下品にも後ろから神楽に重なると、一気に根元までブチ込んだ。神楽が咆哮のような啼き声を上げて軽く仰け反る。余程欲しかったのかグイグイと呑み込んで離そうとはしなかった。それが堪らなくて沖田は神楽の乳房に手を伸ばすと、それを揉みしだきながら腰を振った。

「そ、総悟様ァ」

 神楽の甘い声は部屋いっぱいに響き渡り、沖田の欲情を更に煽る。沖田は沸騰しそうな頭と身体ではあったが、目の前の神楽について考えていた。こんなにいい女は他にはいなくて、何が何でも手放したくないのだ。ただ言葉でそれを表現出来ず、ましてやプレイでも上手く伝えられない。それでも沖田は愛しているという想いを込めて突き上げるのだった。

「も、もう……イっちゃうアル……」

「誰がイっても良いって言った? 俺が許可するまでは勝手にイくんじゃねェ」

 沖田は意地悪くそう言うと神楽の尻を強く叩いた。すると神楽の中が締まり更に滑りが良くなった。

「とんだスケベなメス豚でィ」

 「ひぎッ!」

 二人は正に獣のようであった。汁を撒き散らし欲望のままに互いの肉体を貪り食う。しかし、それもいつまでもは続かない。沖田にも限界が来ていた。体位を正常位へ変えると二人の顔がようやく向き合った。こうなると後はフィニッシュまで一直線だ。それを神楽は分かっているのか、脚を使って沖田の体をホールドした。

「あ、あッ……駄目アル……このまま」

「おい、神楽! 何やってんでィ!」

 しかし、神楽は離れない。さすがに夜兎の力には沖田でさえも敵いそうにはないのだ。

「いやァ! 赤ちゃん出来ても良いから……お願い、中に射精してヨ!」

 沖田はもうどうにでもなれと、そのまま神楽の中へ注いだのだった。どうせ嫁にもらう気はあるのだから――――


 沖田は汗だくで目を覚ました。今、なんだかすごい夢を見ていた気がするのだ。いや、間違いなく見ていた。その証拠に下着の中が大惨事であったのだ。

「ヤベ、嘘だろ……やっちまった!」

 この日、沖田はずっと会えていない神楽に何が何でも会おうと決めると、お登勢の店に行くのだった。


2014/09/10