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原作設定 14歳 R18 銀時へ片思い
ひょんなことからH→段々二人は結ばれる純愛
その前に/銀神(リクエスト)
酔いに任せたのだろうか。神楽には分からない。ただ、たとえそうであっても拒否しなかったのだ。銀時を受け入れた。白い脚がブラブラと揺れ、天井と銀時とを交互に見比べていた。だが、薄暗い室内では銀時の表情を知ることは出来ない。
《誰かと間違えた》
それでも良い。この体を今だけは愛して、抱いてくれるのならそれでも良い。初めての夜に神楽はもう子どもへは戻れない事を知った。味わう大人の熱。溶けて、このまま銀時と一つに……本当に一つになれたら良いのに。そんな思いを抱きながら、体を揺らした。初めて男に突かれていると言うのに痛みはない。きっとそれは相手が銀時だからだ。いやらしく、それも乱暴に熱をぶつけられているにも関わらず、神楽は善いと声を上げる。
「ぎ、んちゃん……あっ、あっ……」
銀時も酔いしれているのか目を閉じると、神楽が望むままに汗を飛ばしながら子宮を刺激する。銀時の顔が神楽に近づく。そして、虚ろな目が神楽を捕らえれば――――――
「舌、出せよ……」
神楽の中を上からも下からも銀時が侵食していって、そして次第にそれらが全身を回る。引っ付いてしまった体が溶けて一つに混ざりたいと訴えて……ドロドロになった。
翌日、目覚めるとまだ銀時は眠っていて、神楽はと言うと、重い体にまだ布団から起き上がることが出来なかった。昨夜を思い出す。あれは突然のキスから始まった。飲みに出ていた銀時を迎えに玄関に出ると、何も言わずに抱きしめられ、キスされたのだ。それも大人の危ないキス。恐怖はなかった。嘘でも良いから求めて欲しかったのだ。こんなに未成熟なカラダではあるが、銀時だけに味わって欲しい。そんな想いをいつの頃からか抱いていた。
「んー……」
銀時が寝返りを打って、眩しそうに目を強く瞑る。起きたのだろうか。神楽は慌てて脱ぎ散らかされているパジャマを着るも間に合わず、銀時が驚いたような表情でこちらを見ていた。
「マジか……?」
神楽はパジャマを着ながら言った。
「それはこっちの台詞アル」
飛び起きた銀時は自分の頭をグシャグシャっと撫で回すと、うめき声のような叫び声を上げた。
「あー……マジか……あぁぁああああ!」
そんな事を言われても……。神楽はなんとも言えない顔で銀時を見つめた。
「別に誰にも言わんアル。心配すんナヨ」
嘘だ。本当は友達に言ってしまいたい。好きな男に抱かれたのだと。
「つうか……俺、中に出した?」
神楽は赤い顔で俯くと小さく頷いた。コンドームなんてなかったと。さすがに銀時は撃沈らしく、しばらく布団に顔を埋めていた。
「誰と間違えたアルカ?」
なんてことないフリして尋ねたが内心生きた心地がしない。誰かと間違って抱かれたなど、それも好きな男が相手だったなど認めたくないのだ。それでも神楽はわめいて、すがって……なんて銀時の重荷にはなりたくはなかった。平気なフリして大人の仲間入りを果たすと、新八が来る前にシャワーを浴びに寝室から出て行った。
その日、一日中銀時は沈んでいた。こっちの方が沈んでしまいたいのだが。しかし、神楽はいつもと変わらないふうを装って過ごした。あれから銀時に問いただすこともせず、受け入れる事にしたのだ。諦めの境地。菩薩にでもなった気分。きっと銀時が自分を抱いたのも気まぐれで、事故だった。そんな事を考えると神楽の小さな胸がチクリと痛んだ。だが、その夜。神楽は新八が帰った後の居間で銀時と向き合う事になったのだ。
ソファーの上で正座をし、膝を突き合わせる二人。妙な緊張が走る。
「何アルカ?」
銀時は頭を掻いた。
「何って……アレだ……昨日の……分かるだろ?」
ちゃんと言えヨ。神楽は目で訴えてみた。すると、こちらを不貞腐れたような顔で見ている銀時が頬を染めたのだ。
「キモいアル!」
「は、はぁあああ!?」
何を今更照れてるのか。あんなに大胆に、強引に、深い所まで弄った癖に。神楽は頬を膨らませるとふいっと横を向いた。
「それで何ネ?」
「…………なんか欲しいもんとかねえの?」
神楽は驚いた。モノで埋め合わせしようと銀時は思っているらしい。まさか銀時がそんな気持ちを抱くなど……こう見えても反省しているのだろうか。
「別に何もいらんアル」
神楽は銀時に横顔を見せたまま答えた。意地悪で言っているわけではないのだ。本当に欲しいものはないのだから《銀時以外》には。それに、昨夜抱かれたと言っても銀時が神楽を本当に求めて抱いたのかは不明だ。そうである以上、神楽も簡単には心を許さない。
「じゃあ、なんかして欲しい事とかねえの?」
「気持ち悪いんダヨ! 急になにアルカ? 安心しろヨ。昨日のことは誰にも言わんアル」
忘れてあげる、大人だから。それが銀時の望みなんデショと言わんばかりに神楽は告げるも、当の本人は何やら首を捻っていた。だが、そんな銀時を無視し、神楽は寝床である押し入れに逃げ込むのだった。
モノで埋め合わせしようとする大人のずる賢さが嫌いだった。こちらは本気だと言うのに人の気も知らないで。
《それなら言っちゃえヨ》
もう一人の自分はそう耳元で囁くのだが、既成事実をかざし関係を迫るなどそれこそ虚しい。本当に心から愛してもらえないのなら、銀時がこちらを向いたって喜べはしないのだ。とにかく過ぎてしまったことは考えるだけ無駄だと、傷心を見て見ぬふりした神楽は狭い押入れで眠りに就くのだった。
しばらくは銀時も忘れたように振る舞っていた。神楽も銀時が忘れたいのであれば、そう言うことにし、自分の気持ちに蹴りをつけようと思っていたのだ。抱いてもらえただけでも良いじゃん。そんなふうに考えて。だが、予想外の銀時の行動に神楽の胸は激しく掻き乱された。
公園で番傘を差し、一人酢昆布をかじっていた時の事だった。どういう風の吹き回しか、いつもなら昼寝をしているか、玉を打ちしてる銀時が神楽の前に現れたのだ。
「銀ちゃん?」
「よぉ、お嬢さん一人?」
なんだろうこの感じ。いつも家で見ている腑抜け面がどこか締まって見えるのだ。神楽はぐぬぬと酢昆布を噛み切った。
「友達は?」
ベンチに座る神楽の隣に腰を下ろした銀時は何食わぬ顔で脚を組んだ。一体、何のつもりなのだろうか。神楽の心臓が妙に疾走る。
「今日は誰とも遊ぶ約束してないアル」
「そ、じゃあ暇だよな?」
神楽はよく分からないと首を傾げた。
「ちょっと神楽、付き合えよ」
銀時が神楽を誘うなど滅多にない。益々、怪しい。
「どっかの店の大食いチャレンジでも行くアルカ?」
しかし、銀時は何も言わずに神楽の腕を取ると歩き出した。これではさすがに子どもが親に引っ張られているみたいだ。神楽はちゃんと歩くからと銀時の腕を振り払った。だが、それには少し胸が痛む。銀時からこうして触れてくることなんて今まであまりなかったのだ。良いチャンスではあった。だけど、逆に自分から腕を取ることは出来ない。こんなに近い距離に居るにも関わらず、あんなにも激しく抱かれたにも関わらず、だ。
「お前、前に言ってただろ。新しい服欲しいって」
神楽の眉間にシワが寄る。まさかまだ物を使って口封じ、または埋め合わせをしようと思っているのか? 神楽は立ち止まると銀時を見上げた。
「銀ちゃん、まだ気にしてるネ?」
しかし、銀時は足を止めない。
「ほら、良いから行くぞ」
そんなに不安なのだろうか。他人にあの夜の事がバレてしまう事が。確かに神楽と結ばれたなどと周囲が知れば、銀時は強く非難されるだろう。だからこそ神楽は誰にも言わないのだ。それを分かっていない銀時に歯がゆさを覚えた。だが、服を買う事で銀時が満たされるのであれば……神楽は再び歩き始めた。
店に入って、服を試着する。特に目新しいものはないが、それでも何だかんだ言って銀時に服を選んでもらうのは……嬉しいものだ。
「結局、お前はいつもその色選ぶよな。まー……確かに似合うけど」
店から出た神楽は真っ赤なチャイナドレスの入った包を抱えたままニコニコと笑っていた。行きとは違って銀時の隣で。やはり嬉しいものは嬉しい。そうして惚けた顔をどうにか引き締めようと頑張りながら歩いていると……
「何してんだ、走れ」
突然、銀時に手を取られた。どうやら信号が赤に変わってしまうようなのだ。銀時に手を取られたまま走る神楽は妙な錯覚に襲われた。なんだか銀時とデートしているみたいなのだ。ショッピングして、手を繋いで並んで歩いて。
横断歩道を渡り切ったと言うのに……それでも二人の手は離れなかった。神楽の心臓が震える。息が上がってはいるが、それはただ単に走ったからではないだろう。
大通りを抜けて、少し静かな路地に出ると二人は無言で歩いた。銀時は何故手を離さないのか。そして、自分は何故その手を振りほどかないのか。理由がすごく知りたくなった。指がただ触れているだけなのに熱い。銀時と体を繋げた夜を急に恋しく思った。
「……銀ちゃん」
思わず愛しい男の名が漏れる。
「なんだよ」
銀時はこちらを見ずに返事した。それには少し救われた。きっと今は買ってもらったチャイナドレスみたいに真っ赤な顔色をしているかもしれないからだ。耳まで熱い。震える唇が今にも紡いでしまいそうだ。スキだって。
「あれ? 銀さん、神楽ちゃん!」
前方の曲がり角。そこを曲がって来た男――――新八の声が聞こえて、二人の手はようやく離れた。
「どこ行ってたんですか! こっちはスーパーで特売のティッシュを確保するのに大変だったんですよ」
新八がやや怒り気味に言う。
「何言ってんだよ。お前だろ、新八だろ、定春だろ。三人も居るじゃねぇか」
「いや、新八はこっち! それ眼鏡だろ!」
神楽はまだ落ち着かない心臓ではあったが、銀時は全くいつもと同じ顔で同じ雰囲気で新八と会話していた。これが大人と子どもの差なのだろうか。先ほどまでとても近くに感じていた銀時が遠くに見えた。
その日は結局そのまま銀時が離れていき、何の説明もなく互いに別々の寝床に就いたのだった。
暗い押し入れの天井を見つめながら、神楽はまだ眠る事が出来なかった。分からなかったのだ。どうして急にあんなふうに手を繋いで来たのかとか、それをずっと離さなかったこと。期待してしまう。銀時も自分を想っているんじゃないかと……。銀時に抱かれた夜が恋しい。神楽はまたあの手に触れて欲しいと思ってしまった。ただ撫でるだけじゃなく、ただ繋ぐだけじゃなく、深く感じさせて欲しいと。もう一度くらい、間違いが起きてしまわないだろうか。不健全な考えで頭の中が溢れる。それが神楽の指をパジャマのズボンの中へと誘うと、銀時を思い出し自慰に耽った。
神楽は銀時の微妙な変化に気づいていた。あの夜以降、やはり銀時は変わったように思えたのだ。飲みに行く回数も減り、大人しく家に居る夜が増えた。だからといって何かあるわけではないのだが……。近づけそうで近づけない。そんな距離間に神楽はもどかしさを覚えた。今も寝る前の穏やかな時間を銀時は窓際の椅子で過ごし、神楽は意味もなくテレビを観ていた。銀時の視線は先ほどから手に持つ漫画雑誌に吸い込まれていて、神楽の事は意識にもないようであった。そんなものにすら神楽は悔しさを感じた。少しはこっち見てヨと。
「なぁ、神楽」
まるで心を見透かされていたかのようなタイミングで名を呼ばれ、神楽は軽く飛び上がった。
「な、なにアルカ?」
「そう言えばお前、あれ着てねぇの?」
あれ、とは数日前に銀時が買ってくれたチャイナドレスのことだろう。神楽はまだ一度も袖を通してなかった。勿体無いと着ることが出来ないのだ。
「汚すかもしれないから着てないアル」
「じゃあ、今着てみろよ」
思いがけない銀時の言葉。神楽の頬が赤く染まる。今すぐにでも喜んで着替えてしまいたいのだが、子供じみているような気がしてすぐに行動には移せない。神楽は軽く首を傾げると、もったいぶった。
「なんで今着るアルカ? もう寝る時間アル」
「じゃあ、明日着てくれんの?」
神楽はどうしようかと悩んだ。本当は今着替えて、銀時だけに見せたいのだ。乙女心が揺れ動く。
「えー……そうアルナ……今でも別に良いアルヨ」
「そう」
銀時は最後まで神楽を見ることはなく、漫画雑誌に夢中であった。それなのにチャイナドレス姿を見たいと言う。神楽は全く銀時の気持ちが理解出来なかった。それでも銀時が望むのであれば――――――神楽は物置に引っ込むと真新しいチャイナドレスに袖を通すのだった。
シルクの肌触りが心地よい。神楽は姿見の前で一度くるりと回ってみせると笑顔になった。そして物置の戸を開ける。心臓が弾みながら銀時の待つ居間へと戻った。先ほどと変わらない姿勢で銀時はずっと漫画を読んでおり、こちらに一瞥くれることすらない。神楽はすました顔をすると、後ろ手を組んだまま銀時の真ん前に立った。そこでようやく銀時の顔がこちらを向く。そして漫画雑誌を机に置くと、ゆっくりと瞬きをした。
「お嬢さん、似合いますねぇ」
ニコリともしてくれない。しかし、神楽は銀時に真っ直ぐに見つめられ、それどころではなかった。緊張している事がバレてしまうような恐怖を感じる。
「なんで俺がそれ買ったか分かるか?」
神楽は知らない。それに答えなど得られるとは想像もしていない。だが、もうじき明らかになりそうだ。予感がする。
「この間のこと、私が誰にも言わないよう約束させる為ダロ?」
すると銀時はニヤッと笑って下を向いた。
「バカヤロー……そんなんじゃねえよ」
そう言って軽く笑った銀時は顔を上げると、いやに赤い頬で神楽に言った。
「お前に気に入られてェ……なんて思ったら悪いか?」
神楽は呼吸が止まってしまうかと思った。つまりそれは銀時が――――――
「私のこと、好きアルカ?」
震える心臓が言葉をポーンと弾き飛ばしてしまった。意に反して出てしまった事に神楽は大きく驚くも、それ以上に銀時の行動が神楽を激しく揺さぶった。突然抱きしめられたのだ。銀時の熱い体。力強い腕は少し苦しい。その苦しさは更に加速して、神楽の呼吸を完全に止めてしまう。銀時の唇から言葉が紡がれることはなく、代わりに神楽の唇を塞いだのだ。触れ合った唇がゆっくりと離れて、眼と眼が合うと二人は微笑んだ。照れくさそうに、何かを誤魔化すように。
「神楽ちゃん……悪いけど、今度はその服脱いでくれねぇ?」
「着ろって言ったり脱げって言ったり忙しい奴アルナ!」
そう言った神楽ではあったが、チャイナドレスが足元に落ちるのも時間の問題のようだ。
2016/06/23
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